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ウルトラマンブレーザー感想#1『怪獣の時代来たれり!』
1997年、初めてテレビで怪獣を見た。記憶にある中で一番古い怪獣は、『ウルトラマンティガ』最終話に登場するガタノゾーアだ。その後キューティーハニーの後か前に放送していた『ウルトラマンダイナ』を楽しみ、続く『ウルトラマンガイア』に夢中になった。特に『ガイア』は今でも私の中で最高のウルトラマンだ。
その後はレンタルビデオ屋で毎週『VSゴジラ』を借り、ソフビや指人形を畳に広げ、公園で怪獣と心を通わせるサイキッカーごっこをした。怪獣だけがすべてではなかったけど、大きくてデカい生き物を空想して生きていた子供だったのは間違いなかったと思う。
大人になって『パシフィック・リム』を見て、そんな思い出がよみがえってきた。ロボットもカッコよかったが、自分の中のより古い部分を震えさせたのは、海を割りビルを蹴散らす『KAIJU』だった。このころ、子どもの時怖くて見れなかった『平成ガメラ』にドハマりした。ちょうどタイミングよくハリウッドでゴジラが復活した。特にハリウッド版2作目の『ゴジラ キングオブモンスターズ』は本当に素晴らしい作品で、監督が子供の頃聖書にゴジラを書き込んでいたらしいことを知って、あの頃怪獣に狂っていた子供が作り手に回っているのを感じた。
"怪獣の時代が復活する"!そんな予感があったし、実際2023年はそんな年だった。
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ウルトラマンに話を戻す。ウルトラマンにも怪獣が出る。初代ウルトラマンの前身である『ウルトラQ』はヒーロー不在の番組で、怪獣や宇宙人の引き起こす問題を一般人が解決する。その流れを汲んで、ウルトラシリーズは大体一話に一体怪獣が出て、最後はウルトラマンが倒すのがお約束だ。
だがいつからか、一話に一体新しい怪獣が出てくるようなことはなくなってしまった。その理由は一視聴者であるオタクには想像するしかない。しかし『毎回新怪獣を出すとそれだけで予算がかかる』というのは容易に想像がつく。毎週着ぐるみを作り、設定を決める。設定を決めたら、それをどう活躍させるのか考えないといけない。その分ヒーローの活躍が削られる。作った着ぐるみは倉庫に保管しなければならないが、倉庫代もタダではないらしい。それだけ投資をしても、彼らはたいてい一話きりでやられてしまうのだ。
2014年から放送している所謂『ニュージェネレーションウルトラマン』シリーズが、怪獣よりもヒーローの強化とパワーアップアイテムの販促に力を入れたのは自然なことだと思う。特撮ヒーロー番組は、子どもたちにおもちゃを手に取ってもらえないと終わりだ。やられ役で金食い虫で一話きりの怪獣に力を入れるのは、理性的な判断でないとすら思う。
むしろそんな中、ニュージェネレーションウルトラマンはよくやってきた。新しい怪獣を出せないなら過去作品のスター怪獣を出して魅力的に描こうとしていたし、新作怪獣も頻度は減ったとはいえコンスタントに出し続けた。
そしてシリーズが始まって十年、『ウルトラマン』の人気は順調に高まり、毎年大きなイベントをしたり配信サービスを始めたり玩具の売り上げも安定したり、はたから見て商業的に軌道に乗っているように思える。25話放送して半年間お休みする手法も、シリーズ単体の完成度を高めることに成功しているようだった。最初の『ギンガ』からは考えられないほどアクションや特撮技術はリッチになっていったし、怪獣を魅力的な存在として描くクリエイターも次第に集まっているようだった。特に直近の『ウルトラマンデッカー』は大傑作だった。ヒーローの活躍と若者たちの青春活劇を上手く織り交ぜ、新怪獣も過去作からの出演怪獣も魅力にあふれていた。私にとって『デッカー』は、『ガイア』と同じぐらい、もしかしたらそれ以上に大好きなシリーズだ。
デッカーが終わり、その出来に満足していた私に新作の情報が入る。
最新作の名前は『ウルトラマンブレーザー』。
次のウルトラマンは怪獣に力を入れるらしい!
