イスラム教中心社会マレーシアでの暮らし
マレーシアに来てから、恥ずかしながらこれまであまり関心のなかった「宗教」というものについて考えさせられる機会がとても増えました。
イスラム教徒の友人ができ、学校には宗教に関する規定があり、街中には至る所にモスクがあり、ヒジャブをした女性をたくさん目にし、ハラルフードのお店があり、毎日5回お経のような声(アザーン)が鳴り響く…という環境の中で、イスラム教がとても身近に感じられるようになりました!
そこで今回は学んだことや調べたことを書き留めておきたいと思います。
イスラム教基礎知識
イスラム教とは
唯一絶対の神「アラー」が最後の預言者「ムハンマド」を通じて啓示した「クルアーン」の教えを信じる一神教です。
※「クルアーン」は「コーラン」とも呼ばれるアラビア語で記された聖典で、114章から成ります。
クルアーンを暗記することはイスラム教徒の間で重要なこととされており、成し遂げた者は大きな名声を得ると言われているそうです。
ムスリムは小さい頃からアラビア語を覚える必要があるとのことです。
偶像崇拝が禁止されていることにより、イスラム教では人間や動物の姿を描くことが禁止されており、代わりに抽象的な模様やシンボルが用いられます。
アラビア語を美しく装飾的に書く「カリグラフィー」、神の無限性を象徴する「幾何学模様」や「アラベスク模様」(植物を抽象化したもの)などが発展し、モスクなどのイスラム建築によく現れています。
イスラム教の世界総人口
尚下記によれば、世界で最も信者数が多いのは、キリスト教徒 (約32%)、2番目がイスラム教徒 (約26%)、3番目がヒンドゥー教徒 (約15%)、4番目が仏教徒 (約7%)とのことです。
マレーシアの民族構成比と宗教比率
多民族国家マレーシアの中で最も多いマレー系民族 (約65%)のほとんどが信仰しているイスラム教は、マレーシアの国教です。
マレーシア統計局によると、各国のイスラム教徒数は増加しており、2020年のマレーシアのイスラム教徒比率は63.5% (2010年の61.3%から増加)だったそうです。
マレーシアとイスラム教
1日5回の大音量Voice「アザーン」
アザーン(礼拝への呼びかけ)はモスクのミナレット(尖塔)から1日5回肉声で流れます。礼拝時間は日の出と日没の時間によって決まるので、季節や場所によって異なります。
2024年10月現在、マレーシアKLでのタイムスケジュールは下記の通りです。
1回目:6時前 (明け方〜日の出)
2回目:13時頃 (正午〜昼過ぎ)
3回目:16時半前 (昼過ぎ〜日没)
4回目:19時頃 (日没〜夕焼けが消えるまで)
5回目:20時頃 (就寝前)
1番最初のアザーンはまだ暗いうちに流れるので、人によっては目覚まし時計代わりにもなります。
ムスリムはアザーンが流れたら、シャワーや部分的なお清め(ウドゥ)をして、メッカの方向に向かってお祈りをします。(最近はメッカの方向がわかるアプリもあります!)
マレーシアのトイレには「スラウ」と呼ばれる礼拝室が併設されていることが多いです。
(店員が「スラウに行ってくるので20分後に戻ります」と店先に張り紙を残していたのを見たことがあります。)
可能な人はモスクに出向いてお祈りをします。
(男性は金曜日の午後にモスクに参拝する必要があります)
各時間は人々の活動時間とも重なっており、起床時に命があることに感謝する、食事を頂けることに感謝する、仕事があることや家族との時間があることに感謝する、そして1日無事に過ごせたことを感謝し、寝ている間の無事を祈る…という具合に、それぞれのタイミングで、神に感謝や祈りを捧げ、罪を懺悔しているそうです。(ブルーモスクのガイド談)
金曜日の礼拝 (ジュムア)
男性は金曜日の正午以降の時間帯に、集団礼拝が義務付けられています。
そのため、ムスリムが経営するお店は金曜午後や金曜自体がお休みであったり、金曜のみ在宅を許可する企業もあるそうです。
ムスリムの多い学校では、金曜は午前中のみで帰宅するというところも多いそうです。
観光でモスクを訪れる際は金曜日は避けた方が無難でしょう。
ヒジャブの文化
服装のルールや種類は地域によって異なりますが、マレーシア人のムスリム女性は一般的に「ヒジャブ」と呼ばれるストール等を頭に巻いています🧕
クルアーンにて女性は謙虚さや控えめな服装を求めるという教えに基づいており、美しい髪を隠すことにより他人からの好奇的な視線を避けたり、自身の宗教心を表現するという意味合いもあるそうです。
ショッピングモールでもヒジャブを販売する店や、ヒジャブを被っているマネキンをよく見かけます。
最近はデザイン性や通気性を重視するものも多いようです。
水着着用時にも肌の露出をせず、ヒジャブを身に着けている方を目にします。
ちなみに、マレーシアのモスクではヒジャブやローブを無料でレンタルさせてくれるところが多いです。
イランやアフガニスタンでは公共の場でのムスリム女性のヒジャブ着用が義務化されていますが、マレーシアでは義務化はされていません。
逆にフランスでは公共の場でのヒジャブの着用が禁止されています。(社会的な一体感や世俗的な価値観と対立すると見なされていることによると考えられる)
パリオリンピックでも大会参加時はヒジャブの着用が禁止されていたそうです。
女性の権利や選択の自由を巡り、近年世界で議論がなされている問題であるとのことです。
ハラルとハラム (ノンハラル)
ハラル=許されたもの
ハラム=禁じられたもの (ノンハラル)
ということですが、マレーシアではハラルという言葉を本当によく耳にし、目にします。
<スーパーのノンハラルコーナー>
スーパーでは豚肉やアルコール飲料をノンハラルコーナーにて販売されています。マレーシアの大多数の人が手にしないマイノリティ商品のため、一般的に価格は高く、品揃えが少ない印象です。
<ハラル認証>
ハラル認証機関の検査により、ハラルであると認められると付与される「ハラル認証マーク」は食品などの製品や、飲食店にも掲げられ、ムスリムが製品購入時や飲食店訪問時の判断基準となっています。
<学校のハラルルール>
多くの学校で、ノンハラルフードを持ち込まないようにと規定があります。豚肉をお弁当に入れられないのはムスリム以外にとって親泣かせな規定だと思いますが、ムスリムの方とも一緒に食事を楽しむためには必要な規定なのだと思います。
<ムスリムの友人への配慮>
ムスリムの友人と食事へ行く際は当然ながらハラルフードが提供されるお店へ行く必要があります。
またプレゼントを贈る際には豚のモチーフのものを避けるなどの配慮が必要です。
イスラム教について学べる施設
・イスラム美術館
ドームやクルアーンの装飾など建物自体がイスラム美術の要素が集合した美しい建築物となっています。美術や文化の面からイスラム教についての見識を深めることができます。
・ブルーモスク
シャーアラムに位置するマレーシア最大規模の州立モスク。
ガイドさんが資料を用いながら丁寧に案内してくれます。
・Masjid Willayah Persekutuan
KLの街中にある州立モスク。
ガイドさんがパネルなどを用いて説明後、丁寧にモスク内を案内してくれます。
上記施設の詳細や訪れた際の感想をInstagramにも載せていますのでよければ併せてご覧ください。
まとめ
マレーシアでの暮らしは、イスラム教と密接に結びついています。
この国で暮らすには最低限のイスラム教の知識を持っておきたいものです。
今後も興味を持って学びを続け、理解を深めたいと思います。
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