iDecoの枠を最大活用することは本当にベストな選択なのか?

会社員なら月2.3万円、自営業者なら月6.8万円、これがiDeco掛け金拠出の最大枠。所得控除を最大限に活用したいなら、MAXで掛けるのが当然。
という論を見かける。
確かに、その通りであることも多いが、受給時の税負担を考慮するとこれが最善の選択にならない可能性もある。以下で試算する。

本稿は、私の力量不足でとうてい分かりやすい仕上がりとはできなかった。しかし、個人的にも参考情報として残しておきたいためノートとして掲載する。

結論から

拠出時の所得控除効果を別としても、見込まれる運用利益率をどう想定するかによっても有利不利が変わり、確定的な結論を導くことはできなかった。それでも一応の結論としては、以下のように整理している。

・一時金受け取りは有利だが、退職所得控除を超える場合は要注意。

・60歳時に一時金を受け取り、その後の5年間で年60万円、合計300万円を受け取る併用受け取りが有利。(公的年金等控除を最大限活用する)

・退職所得控除を超える見込みなら、FIRE後は掛け金拠出を抑制したほうが良い。(掛け金拠出は加入年数を稼ぐために継続する)
 ※FIRE後であっても申告所得控除効果が高い高申告所得者を除く

退職所得控除を超えるまでは60歳を超えてもそのまま運用継続するのも一策だが、他に受け取る予定の退職金がある場合はその5年前までには一時金として受給する必要がある。

以下、検討・試算の内容。

疑問:最大に拠出すると税効果も最大となるか?

iDecoの受給方法には一時金受け取り、年金受け取り、その併用がある。
公的年金等控除を最大に活用できる範囲(2024年現在、65歳未満で年間60万円)で年金受け取り、残りを一時金受け取りとする併用受け取りが最も課税対象額が低くなり、税負担が軽くなる。

一時金は退職金扱いになり、税負担はかなり優遇されている。
iDecoの拠出期間が10年であれば400万円、20年なら800万円、30年ならなんと1600万円を退職所得控除分として税負担無しで受け取れる。

受け取り一時金がそれを上回る場合の税負担はどうなるか?

拠出額を増やせば増やすほど受給金額が増え、受給時の税負担も増える。
拠出額に応じて拠出年の所得控除は増額できるが、果たして拠出額を最大にすることが最適なのだろうか?

iDeco一時金受け取りの税負担

退職所得控除分と、公的年金等控除を十分に活用できる枠内の年金受け取り分は別として、それらを超えた分のiDeco資産を一時金受け取りで受給する場合の税負担を試算する。※復興特別所得税は省く

課税退職所得 = ( 一時金 - 退職所得控除 ) × 1/2
から所得税は以下のように計算される。

退職所得の税額表(国税庁より)

加えて、住民税の所得割(税率10%)が税負担となる。なお、社会保険料負担には影響がない。以上を一時金の退職所得控除超過分への合計課税率としてまとめた表が下記。例えば超過額390万円以上660万円未満の部分には10.0%の税負担が生じる。

退職所得控除超過分への合計課税率

一見、超過額が1,800万円未満まではiDecoは特定口座(税率20%)よりも税負担が少ないように思える。
が、そうではない。
特定口座における運用では利益に対して課税されるが、iDecoでは受給額に対して課税されるためだ。

仮に、iDeco受給予定の60歳まであと二年だっとしよう。
その時点で、現在のiDeco資産が2000万円あり、退職所得控除800万円、年金受け取り分300万円を除いても900万円を越えることが予想できるとする。

残り二年、今まで通りiDecoに掛け金を追加するとどうなるか?
控除超過分の金額(現在900万円)が660万円~1350万円の範囲におさまる場合、iDeco資産の増分への課税率は15%となる。
税負担は、
 (二年分の掛け金)×(1 + 二年間の運用利益率)× 15%
となる。
対して、この掛け金を特定口座で運用した場合の税負担は
 (二年分の掛け金)×(二年間の運用利益率)× 20%
二年間の運用利益率が300%以下の場合はiDecoよりも特定口座のほうが有利。iDecoの掛け金を増やすよりも特定口座で運用したほうが良い、ということになる。

控除超過分の金額が390万円未満で、課税率が7.5%の場合はどうなるか?
同様に計算すると運用利益率60%以下の場合は特定口座のほうが有利と計算される。控除超過分が390万円~660万円、課税率10%の場合は運用利益率100%が分かれ目となる。

こう考えると、掛け金拠出の際の所得控除を十分に活用できる場合は別だが、FIRE後など、所得控除をあまり活用できない場合はiDeco資産が退職所得控除を超過する見込みが生じた時点で拠出額を抑えたほうが良いのではないかという冒頭の結論になる。

この考え方では、将来の運用成果を予測して退職所得控除超過額を推定する必要があるなど、かなり難しくわかりにくくなってしまっている。
もっと単純に捉えてかみ砕けないものか、
悩ましくもあり反省もあるがひとまずここまでとする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?