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メッシ・ロナウド時代の終わりに2/2
※上記いずれかを聞きながら、ご覧になると、より楽しめますよ!
12-13シーズンは転機となったシーズンだった。
メッシのバルセロナは、3冠ハインケスバイエルンに完膚なきまでに叩かれた。
ロナウドのレアルマドリードもハインケスバイエルン、クロップドルトムントと、ドイツ勢相手に2シーズン連続で敗退。
ここからバルセロナはペップバルサという亡霊を振り払うための闘いが始まり、レアルマドリードはモウリーニョサッカーからの進化を目指した戦いが始まる。
そして、スペイン2強と実は牙を研いでいたアトレティコを含めたスペイン勢の逆襲が始まっていくシーズンだった。
13-14シーズン
メッシ26歳 バルセロナ所属 マルティーノ監督
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チーム成績 リーグ2位 CLベスト8 リーグカップ準優勝
個人成績 リーグ戦28ゴール13アシスト シーズン合計41ゴール16アシスト
バルセロナをペップと共に支えていたビラノバが健康上の理由で辞任。その後に体調を崩して死去してしまった。現在バルサトップチーム練習場は、ティト・ビラノバと名付けられている。
そんな失意のバルサに監督として就任したのが、マルティーノ監督だった。マルティーノ監督はアルゼンチン人で、実績として有名なのが、パラグアイ代表を率いての2010ワールドカップベスト8進出。あのスペイン代表を後一歩のところまで追い詰めた好チームを作り上げていた。
基本的には既存路線を継続だったが、マルティーノ自身は後に、バルセロナにスペースにアタックするような戦術を採用したかったがチームマネージメントに終始してしまった、と振り返っている。
偉大すぎたペップバルサのメンバーを残したまま、ペップ無しでどのように進んでいくかが、バルセロナにとって大きな課題となっていった。
ロナウド28歳 レアルマドリード所属 アンチェロッティ監督
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チーム成績 リーグ3位 CL優勝 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦31ゴール11アシスト シーズン合計51ゴール17アシスト
カシージャス、ラモスら、スペイン人選手と対立したと言われるモウリーニョ監督が解任され、後任にはミランでCL優勝経験のあるアンチェロッティが招聘された。
アンチェロッティと言えばマネージメントが上手く、スター選手の扱いと名物会長の扱いに定評のある監督だった。ミランでは首相兼会長ベルルスコーニの無茶ぶりを受けながら2度CL制覇の実績を誇る。
さらにクラブの顔だったジダンが本人の希望でアシスタントコーチとして入閣している。モウリーニョ時代は距離を置いていたが、アンチェロッティの選手との対話を大切にするマネージメントには共感したそうだ。
補強で言うとベイルを補強し話題になった。プレミアリーグで大活躍を見せておりCロナウドともイメージが重なる移籍だった。また、マラガからイスコ、ソシエダからイジャラメンディなど地味ながら実力者をバックアップも兼ねて補強している。
モウリーニョ時代に比べて、アンチェロッティはポゼッションを軸にする戦術を採用。後のレアルマドリードの基礎となる、「433で攻め442で守る」というコンセプトでポゼッションもカウンターもできるチームを作り上げた。
ロナウドにとって大きかったのが、ロナウドが守りの局面でベンゼマと2トップ関係を作り、カウンターの局面では大きく違いを作っていたことだ。起点になれるオールラウンダーベンゼマ、得点することは世界1のロナウドが組んだ2トップは驚異だった。
CLでは、クロップドルトムント、ペップバイエルン、シメオネアトレティコマドリーを下して堂々の優勝。サッカーの4局面のうち多局面に対応可能なチームだった。
ただ、レアルマドリードは選手の離脱などで苦しみ、リーグ戦はアトレティコマドリー、バルセロナに次ぐ3位となった。
アンチェロッティは異なるクラブでCL優勝を果たした2人目の監督であり、CL3度の優勝は歴代最多となった。
14-15シーズン
メッシ27歳 バルセロナ所属 エンリケ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CL優勝 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦43ゴール21アシスト シーズン合計58ゴール31アシスト
