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ウルトラマンブレーザー感想#7『がんばれーっブレーザー!』
ヒーローショーは最高だ。いつもはテレビで見ているだけのヒーローが目の前で実際に動いている。いつもは見守るしかできないヒーローもその日だけは直接応援することができるし、ヒーローは必ずその声に応えてくれる。
怪獣のことばかり書いてきたが、私はヒーローも大好きだ。誰かを守るために戦い、正しさとは何か苦悩し、それでも必ず答えを出す。そんなヒーローの姿が大好きだ。
「出現した親子の怪獣。これに対し地球防衛隊は撃滅の作戦を展開する。
その光景にゲントは、そしてブレーザーは何を思う?
次回ウルトラマンブレーザー、『親と子』。命の選択が迫る」
「宇宙から飛来する隕石に対抗すべく奔走するSKaRD。しかしそれはかつてない脅威の前触れでしかなかった!
新たな敵を前にブレーザーはいかなる判断を下すのか?
次回ウルトラマンブレーザー、『エスケープ』。 隕石が開くとき、破滅が顔をのぞかせる」
「宇宙電磁怪獣ゲバルガを前になすすべのなかったブレーザー、ヒルマゲント。
両者をつなぐのはただ一つの使命。それに手を伸ばす強固な意志。
次回ウルトラマンブレーザー、『いくぞブレーザー!』。手にしたのは、雷をもたらす剣」
ブレーザーというヒーローは、なんというかとにかく……変だ。
そのデザインはここ最近のウルトラマンに比べてとても有機的で、銀色の体躯はまるで外骨格のように背骨や腹筋が浮き出ている。そこに刻まれる赤と青のラインはまるで血管が張り巡らされるようで、左右非対称の形状も彼が人間とは違う異形の生物であることを印象付けている。かけ声はこれまでのウルトラマンのどれとも違う、「ウロロロオオイ!」という奇怪なもの(冷静に考えると「シュワッチ!」も十分変なんだけど……)だ。大股を広げ両足ジャンプ、地面を揺らして怪獣を威嚇する。槍を投げるときにブリッジしたり、腰を何回転もねじれさせたりする。
ウルトラシリーズは毎年二回大きな催し、『ウルトラヒーローEXPO』というのをやっていて、私も今年初めて行ったのだが、そこでのブレーザーもなんというか……棒立ちである。子供たちやファンに手を振ったりとかもしない。何で連れてこられたかわからない動物園のパンダみたいな感じで、かといってクールで澄ましている感じでもない。
ブレーザーは、戦士より”蛮族”という表現の方がしっくり来てしまうような、そんな不思議な存在だ。少なくとも、正統派のヒーローではないと思う。そしてこれは、製作スタッフたちが狙っているものらしい。
このエピソードまでのゲント隊長も、ブレーザーとの距離を測りかねている。ゲント隊長はブレーザーと一心同体であるものの、彼と直接会話することはできない。せいぜい変身アイテムである『ブレーザーストーン』がキラリと煌めいたり、ポケットの中で発熱するぐらいだ。第9話の時点でも「俺が一回手をたたいたら、一回(体を)光らせてよ。いくよ?」と夢の中で呼びかけるのがやっとの有様であった。
これまでは『怪獣を倒す』という共通した目的でゲント隊長とブレーザーは協力することができた。しかし第10話、親子怪獣を駆除するかどうかで二人の意志は食い違ってしまう。またゲント隊長の体をブレーザーが操ることができるようになったのも不和の原因になってしまった。その緊張の中で、新たな強敵『宇宙電磁怪獣ゲバルガ』が地球に飛来するのだ。
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ゲント隊長が多数を生かすためには冷徹な手段を厭わない人物であることはたびたび示されてきた。『虹が出た』ではニジカガチを封じるためその操り手である横峯教授を殺すことも計画に入れていたし、怪獣に対しても「我々の日常が脅かされるならそう(駆除)すべきです」と発言している。彼の決め台詞である「俺が行く」も、自分一人の身を危険にして多数の部下を守れるならばそれを躊躇う理由はないという彼の信念の表れなのかもしれない。
対してブレーザーは、『命』というものに対してもっとプリミティブな感覚に基づき行動しているように思える。彼は戦いの際に、何かを捧げるような不思議な舞を踊る。それはまるで命を奪う前の儀式のようでもある。この動作が何を意味しているのか本編で説明されることはないが、彼の振る舞いには、何かしら一貫した行動原理や信念があることが示されている。けして”蛮族”ではない。
あえて形容するなら、ゲント隊長は『軍人』でブレーザーは『狩人』だ。ゲント隊長は後顧の憂いを絶つために怪獣の子供を殺そうとするが、ブレーザーはそれに反発し、地球防衛隊のミサイル攻撃からもかばう。ゲント隊長は自身の身を挺して最後まで敵に立ち向かおうとするが、ブレーザーは一時退却を選択する。敵前逃亡は軍人としては許されない行為だが、狩人にとっては当然の選択だ。
この複雑な対立構造を自然に演出し、なおかつ中盤のクライマックスに据えたのはかなり挑戦的だと思う。そして二人はこれを乗り越えるのだが、そのカタルシスには否応なしに心を震わされる。まさにヒーロー番組だ。
『ウルトラマンブレーザー』は、まごうことなきヒーローである。
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『親と子』はヒーローが『命の選択』を行った結果として、ゲント隊長の息子である『ヒルマ ジュン』からの尊敬と、防衛隊からの猜疑の目を向けられることになったという落としどころがよかった。敵対する存在の子供を殺すべきかどうかというような倫理的な問題は、どの選択を選んでも真の納得を得られることはない。ヒーローが選んだ選択が、良いことも悪いことももたらしたというのは誠実な結末だろう。
そして『エスケープ』、『いくぞブレーザー!』で登場した宇宙電磁怪獣ゲバルガ!ヒトデのようなシンプルなデザインから、丸まって攻撃を防御したり転がってみたり、両手を合わせて口に見立ててみたり、遊び心が満載なのに挙動の一つ一つが気持ち悪く不気味で、しかもメチャメチャ強い!ニジカガチがファンタジーならゲバルガはSF的な強敵だ。電磁パルスを発生させ機械を壊し、ネットに侵入してインフラを麻痺させるゲバルガは、人類社会にとってまさしく脅威で、恐ろしく素晴らしい怪獣だった。
それを倒すためにブレーザーが手に入れた新たな力、『チルソナイトソード』の設定も素晴らしい。『チルソナイト』はウルトラQのガラモン回に登場する人類の科学では破壊できない金属のことだが、これを防衛隊がゲバルガ撃退のために使用し、そしてそれを手にしたブレーザーの元で新たな力に変わる、というプロセスは本当に盛り上がった。そしてチルソナイトソードを持っていつもの『儀式』を行うブレーザーは、ものすごく神々しい!!ニジカガチでもそうだが、怪獣の力を得てパワーアップしていくコンセプトは『怪獣に力を入れる』ブレーザーという番組において非常に合理的で天才的なアイデアだと思う。
そして明かされる『セカンド・ウェイブ』。第一話のサブタイトルがこういう形で回収されるなんて思っていなかった。番組も折り返し、これから『ウルトラマンブレーザー』という番組独自の魅力が高まっていくに違いないと期待させるエピソードだった。