13年前の育児日記⑩ 「私の若い頃はねー」という大先輩の恐ろしい話
「あんた偉いねー!」と手放しに褒めてくれるのは、やっぱり女性が多い。いや、ほぼ女性だ。男性の反応は、どうしてそんなことするの?とか、出世はできんねとか、戻れない気がする、みたいな反応ばかりだ。
戻れない気がするなんて、奥さんに言ってみればよいのに。育休を取得している女性は、大半が職場に復帰するために取得しているはずだ。現場の声を聞くと、職場に復帰した女性の中には、元通りの部署に戻れなかったりフルタイム+残業という働き方ができなかったりという経験をしている方がいるようだ。
だからこそ、ではないが、男性も育休を取得することで、育児の経験だけでなく、『職場復帰する』という現実を味わうべきだと思う。そして、身をもってそういう経験をした人こそが、制度を決める役職に就いて、現状に即した制度に改善していってほしいと思う。
育休を取得した人が出世しない現実なら、少子化に歯止めはかからない。こういう制度を決めている人々は、ほとんどがそれを経験したことのない人ばかりのように思えてしまう。せいぜいヒアリングなどで想像して決めているだけのように感じてしまう。
どうか、実情に即した制度になってほしい。
そんなことを思っていたら、大先輩(女性・育休取得経験あり)との雑談の中で衝撃的な話を聞いた。
まず、大先輩の若い頃。産休はあったが育休はまだない時代。
来年度か再来年度に“育休”という権利が新しくできると職場で話題になったそうだ。その時、上司にこう言われたそうだ。
「あんな馬鹿げたもん、とらんわな?」
また、その時妊娠中の女性には、その上司は何の配慮もしなかったそうだ。
「病気じゃないんだから、他のみんなと同じことをしてもらわなきゃ困る」と。
普段の業務に加え、真夏の炎天下の中外で草むしりも命じられたらしい。その女性は、何も言わずひたすら草をむしっていたと。おなかが大きくなると、外にしゃがんで後ろ手で草をむしったと。
私が唖然としたのは、その女性はついぞ無事に出産ができなかったということを聞いたときだ。怒りすらこみ上げた。訴えたいと思った。
今、こんなことを上司が言おうものなら、大変なことになるのではないか。育休なんてとらないよな?普通に働けよな?
妊娠は病気ではない。それはその通り。しかし、過去にも何度か書いてきているが、人によって妊娠にも相性があるし、子どもがおなかの中にいるということは、“特別なこと”であるのは事実だ。
働きたくて働けるならそうすれば良い。中には働けない人もいる。まずは、母子ともに無事に出産をしてほしい。そのために人を頼ってほしい。
助け合ってほしい。
男性の育休はまだまだ珍しい今。女性の育休取得は当たり前になっているところが多いが、それも、女性ががんばって取得をしてきてくれたから【当たり前】になっているんだな。
大先輩の若い頃の話を聞いて、ゾッとした。その頃と比べたら少しは改善されているようだが、制度だけではだめだと痛感する。
一番改善しなきゃいけないのは、人の頭の中なんだな。