AGG米国総合債券市場 ETFについて考える


概略

2023/10現在、米債券の価格低下(金利上昇)により債権への投資妙味が高まってきている。もちろんそこにはさらなる金利上昇のリスクはあるものの、債権への投資ウェートを高めるつもりの人、債権をこれからの投資対象として考える人も増えてきているのではないだろうか。
一般人が債権に投資するには、債券を直接購入する方法と、債権を投資対象とする投資信託・上場投資信託を購入する方法の二通りある。
今回は、後者の上場投資信託としてもっともメジャーなひとつである 「AGG: iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF」
を採り上げ、投資対象としての今までのパフォーマンスを調べてみる。

個人的評価(結論)

  • AGGの運用コストは十分に低く、ベンチマークに対する追従性も良い

  • 債権市場全体への投資手段としては優秀(特定の債権に投資したい、あるいは特定の債権には投資したくない、というケースには向かない)

  • 金利上昇局面がある程度進んだ現在は、今後のさらなる金利上昇があるとしても投資タイミングとしては悪くないのではなかろうか

AGGとは

「iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF」
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/products/239458/ishares-core-total-us-bond-market-etf
世界最大の資産運用会社ブラックロック社が運用するETF
米国総合債権市場インデックス( Bloomberg US Aggregate Bond Index )をベンチマークとしている
経費率は0.03%
資産構成は下記(2023/10時点)

AGG 資産構成

資産構成は米国投資適格債権市場全体と対応しており、45%程度が国債・公債で米国債が多くを占め、MBSなど不動産・資産担保証券が30%弱、残りが社債等
「国債だけに投資したい」「MBSには手を出したくない」などといった要望がなく、幅広く、手軽に債権投資したい人には合う投資対象であろう

運用実績と運用コスト

AGG 2023/09までの年率パフォーマンス

2023/09までの年率パフォーマンスを見ると、特に近年はほぼインデックスと遜色無い運用がなされている。
現在の経費率は0.03%であり、最近のパフォーマンスは経費率をコストとして感じさせない優秀なレベルとなっている。
細かく見ると2020年, 2021年はインデックスに対してそれぞれ-0.08%, -0.13%劣後しており、これはコロナショックや急激な金利変動などによる運用の難しさによるものだろうか?また、2022/03以前は経費率0.04%、さらに過去には0.05%~0.08%などであり、設定来のインデックスとのパフォーマンス差異には過去の経費率の影響が表れていると考えられる。

パフォーマンスと米国債金利との比較

AGGの保有債権の平均残存期間は8.3~8.4年程度であり、その約60%は5年以上の残存期間を有する。そのことから、5年間ないし8年間の期待パフォーマンスは期初の(5年あるいは10年)米国債の利率と期末時点の利率と、ある程度相関しているのではないかと考え、比較してみる。

AGGの5年パフォーマンスと国債金利比較

赤線は、5年前から各時点までのAGGのパフォーマンスを年率換算表示したグラフ。水色線は、期初(各時点の5年前)の米国債5年物金利。
2022年~は急激な金利の上昇に対応して債権価値が下落しており、AGGのパフォーマンスも悪化している。それ以外の期間ではおおむね1~2%程度には米国債金利を上回る結果を出している。
短期的にはさらなる金利上昇による価額低下が生じるリスクはあるものの、現在の金利に満足できるのあれば(=さらなる金利上昇によるリターンを逃す可能性があることを割り切って投資するには)現在は良いタイミングと考えることができる。

補足: 分析対象データとして yahoo!finance( https://finance.yahoo.com/ )のAGG, US5Y(^FVX: 5年米国債)のデータを利用している

ファンドを通した債権投資のメリデメ

× 直接債権を購入するのに比べ、債権を最後まで持ち続けることを前提としたリターンの確実性が無い
× 特定の債権への投資を避けたい場合には向かない
〇 多数の銘柄に分散投資が可能
〇 資産の流動性、投資の継続性 いつでも売り買い(積み立ても)が可能
〇 運用コストが低い



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