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日本人のテレワーク 〜なぜコロナ禍のテレワークは定着しなかったのか(後編)
テレワークを導入すれば、それまで掛かっていた経費が大幅に削減できる。
テレワーク手当を支払ったとしてもだ。
まず地代家賃。首都圏の高家賃な場所に広々としたオフィスは要らなくなる。
交通費。従業員全員分の定期代等が、移動した日の分だけで済む。
電話代(通信費)。メールやSNSが主たる連絡手段になるので、企業電話(ビジネスフォンなど)、ファックス通信量が格段に減る。
テレワーク社員にモバイルルーターとスマホを貸与してもきっとお釣りが出る。
業務面では、スリム化が可能だ。
社員は急な来客や電話取次などの雑務に追われることなく、自分の仕事に集中できる。
また取引先とはリモート商談が増えるので、必然的に出張費、及びその移動時間が軽減される。
請求書等は、紙ベースでのやり取りが無くなることによる通信費の削減が可能だ。
ここまで例を挙げただけでもメリットだらけである。
ではなぜ、経営陣や管理職はテレワーク導入を渋ったのだろう。
想像するに…いや断言しても良いが、単に「自分が経験したことの無いシステム」だからだろう。
これまでの日本型企業のあり方は、新人研修を受け、諸先輩について仕事を覚え、時には上司と会食をし、休日は取引先との接待などをする。
超密着型の仕事の仕方だった。
ソーシャルディスタンスなどそこには無い。
長年そういったビジネスをしてきた人に、今更新しい概念で仕事をしろと言ったところで、おいそれとは切り替え難いだろう。
しかし世間がテレワーク導入の動きになると、体面を重んじる企業は渋々と導入する方に舵を切った。
嫌々ながらのテレワーク導入だ。
そこに自分の経験則から「目の前に居ない部下はサボる」との猜疑が芽生えてしまう。
テレワークと言う自由で闊達であるべき働き方に、余計な束縛をかけたままテレワークを導入する。
と、どうなるか。
もちろん歪みが生じる。
テレワークでありながら「時間的制約」「服装の規制」「うるさいくらいの報告強要」。
しまいには、プライベートまで意見するパワハラまがいの行為まで…
それでは本来のテレワークの利点を全て活かせずに、不満だけが増長する。
しかし、経営陣や管理職はそのことに気づけない…いやあえて見て見ないフリをして、社員サイドから「テレワークの解除を」と言ってくるのを待っていたのかもしれない。
負の我慢比べだ。
そして、お互い我慢と不満を抱えながらもコロナの影響が少なくなり始め、徐々に緊急事態が解除された。
と、間髪を容れず「出社せよ」となった。
この時社員はすでに二極化されていただろう。
「テレワーク存続派」と「テレワーク拒否派」に。
緊急措置なので、何も事前準備をせずに、世間の風潮に合わせて嫌々テレワークを導入したのだから致し方ない。
しかしそれは、企業としてのテレワークに対する認識不足と、従業員に対する説明不足の結果だ。
加えて、経営陣や管理職がテレワーク下での企業ビジョンを構築できなかった。
結論づけると、テレワークはこのコロナ禍において日本には定着しなかったと言える。
企業のテレワーク導入が成功だったかどうかは、それぞれの考えがあるだろうから断定はしないが、緊急事態宣言が解除され一月以上経つ現在でもテレワークシステムが存続しているかどうかで分かるだろう。
(了)