「地球に飛来した宇宙甲殻怪獣バザンガ。破壊される街、なすすべない地球防衛隊。
だがその時、遥か銀河を越えた救命の光が現れる!
新番組ウルトラマンブレーザー、『ファースト・ウェイブ』。ネオンの街に巨神たちの咆哮が響く」
2024年1月現在、第1~3話までYoutubeで無料公開中です。ぜひに↓
ウルトラマンブレーザーの第一話は、特殊部隊の隊長である主人公・ヒルマ ゲントが輸送機から夜の街に降下するところから始まる。
続いて、火柱を立てながら渋谷の街を闊歩するエビのような怪獣。ニュースは、地球防衛隊がこの怪獣を『バザンガ』と命名したことを告げる。詳しい世界観説明や人物描写なしに、宇宙から飛来した巨大生物に対し特殊部隊が立ち向かっていくシチュエーションだけが淡々と描かれる。そして映される『ウルトラマンブレーザー』のタイトルーー。
まさに怪獣映画!『ゴジラvsビオランテ』『平成ガメラ』『シン・ゴジラ』を想起させるリアルな怪獣災害映画の絵作りを、テレビで見られるなんて!
ヒルマ ゲントは航空部隊との連携や司令部との軋轢に苦心しながらもバザンガに対し奮戦する。しかし、その攻防の中部下を助けるため窮地に陥ってしまう。その時、彼の腕に青い閃光が煌めく。光の中、ビルの陰から顔を出す正体不明の巨人……。
『ブレーザー』の初登場シーンは、これまでのウルトラマンで見たことがないような”異様”なものだった。無言で怪獣を睨みつける彼は、怪獣に向かって何かを捧げるような舞踊を舞う。”儀式”を終えた彼は猿のようにビルを上り、奇怪な叫び声を上げながら荒々しく戦う。その姿はまさに、人類と全く別の文化を持つ異星人だ。これまで見てきたウルトラマンのどれとも似ていない!
巨神たちの戦いを人類は見上げることしかできない。防衛隊員にも視聴者にも未知の存在であるブレーザーだが、彼が人類の味方だということははっきりとわかる。彼は背後にいる人間を救うため、強敵に向かって雄叫びを上げ威嚇するのだ!
ブレーザーは虚空から光の槍を取り出し、バザンガを撃退する。戦いを終え火の上がる渋谷の街から飛び去って行く宇宙人。意識を取り戻したヒルマ ゲントの手の中には、異星人の横顔が刻まれた石が残っている――。
『ブレーザー』の第一話は、これまでに見たことのない衝撃的なものだった。だが、ただ斬新で奇を衒っただけではない。『ブレーザー』は彼らしいやり方で、これがヒーロー番組であることを証明した。説明台詞もなしに、獣のような叫び声を上げるだけで!
そして『バザンガ』は滅茶滅茶かっこよかった。王道の二足歩行怪獣に、エビのフォルムを組み合わせた見事なデザイン。怒りを感じると触覚を立てる生物らしさ、ブレーザーと終始互角の戦いを繰り広げる獰猛さ、隊員に「刺し盛にしてやるよ!」と言われる愛嬌など魅力たっぷり。
”ウルトラマンに、怪獣の時代来たれり”!そう言って申し分ない第一波(ファースト・ウェイブ)だったと思う。
しかし第一話が素晴らしくともこの勢いを続けられるとは限らない。25話という長いスパンで放送するテレビ作品の宿命だ。最後まで見て文句を言えたらまだいい方で、そもそも途中で脱落した作品の方が最近は多い。オタクの老化である。
今後どんなに失速しても、この最高の一話を見れただけで良しとしよう。そう思いながら次の放送を待つことになった。