新監督エンリケのもとチームのメンバーも入れ替わったシーズン。後にバルセロナ得点記録歴代3位にランクインするスアレスの補強。さらにセビージャからラキティッチも獲得。一方で、セスク、サンチェスなどはプレミアリーグへ放出し、チームの一新を狙った。
序盤はメッシ中央で、ネイマール左、スアレス右だったが、メッシが練習で右へ移動したことから、MSNの並びへと落ち着いたらしい。
今までのバルセロナとの違いは、深く守って”カウンターも”するスタイルだ。433でバルサらしく攻めるが、守るときにはメッシが前残りで442で守る。奇しくも、13-14シーズンのレアルマドリーと同じようなシステムだった。
この3トップの頭文字をとったMSNはCLで猛威を振るい、ペップバイエルン、アッレグリのユベントスなど名チームを退けてCL優勝。リーグ、カップ戦も制して、バルセロナとしてはペップバルサ以来の3冠を達成。
メッシにとって大きな変化は、プレーがゼロトップのアタッカーからサイドチェンジ、攻撃のスイッチになるクサビのパスなどを入れるようなゲームメイクへとプレーの比重が上がったことだ。スアレスという稀代の点取り屋が前線にいるために、メッシ自身はチームを上手く循環させる方向へとシフトしていったのだろう。
ロナウド29歳 レアルマドリード アンチェロッティ監督
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チーム成績 リーグ2位 CLベスト4 リーグカップベスト16
個人成績 リーグ戦48ゴール17アシスト シーズン合計61ゴール23アシスト
レアルマドリードはクロース、ハメス・ロドリゲスを獲得。一方でディ・マリア、シャビアロンソを放出した。選手の入れ替えという意味ではいいが補完関係にはない補強だったというイメージ。クロース、ハメス・ロドリゲスのほうがマーケティング、知名度的にも良かったのかもしれない。特にクロース、ハメス・ロドリゲスはワールドカップでも活躍し知名度を高めていた。
前線は頭文字をとったBBCの連携が高まって、ロナウドの成績がとんでもない。
ただ、このシーズンは離脱者も多く、出場機会でいうとイスコ、ロドリゲスが多くなっており、クロースも出場していたことから、ボール非保持局面で弱さを見せるようになっていた。昨シーズンにいたディ・マリア、シャビアロンソがいかにバランスのいい選手だったかがわかるシーズンだった。433で攻め442で守る、のとくに442での守りの強度が下がっていった印象だ。
結果、リーグ戦で足をすくわれることもあり、アトレティコには2敗と昨シーズンにくらべて苦しんでいた。さらにカップ戦でもアトレティコに敗れてベスト16。CLではアッレグリ率いるユベントスに敗れて、無冠でシーズンを終えた。
15-16シーズン
メッシ28歳 バルセロナ所属 エンリケ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト8 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦26ゴール16アシスト シーズン合計41ゴール24アシスト
バルサは補強は少なく3冠チームの維持が目的だった。それでも強いバルセロナ。リーグ戦ではレアルマドリードがバタバタとした影響もあり優勝。しかし、CLではグリーズマン、カラスコなどが台頭したアトレティコマドリードにベスト8で敗れた。
MSNのメカニズムとしては、メッシ、スアレスは守備をある程度免除されていて、ネイマールはSHとして左サイドを守備する。攻撃の時にはメッシのポジショニングに合わせてラキティッチがポジショニングを調整していた。メッシが引けばラキティッチはハーフスペースまで上がり、メッシが上がればラキティッチが下がっていく。
上記のようにMSNはネイマール、ラキティッチのような選手の犠牲によって成立していた側面が強かった。さらにネイマール、イニエスタ、ブスケツ、ラキティッチの守備局面での中盤4枚も、強固というわけではなく、なんとか凌いでメッシ、スアレスのカウンターに繋げるという微妙なバランスによって成り立っていた。
メッシ個人としてはプレーが完全にインサイドハーフやウイングのような選手へと移行していき、円熟味を感じさせる時期だった。
ロナウド30歳 レアルマドリード所属 ベニテス監督→ジダン監督
