テレビ電話と心の準備
緊急事態宣言が発令されてから二カ月ほど経過したらしい。
(まるで戦時中を彷彿とさせるフレーズだ。資料集に載っていそう)
平和ボケが進行している中、やっとな感想がそれだ。
ただ、その言葉の深い意味を理解せずとも会社からのお達し以外で自身の行動が限定されることに、ちょっとだけ、ワクワクとまではいかないものの、今後の展開が気になるくらいの興味度合いまでには上がったとは思う。
(古風な会社であった勤務先も世間の波に乗って、リモートワークが開始された。大きな事件だ。経費精算に印鑑リレーも要らない。信じられない)
最初は不安だったテレワークも慣れてくると想像以上に効率よく仕事が進められることがわかった。
テレワークが進んで盛んになったのはテレビ会議だ。いつもなら地味に時間がかかっていた会議室の予約。
(これがハードル高い。全員のスケジュールを確認し、基本的に部屋は埋まっているが、なんとか人数に合わせて会議室を選択。予約は当日の三週間前から等、運が悪いとその間に上司の時間が埋まる。♪会議室予約あるあるが言いたい〜)
それが、原則テレビ電話ツールの使用になったことによって、タスクがスケジュール確認と当日のアジェンダ記載だけになり、かなりの時間短縮になった。ありがとう、テレワーク。
テレビ会議に慣れてきたある日、
「さっき、会議をしていたらさー、4画面全部に疲れたおじさんの顔が映っててさー、自分も気にするようになったよねー」
偉いクリエイティブディレクターが、音声はオンにしつつも自身の画面のオンオフを繰り返しながら、アイスブレイクを始めた。
勤務先では特にテレビ会議のマナーは決まっていない。なので、画面のオンオフは自由だ。
その後、たびたびテレビ電話の話題が上がるようになった。
慣れると細かいところが気になりだす。
今まで気にしていなかった部分が気になりはじめた。ゴルフの話をする疲れたおじさんの顔なんて見慣れたはずなのにテレビ電話だとダメだ。画面越しなのになぜか距離が近すぎる。
プライベート性の高いリビングでおそらくテレビ会議は相性が悪いのかもしれない。
ワークスペースの大事さを学ぶ。
(そういやニトリが混んでいるらしい、ちょっと気持ちがわかる。でも、店員さんが困るなあ)
矛盾をそっと抱えながら、ゴールデンウィークを迎えた。
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