『ダイヤモンドの功罪』と『ひぐらしのなく頃に』の共通点
クイズ! 狂っているのは誰でしょう
「世界が狂っているように見える時、狂っているのは自分」というのはもうクリシェですが……。
「そう見せといて、マジで世界のほうが狂っている」というテクニカルとパワーのダブルパンチで来るやつがありますよね。
あれ大好き。
「狂っているのは誰だ」作品としてのひぐらし
俺、この一点で『ひぐらしのなく頃に』が大好きなんですよ。
同じ癖(へき)の持ち主なら、今からでもやった方がいいです。
コンシューマーでは削除されてる部分に本体があったりするので、原作を勧めます。公式が2本丸々読める「お試し読み版」を配布してるのでまずそこで。
Steam版がほぼ原作移植みたいです。SwitchとPS4の『奉』ならDLCのOrigin。
出題編4本、それと『礼』で、5種類の「どっちが狂ってるでしょうレース」が楽しめます。
なんと、そのジャンルがスポーツ漫画にやってきた
野球漫画で同じことをやっている作品があって、俺は腰を抜かしました。
『ダイヤモンドの功罪』、やってることがすごすぎる。
綾瀬川は奇異なピースだが、彼を嵌められないパズルの方も未熟だ
最初、綾瀬川は「才能ばかり突出した主人公」に見えます。
しかし話が進み、彼や周囲の心理描写が重なるにつれて、その印象が訂正されてくる。
「……こいつ、人格も少年離れしたポテンシャルがある!! このタイプの主人公としては信じられないことに……『社会性』の値が特に高いッ!!」と、読者は気付かざるを得ない。
俺たち、わからせを仕掛けられている。
コーチの目が即座にぐるぐるになってしまうのは「作中のこと」ですが、「最初は正義だった側が、綾瀬川が(子供特有の速さと柔軟さで)成長することによって相対的に悪いヤツになっていく」ところは、俺たち読者の価値観も変えてきたわけで、スポーツ漫画かこれ? 『羅生門』じゃん。
聖域が解体され始めている
俺の上司は高校野球が好きなので、俺も少しはその世界を知っているんですが、綾瀬川の性能は「彼らの構造的脆弱性」に直撃ですよね。
「少年野球に関わる大人」への特効がついている。
たぶん、女性はそこまで綾瀬川にチャームされない。スポーツに関心のない男もそうだろう。
でも、スポーツをやる男は綾瀬川に持って行かれる。指導者に回るようなタイプは特に。そして少年野球において指導者は王なので、その瞬間から国が傾いていく。
すごいとこ突いてきて、すごいとこ通って、すごいとこに抜ける作品です。とんでもないやつが野球漫画界に降臨してきたな……。
ひぐらし、何度でも評価されるべき
ひぐらしのほうも掘り下げます。
この作品が特効キメてくれてる癖(へき)をもっと正確に表現するなら、「妄想なのに足跡がある」かな。
これは妄想だなと思ったタイミングで足跡を見せつけてくる、『ひぐらし』はそこがマジで天才的だと思った。
一番弱いところを踏み抜いて、そのさらに下まで見せてくれるサービス精神
「今振り向いて、足跡があれば、狂っているのは世界。なければ自分」みたいなのを、ひぐらしは全部の出題編でやってくれてます。
振り向いて、足跡がなくて、ああ自分の妄想だったのか……と少しモヤモヤしつつも安心したら、あとで連れに「あの足跡なんだったの?」と聞かれるみたいな時間差発動もあって、サービス精神がエグいぜ。
映画にもこのジャンルはあり、「単に監督がうまく線引きできていない結果、妄想なのに足跡ができてしまっている(=矛盾している)」ということも多いんですが、ひぐらしはそこにカメラを固定した作品ですよね。
作者はすべての足跡を意図して書いています。
鬼隠し編と綿流し編を通り、わかった、怖い怖い、もう充分怖いですと思ってるところに見舞われる祟殺し編。
「もうそこまで行ったら怖くねーよ」というところまで計算して、「あっち側」としての体験も用意してくれてるわけで、欲張りバリューパックすぎる。
頼むから幽霊であってくれ
幽霊ならマシなんですよ、妄想と変わらないから。
足跡を残してくるヤツが一番ヤバい。
そんで、俺は足跡がないことを確認したのに、なんで連れには見えてんの? そういう怖さを徹底して書いている。
狂っているのは、自分か世界か、それとも隣にいるコイツか?
評価の分かれてる作品ですけど、ホラーとしてホントにめちゃくちゃ面白いです、ひぐらし。
おまけ
「狂っているのはどっちどっち」の作品で指標になるのは、警察官であることが多いです。
彼らは正気に属しているので、警察官のいる側が正解。
映画の話なら少しわかる。
あるな、そういうジャンル。
タイトル出した瞬間にネタバレになるので伏せますが、それを活かして「警察官が狂人」で来る作品もありますよね。
それは別に、警察官だって人間だから狂ってたっていいのだが、「警察官にも見えている幽霊」が一番怖いよな。
国家権力も拳銃も無力になる瞬間だから。
そうそう。
「ひぐらし」は、とにかく警察官の使い方も上手かった。
はいはい、よくわかんないけど祟りなのね、防げたためしがないけどダメ元でパトカーに見張らせとくか…………パトカー配置しとくと祟りキャンセルになるのかよとか、TRPGっぽさもある。「警察官の使い方」を終始考えることになりますね。
パトカーでキャンセルされるなら絶対に祟りじゃないだろ。
「と思わせといて」の連続なんですよ。
妄想にしては足跡があるし、足跡にしては「5メートルおきの足跡って、これはこれで怪異じゃねーか」みたいなのを見舞ってきて、気が休まらないんです。
気の休まらない思いをしたいなら、ひぐらし絶対おすすめです。
せっかくいらしたんですから、そちらもおすすめ教えてください。
映画なら『バニーレークは行方不明』、小説なら『塗仏の宴』。
お前の言っている、妄想と足跡の関係を100パーおさえている。
パッと出てくるんだ。聞いてみるもんだぜ。
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