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チーム成績 リーグ2位 CL優勝 リーグカップ4回戦失格
個人成績 リーグ戦35ゴール11アシスト シーズン合計51ゴール15アシスト
3冠をバルセロナに許した昨シーズン。これを失敗と見てアンチェロッティ監督が解任された。この解任には賛否両論あったが、やはりバルセロナの大成功を許したことが解任の一因だったのかもしれない。
新監督に招聘されたのは、かつてレアルマドリードのカンテラ指導歴のあるベニテスだった。ベニテスはヴァレンシア、リバプール、インテル、チェルシー、ナポリなどを歴任しての故郷帰りで、ストーリーとしては美しい。
しかし、レアルマドリードホームのクラシコでは0-4で敗戦。18節の時点で11勝4分3敗、リーグ3位の成績で解任された。
後にロナウドはベニテスの指導について、僕たちにパスの出し方まで要求してきて窮屈だった、とコメントしており、選手との対立もあっての解任だったのだろう。
後任にはアシスタントコーチも務めていた伝説のOBジダンが招聘された。
ジダンは戦術ベースをアンチェロッティ時代のものへ戻して、433で攻め442で守る。そして、そこにアンチェロッティ時代は重用されていなかったカゼミロを組み込み、さらに攻守でのバランスをとっていった。
リーグ戦では苦しい戦いが続いたが、CLではクジ運の良さもあって、ローマ、ヴォルクスブルグ、マンCを下して決勝進出。そこに待っていたのがMSNバルサ、ペップバイエルンを下してきたシメオネアトレティコだった。
試合は死闘になり、延長、PKまでもつれ込んで最後はロナウドのキックでCL制覇となった。
16-17シーズン
メッシ29歳 バルセロナ所属 エンリケ監督
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チーム成績 リーグ2位 CLベスト8 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦37ゴール12アシスト シーズン合計54ゴール20アシスト
絶対的レギュラーだったアウベスが移籍。その穴をカンテラ出身のセルジロベルトが埋めた。一方でアンドレゴメス、デニススアレス、ウンティティなど世代交代を意識したような選手獲得も見られた。
MSNは健在でメッシのゴールへの関与も多くなっていった。MSN3シーズン目でメッシとスアレスは親友と言われる間柄と報道されていた。
ただ、チームとしての失点が少しずつ増えていったのも事実だった。補強をしたとしても、チームとしてプラスになるよりはバックアッパーの整備。そのため結果的にはMSNとイニエスタの調子、クリエイティビティによる形での構成は2シーズン前から変わらずに続いていった。
ただ、ライバルレアルマドリードはジダン監督のもとで少しずつマイナーチェンジしていたのに対して、ずっとバルセロナは同じような印象だった。上積みが感じられない。
そして、CLではベスト8でユベントス相手に無得点で完敗。CLでは戦術的に完成度の高いチーム相手に2年連続ベスト8で敗退。カップ戦では優勝したものの、リーグ戦ではレアルマドリードに勝ち点3差で優勝を逃した。
少しエンリケ体制に対して停滞を感じるシーズンだった。このころからクレの方々が試合内容に対してペップ時代と比較し不満を述べていたのが印象として残っている。
ロナウド31歳 レアルマドリード所属 ジダン監督
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チーム成績 リーグ優勝 CL優勝 リーグカップベスト8
個人成績 リーグ戦25ゴール6アシスト シーズン合計42ゴール12アシスト
ジダンのレアルマドリードは軸をBBCで乗り切ったシーズンだった。ただ重要なCLの試合ではシステムも変更して4312のイスコトップ下で臨んでいた。
さらにイスコ、アセンシオ、ベイルなどロナウド、ベンゼマを補助しながら守備にも走り回る選手の層が厚い。結果的には4312で攻め、442で守る、という形にマイナーチェンジしていった。またスコアに合わせて433へ戻したりと柔軟性があるのがジダンの采配の特長だった。
ロナウドの数字としては少し物足りないシーズンだったかもしれない。ただ、CLの舞台では勝負強さを発揮していて、バイエルン相手に2戦で5ゴール、アトレティコ相手にも1stレグでハットトリックの3得点、決勝でもユベントス相手に2ゴール。CL連覇の偉業に貢献した。
歴史的な偉業を成し遂げたチームは、ベンゼマ、ロナウドのFWから逆算され、圧倒的なポゼッション力をもつ中盤、個の力で何とかするDF、GKがいる崩せそうで崩せない最強チームだった。
