iDecoの税効果

iDecoをどのように活用するべきか、判断材料のひとつとなる「税効果」についてまとめた。ここでの「税」には所得税・住民税に加えて社会保障負担(国民健康保険料)も含めて考慮している。
なお、税率について復興特別所得税は省いて試算する。

iDecoの税効果は大きく分けて三種類

 (1) 掛け金を拠出する際の所得控除による税負担軽減
 (2) 退職金相当として一時金を受け取る際の税負担
 (3) 年金として継続的に受け取る際の税負担

有利な受け取り方

概して、年金受取よりも一時金受け取りのほうが税負担的には有利となる。
すべて一時金として受け取るか、
あるいは、61歳~65歳の間に他の公的年金を受け取らず、iDecoを年額60万円だけ年金受け取りすることとし、残りは60歳になったら退職金扱いで一時金として受け取る
これがiDeco給付金の有利な受け取り方となる。

(1)掛け金拠出に対する所得控除

所得税、住民税については掛け金として拠出した金額(最大年間816,000円)をそのまま所得から控除できる。
 所得税:所得額に応じて5%, 10%, 20%, 23%, …(総合課税の場合)
 住民税:一律10%
が拠出額に対する節税の効果となる。現役世代にとってはこれは大きい。
ただし、FIRE達成後の場合などは少し事情が異なる。
そもそも、申告対象となる所得が無い(少ない)場合、この控除による効果は無くなる(少なくなる)。では、株式やFX等による所得についてはどう
か?
もともと申告義務があるFX等(CFDなども)の所得については、総合課税の所得と同様にiDecoの掛け金に対する所得控除の効果がある(所得の20%)。
これは、源泉徴収されていない証券口座における株式等の譲渡益についても同様だ。
ただし、源泉徴収ありの特定口座における株式等の譲渡益については申告することによってiDecoの掛け金に対する所得控除をうまく活用することはなかなか難しいと考えておいたほうが良い。(本稿末尾で少し補足解説する)

(2) 退職金相当として一時金を受け取る際の税負担

iDecoの一時金受領は税負担にはかなり有利となっている。

・加入年数に応じて退職所得控除が算出、適用される。
 控除額は加入10年で400万円、20年で800万円、30年では1600万円。
・控除後の所得は、その50%の額を税計算に適用する。
・所得は、国民健康保険料等の計算では対象外となる。

注意すべき点としては、一時金受領後5年以上経過せずに通常の退職金を受け取ると退職所得控除が全額適用されないことが挙げられる。
掛け金の所得控除によって税負担の繰り延べ効果を得られるのと合わせて、
税負担の額自体も削減される税効果が得られると期待できる。

(3) 年金として継続的に受け取る際の税負担

iDecoの年金受取における税額計算には、通常の年金と合算して公的年金等控除が適用され、65歳以上では110万円(年額、以下同様)[65歳未満では60万円]までは非課税となる。
公的年金等控除に年金収入額に応じて多少の加算がある(310万円[130万円]から410万円までの金額に対してはその25%)ことを考慮しても、
控除後の所得に対しては
 ・総合課税所得税(5%~10%)
 ・住民税所得割(10%)
 ・加入している場合は国民健康保険所得割(13%前後)
が課せられるため、年金受け取りは一時金受け取りよりも不利と言える。
他の公的年金を受け取り始める前、例えば61歳から65歳の間、公的年金等控除額以下の60万円に限って受け取るのであれば税負担が軽くなる。

以上、iDecoにおける三種類の税効果についてまとめた。

受け取り方については上に述べたように一時受け取りを中心に設定することが有利となる。
では、掛け金の多寡についてはどうか?枠全額を全年通して使い切ったほうが良いのか?特に、FIRE後などの申告所得が少なく、掛け金控除枠を使い切れない場合を想定して改めて検討したい。


補足:特定口座の利益申告による税効果

給与・事業収入などの総合課税対象の所得が少なく、iDecoの掛け金に対する所得控除額を活用しきれない場合、「源泉徴収ありの特定口座」で利益があれば、申告することで源泉徴収された所得税・住民税は還付される。
ただし。
国民健康保険に加入している場合は特定口座の利益を申告することで国民健康保険料が増額される。保険料の算定においてはiDecoの掛け金に対する控除は適用されないためだ。
国民健康保険の所得割料率は13%前後と決して低くない。さらに均等割の軽減措置対象外となるとおよそ50,000円程度の負担増が想定される。

特定口座の利益の基礎控除を超える分が80万円で、iDecoの掛け金も同じ80万円であった場合、扶養者数や自治体によって異なるが、計算例としては
 所得税・住民税:   約160,000円ほど還付
 国民健康保険料負担: 約160,000円ほど増額
などとなる。これでは掛け金拠出による税効果は無い。
詳しい試算は割愛するが、iDecoの掛け金控除をうまく活用できるケースはレアである。(申告した際に国民健康保険料均等割負担が変化しないケースに限られる。)



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