スクラップ・アンド・ビルド
隣人が明日、いなくなる
何十年と住んだ家を追われる、優しい人達だ
未曾有のパンデミックから時間軸が曖昧なままもう、3年が経つ
人と人との繋がりが希薄化し、停滞した澱んだ水槽のような世界でなんとか、秒針をすすめてきたように思っていた今日
あの頃住んでいた街を通りすぎる機会があって、まだどこか痛むなんて馬鹿だ
保険が効かない慢性疼痛を後生大事に抱えたくはないから死ぬ気で壊して、作り直して2年以上が経つのに何故なのか
留まりたい感傷を殺して血を流してでも動かし続けていた、そんな今日に
「あなたはこんな人生にはならないでね」と、隣人の嘆きを聞いた
わたしは生きている今に後悔はミリもない
傲慢さへのペナルティもそれ相応に負ってでもいつか、そんな風に吐露をするのだろうか
晩年を迎えた彼女は、でも本当に終わりを迎えているのだろうか
概念ほど不確かなものはなくて、時間は一方通行ではなく伸び縮みをする
少女は老婆にもなるし、逆もまた然りだ
関係のない人が、淋しい終わりと言うことは簡単だけど、それをそうだと決めていいのは本人だけなのだから
明日、早起きをして隣人を見送る
少しでも優しいスタートになるように願う
終わるようで始まる、壊しては作りことが出来るのだから