17-18シーズン
メッシ30歳 バルセロナ所属 バルベルデ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト8 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦34ゴール14アシスト シーズン合計45ゴール20アシスト
衝撃のネイマールPSG移籍。歴代最高額での移籍となった。ピケ、スアレス、メッシらが残留を説得したがネイマールの意志は変わらなかったと言われている。
MSNの中で唯一サイドハーフとしての守備を求められてきたネイマール。ネイマールの活躍で勝つ試合も増えていただけに、不満が溜まり出ていくことになったのかもしれない。
補強ではドルトムントからデンベレ、リバプールからコウチーニョを獲得。なんとかネイマールの穴埋めを狙ったアタッカー補強だった。
監督もエンリケ解任、バルベルデが招聘された。バルベルデといえば、ビジャレアル、バレンシア、アスレチックビルバオなどラリーガ中堅クラスを率いて2強を苦しめていた知将。このような監督がステップアップしてバルセロナでどのようなサッカーを見せるか楽しみでもあった。
そんなバルベルデの選択は433で攻め442で守るは継続しているが、ネイマールの代役がまさかのパウリーニョだった。メッシが下がってきたスペースにはパウリーニョが入り込む。守備ではメッシの代わりに下がって442で守る。中央がブスケツ、ラキティッチになる442だったので、守備が改善されるという狙いだったのだろう。
ただ、このシステム的な特徴もあってか、段々とバルサらしさ、クライフ主義的なポジショナルプレーよりも、スアレス、メッシが如何にスーパープレーを出すかに焦点があてられたチームとなった。
良くも悪くも安定したチームでリーグ戦、カップ戦では優勝。しかし、CLでは、ベスト8ローマ戦で1stレグ4-1と圧倒したにもかかわらず、2ndレグで3-0の敗戦し大逆転負けを喫した。守備を安定させるための442だったはずが、ジェコを止められずに敗戦。3年連続のCLベスト8敗退に批判とバルサらしさ復活を求める声があがっていた。
ロナウド32歳 レアルマドリード所属 ジダン監督
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チーム成績 リーグ3位 CL優勝 リーグカップベスト8
個人成績 リーグ戦26ゴール5アシスト シーズン合計44ゴール8アシスト
まさかのCL3連覇の大偉業達成。特にCL優勝チームはクラブワールドカップなどのカップ戦増加もあってコンディションが悪い傾向にあるはずだが、まさかの3連覇だった。当時の欧州サッカーファンの常識としては、連覇すら想像できなかったのに3連覇とは・・・という印象。
サッカーの内容はそんなに変わらないものの、凄いのは離脱者が出ても試合の重要度、相手との力量差を計算してゲームプランを変えていくジダンの柔軟さ。
CLではエメリPSG、アッレグリユーベ、復帰していたハインケスのバイエルン相手に苦しんで失点しながらも、なんとか勝ちきり、決勝ではクロップリバプールを下して優勝となった。戦術的コンセプトがハッキリとしたチームをロナウド、ベンゼマで破壊していったのは印象的だった。
ただ、リーグではバルセロナ、アトレティコに次ぐ3位、カップ戦でもロナウドを全休させてベスト8と、獲得できそうなタイトルに狙いを絞ってのCL優勝だった印象だ。
理不尽なクロース、モドリッチのポゼッション、理不尽なカゼミロ、ヴァラン、ラモスの守備力、そして理不尽なベンゼマ、ロナウドの得点能力。そして、これらの理不尽な選手たちから逆算してチームを作り上げたジダン監督は名将だと言えるだろう。
18-19シーズン
メッシ31歳 バルセロナ所属 バルベルデ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト4 リーグカップ準優勝
個人成績 リーグ戦36ゴール14アシスト シーズン合計51ゴール22アシスト
イニエスタがバルセロナ退団。その後イニエスタは日本のヴィッセル神戸へ入団した。イニエスタは2度の3冠達成であり、ライカールト時代からいる選手だっただけに別れは辛そうだった。
その代わりではないが、ブラジルからアルトゥールを獲得。シャビを思い起こさせるようなセンターハーフの補強となった。
リーグ戦では強さを見せて優勝。リーグカップでも準優勝と結果を残したが、決勝の相手がマルセリーノ率いるバレンシアで、スアレス抜きだったバルサは敗戦。
