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beatmaniaの上達においてランダムは何故効果があるか調べた
正規だけでOK、ランダムを使わなきゃ上手くならないの話をXで見かけまして、自分もランダムを使う人の上達が早いと感じることがあり、正規のみVSランダム使えの話題は気になっていました。
しかし、「何故ランダムを使うと上達が早いのか」について、色々な譜面が出来るから程度の理由しかなく、納得できる理由が載った文章が見つけられなかったため、認知心理学、教育心理学の分野から調べてみました。
尚、ランダムオプションをいつから使うかについて、私自身は「やろうと思ったタイミング」で使い始めれば良い派です。今の所、ランダム常備はしなくても中伝まではいけると考えています。
ランダムで上達する理由
ランダムで上達するのは、文脈干渉効果による影響のようです。
文脈干渉効果とは
文脈干渉効果(contextual interference effect)とは、学習するタスクや状況が「切り替わること」や「混ざること」によって、脳に負荷がかかり、一時的に混乱(干渉)が起きる現象を指します。この混乱が、実は長期的な記憶やスキルの応用力を高める鍵となります。
簡単に言うと、 「同じことを繰り返す」より「バラバラに混ぜる」方が、最初は難しく感じても、後で強いスキルが身につきます。
つまり、beatmaniaで言えば、正規(固定配置)をやり続けるよりランダムの方が混乱するけど、上達に繋がるということです。
beatmaniaにおける文脈干渉効果の例
状況1: 正規で練習(低文脈干渉)
☆9を正規で10回連続プレイした場合
1キー=右手親指、2キー=右手人差し指、7キー=左手薬指、スクラッチ=左手、という配置が固定。
同じ譜面を同じ指の動きで繰り返すので、すぐに「このノーツはどの指で押すか」が体に染み込む。
結果
練習中はスコアがどんどん上がり、フルコンボも達成しやすくなる。
脳への負荷が少なく、短期的な安定感が得られる。
文脈干渉の度合い: 低い。同じパターンを繰り返すので、混乱(干渉)がほとんど起きない。
状況2: ランダムで練習(高文脈干渉)
同じ曲をランダムオプションで10回プレイした場合
毎回キーの配置がシャッフルされる(例: 1回目は1キーが左手親指、2回目は右手薬指など)。
「このノーツをどの指で押すか」を毎回考え直す必要がある。
たとえば、普段左手開始で処理していた「階段パターン」が右手になったり、スクラッチとの同時が取りにくい配置にくることも。
結果:
練習中はミスが増え、スコアが安定しない。フルコンボも難しい。
脳に負荷がかかり、「混乱(干渉)」が起きる。
文脈干渉の度合い: 高い。配置が毎回変わることで、脳が「以前のパターン」と「新しいパターン」の間で干渉を受ける。
文脈干渉がなぜ上達に繋がるのか
正規は低文脈干渉:短期的なパフォーマンスは上がる
練習中は楽で、スコアがすぐ上がる。でも、次の日や別の曲になると「あれ、忘れてる?」となることがあります。
理由は、脳が「同じ動きを繰り返すだけ」で済むので、深い理解や柔軟性が育ちにくいためです。
ランダムは高文脈干渉:長期的な学習向き
練習中は混乱してslow量産でミスだらけでも、1週間後や別の曲をプレイすると、「なんか上手くなってる!」と感じる。
これは、脳が「混乱」に適応しようと頑張る過程で、ノーツの「配置」や「リズム」を深く理解し、どんな配置でも対応できる力がつくためです。
この違いが文脈干渉効果のポイントです。ランダムによる「混乱」が、脳に「ノーツの配置を指の動きだけでなく、リズムや動かすタイミングとして覚える」ことを強制します。
文脈干渉効果の仕組み
1. 混乱が脳を刺激
1P正規の場合、バスは1レーンのため通常左手を使いますが、ランダムで「バスが右手になった!」と混乱すると、脳は「どの指を使うか」「どうタイミングを合わせるか」を再計算します。
このプロセスが「干渉」を生み、単純な筋肉記憶を超えた理解を促します。
2. 違いを見分ける力がつく
正規だと「左手で1レーン始まりの階段を押す」だけでも、ランダムだと「どこのレーンが始まりの階段であっても押せる」ようになる。これが、初見譜面や高難易度曲への応用力に繋がります。
3. 長期的な記憶が強化
研究(例: Shea & Morgan, 1979)によると、高文脈干渉は短期的なパフォーマンスは下がりましたが、1週間後のテストで高い保持率を示しました。『beatmania』でも、ランダム練習後に「前より安定してる」と感じる瞬間があればその効果と言えるわけです。
結論
『beatmania』のランダムオプションが有効なのは、まさに文脈干渉効果を活用しているからでした。レーンの不規則な変化が脳に混乱をもたらし、それが長期的な上達や柔軟性を育てます。一方、正規は文脈干渉が少なく、短期的な安定感に寄与するけど応用力が伸び悩みます。これがランダムを使うと上達が速いと言われる理由だったとわかりました。
実は最近、たまに正規禁止の日を設けているのですが、確かにその日の収穫はほぼ作れなくても、4日後に行った際、自分でも引くレベルの収穫を出せていました。恐らく文脈干渉の効果が出ていそうですね。
おわりに
今回調べた内容は「認知心理学」と「教育心理学」が最も直接的に関連する分野のようですので、詳しく知りたい方はこの分野の論文を探すと良いかもしれません。
1つ気になったのは、ランダムを使わなくても、1曲ごとにプレイする曲を変えれば、擬似的に文脈干渉が出来るのではと思ったのですがどうなんでしょうね...
また、調べている際に、ブロック練習、ランダム練習、インターリーブ練習という練習の種類を知ったため、普段のプレイで効果的な選曲やオプションの選び方についても別途活用できる使い方を考えたいなと思っています。これらの話はまとまり次第、またnoteにあげたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
おまけ:AA 乱ノックが何故有効と言われていたか
textageで過去作の収録曲を見て、これは乱ノックせざるを得ないな…と思いました。あまりにも☆12が少ない…
5thで初めて☆12のVが登場し、REDまでにColors(radio edit)、A、PLEASE DON'T GO、桜、moon_child、one or eight、Innocent Walls、One More Lovely、雪月花、AA、FAKE TIME、gigadelic、ピアノ協奏曲第1番"蠍火"
※ここまで13曲しかない
HSで冥が収録され、DDから皆伝に冥が君臨しているわけですが、収録曲があまりに少ないため、到底正規だけの練習で皆伝のレベルに至るのは非常に厳しいと自分のレベルでも思います。
また、LEGGENDARIAはSPADAまで無かったそうです。Pen終盤から始めた私にはなかなか衝撃的な事実でした…
そのため、かなり古いバージョンからプレイされている方は、特にランダム常備しないと上達が難しかったことから、ランダム常備の必要性を説いている可能性もあると考えます。(全員がそうではありませんが…)