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ウルトラマンブレーザー感想#3『怪獣に人間ドラマは必要か?』
必要に決まってるでしょうが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
良質な怪獣映画には良質な人間描写がつきものだ。
初代ゴジラはその特撮技術もそうだが、核の恐怖と戦争の傷跡を描いた点で長く評価されたと私は思っている。ゴジラを殺す兵器を開発した芹沢博士とその周囲の人間模様も、濃密で重厚だ。
怪獣SF映画最高傑作と名高い『ガメラ2 レギオン襲来』も、人間をおざなりにしているわけではない。例えば本作のヒロイン・穂波碧は魅力あふれる人物だ。彼女は科学館に務める人間で、宇宙生物レギオンの解析に協力する。物腰は柔らく天然なところもあるが芯は強く、自衛官が手を差し出してもそれを取らず飛び降りたり、実家の本棚のゲド戦記の裏にウィスキーを隠していたりする、唯一無二の魅力を持つ人物だ。
怪獣至上主義映画の最先鋒『ゴジラ キングオブモンスターズ(KotM)』でさえ、家族を失い機能不全に陥った一家の描写には一定の強度がある(私はKotMの人間ドラマに本気で共感を抱いている。いやマジで)。
では、『ウルトラマンブレーザー』はどうだろうか?
「軟体怪獣レヴィーラに対抗する唯一の手段、それは新型殺菌剤FK1。
化学企業ノヴァイオに潜入したアオベエミはそこで何を見るのか。
次回ウルトラマンブレーザー、『エミ、かく戦えり』。才女の瞳が真実を映す」
「ミナミ アンリの故郷に伝わる伝説。千年の眠りから目覚めた山怪獣ドルゴを前に、アンリは幼馴染であるミズホの願いをかなえることができるのか? 次回ウルトラマンブレーザー、『山が吠える』。その封印を解いてはならない」
「空を覆う不気味な光。カナン星人の企みが実を結ぶとき、自我に目覚めた機械たちが一斉に狂い出す。
次回ウルトラマンブレーザー、『侵略のオーロラ』。バンドウ ヤスノブをいざなう言葉は天使の福音か、それとも悪魔のささやきか」
ブレーザーは怪獣だけでなく人間たちも魅力的だ。
特殊部隊SKaRD隊長のヒルマ ゲントは、地球防衛隊という融通のきかない組織において、その不和を強かに乗りこなす冷静沈着で頼れる上司だ。そして光の巨人『ウルトラマンブレーザー』に変身する人物でもある。
SKaRD情報担当のアオベ エミは潜入捜査のプロフェッショナルだ。正真正銘の天才だが危うげなところがあり、おとり捜査や怪獣に特殊弾頭を撃ち込むような危険な任務にも臆せず臨む。
ミナミ アンリは白兵戦のエキスパートで、彼女が操縦するアースガロンはCQC(近接格闘戦闘)モードにおいて真価を発揮する。真面目だが思ったことをそのまま口にする素朴さも兼ね持つ。
バンドウ ヤスノブはSKaRDの諸装備に精通するメカニックであり、アースガロンの整備も担っている。人懐こく人の良い性格で、気に入った機械にあだ名を付ける癖がある。
ナグラ テルアキは生真面目で規律に厳しい副隊長だが、根は優しく天然なところもあり、SKaRDのお母さん的な役割を担っている。怪獣の生態に詳しく、ゲント隊長の代わりに作戦指揮をとることもある。
2話が最も顕著だが、彼ら五人の間で交わされる会話は軽妙で絶妙に気が抜けている。だが同時に彼ら全員が優秀なプロフェッショナルであることも度々強調され、そのおかげか物語の進行はスムーズでストレスが少ない。
例えば、4話でゲント隊長とエミ隊員は捜査の方向性で衝突するが、それは敵を欺く演技であった。5話のアンリ隊員は古くからの言い伝えを信じる幼馴染に「あなたの言うことは信じたいけどこれだけでは証拠にならない」と冷静な判断を下しつつも影でエミ隊員に調査を依頼し、それが怪獣を撃退する鍵になる。6話のヤスノブ隊員は宇宙人を追って単身洗濯機の中に突っ込む(?)が、その際居合わせたゲント隊長に端的かつ的確な状況説明を残していく。しかもゲント隊長はその奇怪な状況を受け入れ、洗濯機と対話を試み部下を助けようとする(??)のだ。
4~6話はSKaRDのメンバーの掘り下げ回だ。そこではプロフェッショナルである彼らが、常識では測れ知れない事件に対し先入観を持たず柔軟に対応する強かさを持っていることが示された。それは同時に彼らの人間的な魅力を深めることにもつながっている。俳優たちの演技も見事で、台詞で説明しすぎない本編のクールな雰囲気を見事に彩っている。
怪獣も素晴らしかった。特に軟体怪獣レヴィーラのデザインと、山怪獣ドルゴの防衛隊の新装備を背負ってしまった山の守り神という設定は斬新だった。4~6話は縦軸にはあまり絡んでいない(とはいえ後々の重要な伏線が含まれたりもしている)単発回だが、バラエティ豊かな怪獣や宇宙人の起こす事件、ブレーザーの突飛な必殺技を楽しむことができた。ウルトラマンってこんな感じで毎回いろんな味がして、いろんな楽しみがあったよな……という感覚を思い出した。
新しいのに懐かしくて、見たことあるのに斬新なウルトラマン。それを毎週楽しめたのは、本当に幸せだ。