さらにCLでは久々のベスト4まで進出し、クロップリバプールと1stレグで3-0にしたものの、2ndレグで0-4と大逆転を許して敗戦。またしても大逆転負けでリードを守り切れなかったことに批判が集まった。
リーグ戦では安定した強さを見せたものの、CLレベルになると守備が持たずに敗戦が数シーズンにわたり続いていて、クラブ会長、監督への風当たりは強くなっていく。
ロナウド33歳 ユベントス所属 アッレグリ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト16 リーグカップベスト8
個人成績 リーグ戦21ゴール9アシスト シーズン合計28ゴール11アシスト
まさかのユベントス移籍となったロナウド。スペインとイタリアの税制の違いが影響しての移籍、パートナーがイタリア人だから移籍、などと噂されていた。
ユベントスとしてはアッレグリのもと好チームを作り上げて、CL決勝までは進出するが3冠エンリケバルサ、ジダンレアルマドリードなどに敗れるなどあと一歩という印象だった。リーグ戦ではずっと連覇を続けていたため、CL優勝が悲願だった。そのために絶対的な個の力を求めてのロナウド獲得。
さらにユベントスのブランディングによる移籍という側面もあった。レアルマドリード、バルセロナのようなクラブに比べて、ユベントスは世界的にみてブランドが弱い印象だった。そこの向上を狙ってのロナウドだった。
さて、ピッチ内ではアッレグリがマンジュキッチ、ディバラとロナウドを共存させていて、リーグ戦でも独走して優勝。ただ、CLではまさかのベスト16敗退。勢いのあったアヤックスのインテンシティに対抗しきれなかった印象だった。
19-20シーズン
メッシ32歳 バルセロナ所属 バルベルデ監督→セティエン監督
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チーム成績 リーグ2位 CLベスト8 リーグカップベスト8
個人成績 リーグ戦25ゴール22アシスト シーズン合計35ゴール27アシスト
コウチーニョを放出し、グリーズマン、デヨングを補強。批判に対して、今季こそCLで好成績を、という意気込みを感じる。
バルベルデ監督の元、シーズン途中まではリーグ首位だったが、CLノックアウトラウンド前に解任となった。この解任は今となっては首をかしげるが、当時はバルベルデ監督ではCLで勝てないという印象は強かった。さらにバルベルデはバルセロナ伝統の433ではなく442などのシステムを用いていたことも影響したのだろう。
後任のセティエン監督はクライフ主義の433、343のポジショナルサッカーでレアルベティスを率いて活躍をみせていた。ここを評価されてのバルセロナへの招聘だった。クレからのバルサらしくないという批判へのアンサーだった。
しかし、リーグ戦ではジダンレアルマドリードに追い抜かれ、CLでもベスト8でバイエルン相手に2-8で大敗。またしてもベスト8での敗退に、批判の声は高まっていった。特にこのバイエルン戦は、バルセロナが何度挑んでも同じ結果になりそうな敗戦だったため、選手、フロント、ファンらの落胆は大きかっただろう。
このシーズン後、メッシはバルセロナ退団を宣言したが、バルセロナ首脳陣はそれを許さずに提訴の姿勢を見せるなど、メッシ対バルサという構図での対立が生まれた。メッシはサッカーメディアのゴールドットコムを通じて独占インタビューを受け残留を宣言したものの、残留は本意ではないとも答えていた。このインタビュー以後、バルサ首脳陣、特に会長バルトメウへの批判の声が高まり、クレたちが不信任決議のための署名を集め始めた。この結果、不信任決議案の可決がほぼ確定的になり、バルトメウは辞任となった。
1選手でありながら、会長を辞任にまで追い込むことのできるメッシはバルセロナにとって象徴以上の存在だと感じさせられる騒動だった。
ロナウド34歳 ユベントス所属 サッリ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト16 リーグカップ準優勝
個人成績 リーグ戦31ゴール6アシスト シーズン合計37ゴール7アシスト
アッレグリ監督がユベントスと双方合意の上で退団。年棒の問題での退団だったと噂されていた。また、ロナウドのマネージメントが難しかったために退団とも噂されている。
後任にはナポリ、チェルシーを率いたサッリ監督。とくにサッリのナポリは戦術的評価が高く、ユベントスとしてはチーム構築を少し攻撃的な方向へ導きたかったのかもしれない。
ただ、なかなかチームはメンバーを活かしきれた印象はなく、結果的にリーグ戦では優勝したものの、コロナによる影響での優勝だった。CLでは、ベスト16でリヨンに敗れた。2年連続のCLベスト16敗退、しかもCL優勝本命のようなチームではなく伏兵に敗れていたため、批判の声は高まっていた。
結果、このシーズンでサッリ監督は解任された。後ほどサッリは、「今までで一番チームマネジメントが難しく、自分の信念を曲げて妥協し、リーグ優勝のために戦術を変更した」とメディアに語っている。
また、ロナウド自身もMVPをディバラに譲るなど、本領を発揮できたシーズンとは言い難かった。
20-21シーズン
メッシ33歳 バルセロナ所属 クーマン監督
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チーム成績 リーグ3位 CLベスト16 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦30ゴール11アシスト シーズン合計38ゴール14アシスト
会長交代騒動が落ち着いたバルセロナだったが、実は赤字がとんでもない数字だったことが明らかになる。
その結果、目立った補強はできずにグリーズマンとメッシを共存させるという方向性のチームを次期監督として招聘したクーマンへ任せることになった。
クーマン監督はオランダ代表監督として、ネイションズリーグ優勝など結果を残していたにもかかわらずバルセロナからのオファーを快諾した。
しかし、クーマンのバルセロナ愛とは裏腹にチームは、クーマンのスアレス放出などをきっかけにピッチ上でギクシャクし始める。
そして、リーグ戦では3位で優勝をシメオネのアトレティコへ譲り、CLでもベスト16でPSG相手にいいところなく敗退。国内カップ戦では優勝したものの、タレントの質と量を考えると物足りない結果となり、クーマンも解任の噂が絶えなくなっていった。
ロナウド35歳 ユベントス所属 ピルロ監督
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チーム成績 リーグ4位 CLベスト16 リーグカップ優勝
個人成績 リーグ戦29ゴール2アシスト シーズン合計36ゴール4アシスト
ユベントスはロナウド獲得と共に、ロナウドプロジェクトと呼ばれるCL優勝を目指し、アッレグリに足りなかった攻撃的な姿勢を打ち出すスタイルを模索していた。そんなユベントスがサッリ監督を解任し招聘したのがコーチ経験すらなかったピルロだった。
ピルロは監督ライセンス取得試験でも、ポジショナルプレーに関する論文を発表するなど、攻撃的な戦術を好むタイプだった。そのピルロの特性とユベントスの目指すものが合致しての招聘だった。
シーズン序盤はポジショナルプレーを見せていたユベントスは好調だったが、徐々に相手チームからの対策や、失点の増加によってリーグ戦、CLともに苦戦を強いられていく。
そして、リーグ戦は最終戦までCL出場権を争って4位フィニッシュ。ただしリーグカップ戦ではコンテ監督率いるインテル、決勝では勢いに乗るアタランタに勝利し優勝した。
シーズンを通してユベントスは、攻撃的な戦術の継続を行ったものの、CLベスト16でポルト相手に逆転負け。リーグ戦でも優勝争いには参加できないなど厳しいシーズンを過ごした。
そして、ユベントスは、クラブ全体にとっても、所属するロナウドにとっても大きな決断をする。
21-22シーズン
メッシ34歳 PSG所属 ポチェッティーノ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト16 リーグカップベスト16敗退
個人成績 リーグ戦6ゴール15アシスト シーズン合計11ゴール15アシスト
突然、バルセロナはラリーガのサラリーキャップ制度、FFPのルール上の金銭的な問題でメッシとは契約更新することができないことを発表した。
その結果、メッシはバルセロナと契約切れとなって、PSGと契約することになった。
これを受けてメッシという守備を免除される特別な選手がいなくなることから、バルセロナが余計に強くなるのではないか、とか、バルセロナはメッシを特別扱いすることに疲れたため、半ば諦めて放出した、とか、さまざまな噂が流れていた。
一方のPSGとしてはメッシを加えたことにより、ムバッペ、ネイマール、メッシという世界的なアタッカーを揃えることに成功した。さらにラモス、ワイナルドゥムのようなビッグネームも補強し、タレントという意味では世界最高といってもよいチームを作り上げた。
しかし、期待されたCLではベスト16でRマドリードと対戦し、2ndレグでベンゼマの活躍によって逆転負けを喫した。
国内リーグは優勝したものの、世界的ビッグネームを擁しながらの敗戦はフランス国内で批判された。
結果的にシーズン終了後に、ポチェッティーノ監督・レオナルドSDが解任された。
ロナウド36歳 マンチェスターユナイテッド所属
スールシャール監督→ラングニック監督
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チーム成績 リーグ6位 CLベスト16 リーグカップ3回戦・FAカップ4回戦
個人成績 リーグ戦18ゴール3アシスト シーズン合計24ゴール3アシスト
20-21シーズン終了後のオフシーズン。ユベントスはSDであったパラティーチを解任し、アッレグリ監督を再度招聘した。
パラティーチはロナウド獲得後のユベントスを支えていたスポーツディレクターであり、ピルロ監督招聘なども、主導した人物と言われている。
パラティーチ解任によって、ユベントス監督となったアッレグリはロナウドであっても特別扱いしないと宣言するなど、シーズン前の合宿からチームは不穏な空気に包まれていると報道された。
そして、ロナウドはユベントスとの契約を破棄。報道ではマンチェスターシティへ加入寸前と報じられていた。しかし、事態は急転しロナウドは古巣マンチェスターユナイテッドへ加入することになる。
しかし、マンUはスールシャール監督のもとギリギリで保っていたバランスがロナウド加入と同時に崩壊。シーズン途中で、スールシャール監督は解任となった。
後任には暫定監督として教授ラルフ・ラングニックが就任した。クロップが「厄介な監督がプレミアリーグにやってきた…」と記者会見で述べるなど、就任当初はラングニックのマンUに期待が集まった。
しかし結果的にはスールシャール時代と変わらないサッカースタイルに落ち着き、スールシャール時代に崩壊したバランスを取り戻すことができずにリーグ6位、カップ戦でも、結果を残せず、ロナウドにとっては久々にCL出場権を逃すことになってしまった。
22-23シーズン
メッシ35歳 PSG所属 ガルティエ監督
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チーム成績 リーグ優勝 CLベスト16 リーグカップベスト16敗退
個人成績 リーグ戦16ゴール16アシスト シーズン合計24ゴール21アシスト
PSGにとって22-23シーズンは大きな変化のシーズンだった。シーズン前は、ムバッペがRマドリー移籍確実と言われていたが、結果的にPSGと契約を結んだ。
さらにSDにはカンポスが就任。カンポスは同郷のモウリーニョの右腕としてRマドリーの復活や、モナコCLベスト4、リールでのリーグアン優勝などの実績を誇るSDだ。
そのカンポスが主導したのか、シーズン前ポチェッティーノ監督が解任され、リールでカンポスとタッグを組んで、リーグアン優勝を経験したガルティエ監督が招聘された。
しかし、リーグ戦は優勝したものの、CLではベスト16でバイエルンを引いてしまい、そのままバイエルンに敗戦。なかなか、NMMの3人がワールドカップの影響で揃わなかったこともあり、厳しいシーズンとなってしまった。
ロナウド37歳 マンチェスターユナイテッド所属※シーズン途中に移籍
テンハーグ監督
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チーム成績 リーグ3位 ELベスト8敗退 リーグカップ優勝・FAカップ準優勝
個人成績 リーグ戦1ゴール0アシスト シーズン合計3ゴール2アシスト
マンチェスターユナイテッドは、前シーズン途中から暫定監督に就任していたラングニックとの契約を延長せずに、新監督に元アヤックスのテンハーグを迎え入れた。
テンハーグの就任に合わせて選手でも、アントニー、マルティネスなどのアヤックスの選手やカゼミロ、エリクセンなどの実力者を獲得している。
テンハーグは、シーズン序盤はロナウドを起用していたものの、シーズンが進むにつれてロナウドがベンチスタートであることが増加。
それもあってか、ロナウド周りの報道は、試合途中に帰宅した、不満分子になっている、ファンのスマートフォンを叩き落した、など騒がしかった。
そして、シーズン途中にロナウドはサウジアラビアのアルナスリへ移籍。復帰した古巣での最後はほろ苦い結末となった。
皮肉にも、ロナウド放出後のマンチェスターユナイテッドは、テンハーグのもとでバランスを取り戻しリーグ3位でCL出場権を確保した。