インドネシアで実は知られている日本の文化・習慣
東南アジアに位置し世界第4位の人口を誇るインドネシア。日本食やポップカルチャーといった日本の文化はすでに浸透し、日常的に親しまれています。今回は、そのほかにインドネシアで意外と知られている日本の文化や習慣に焦点を当て紹介します。
あなたの地域の観光資源が、実はインドネシアからのインバウンド観光客に関心の高いものかもしれません。この記事を読んで、何かひとつでも新しい気付きがあれば幸いです。
民族・宗教からみるインドネシア
まずは、インドネシアという国に住む人々や、その中でも日本に旅行に来る人はどのような人なのかをみていきましょう。
インドネシアは多民族国家
インドネシアは単一民族国家ではなく、約300もの民族によって形成されている多民族国家です。その大部分を占めるのがマレー系です。一方で、国内の財閥のほとんどが中華系(華僑)によって創業・経営されており、彼らはインドネシア経済において大きな影響力を持っています。華僑は全人口の1.2%(2010年国勢調査)から3%程(実際の推定値)と言われています。(参考:株式会社国際協力銀行「インドネシアの投資環境」)
訪日インドネシア人の民族構成
インドネシアは人口の大部分がマレー系で、中華系(華僑)が数パーセントという民族構成ですが、日本を旅行で訪れるインドネシア人の民族構成は少々異なるようです。
日本政府観光局(JNTO)の調査(※1)によると、訪日インドネシア人の民族構成は中華系インドネシア人が51.5%、マレー系インドネシア人が48.3%となってます。マレー系の比率は年々高まってきているものの、中華系の存在感が大きい市場といえます。
※1:2019年にJNTOが主催した訪日旅行商品の紹介・販売を行う「ジャパン・トラベル・フェア」の会場において、購入者を対象に実施したアンケート調査の結果より。訪日インドネシア人観光客の民族構成に関する全数調査は存在しない。
インドネシアの宗教
インドネシアの宗教を考えるときに特徴的なのが、世界最多のイスラム教徒を抱える国であるということです。ただ、イスラム教は国教という位置づけではありません。憲法では、全ての国民が何かしらの宗教や信仰を持たなければならないと定められています。
2021年のインドネシア宗教省の統計によると、総人口の約87%(2億3800万人)がイスラム教徒です。次いで、キリスト教徒が約10%(プロテスタント7%、カトリック3%)、ヒンドゥー教徒が約2%、仏教や儒教、その他が約1%です。
日本でも有名な観光地のバリ島はヒンドゥー教徒の割合が高いため、バリ島に旅行に行ったことのある人はインドネシア=ヒンドゥー教というイメージを持っていることもありますが、ヒンドゥー教徒は総人口のわずか2%程度なのです。
また、ジョグジャカルタもインドネシアの人気観光地のひとつですが、訪れる人が多いボロブドゥール遺跡は仏教の寺院です。
訪日インドネシア人の宗教構成
インドネシアは人口の大部分がイスラム教徒で、その他の宗教が数十パーセントを占めるという宗教構成ですが、日本を旅行で訪れるインドネシア人の宗教構成は少々異なるようです。
日本政府観光局(JNTO)の調査(※2)によると、訪日インドネシア人の宗教構成はキリスト教徒が過半数を占め(約51%)、次いでイスラム教徒が約34%、仏教徒が約15%、ヒンドゥー教徒が0.6%となっています。年々、イスラム教徒の比率は高まってきていますが、依然としてキリスト教徒が中心です。
※2:2019年にJNTOが主催した訪日旅行商品の紹介・販売を行う「ジャパン・トラベル・フェア」の会場において、購入者を対象に実施したアンケート調査の結果より。
インドネシア人に意外と知られている日本の文化・習慣
ここまで、国全体や訪日インドネシア人の民族・宗教構成をみてきました。この状況から「インドネシア人」と一括りにするのは難しく、多種多様な文化や考え方が存在する国だということがわかります。
そんなインドネシアで、日本の文化・習慣として知られているものを8個ご紹介します。
茶道
芸者
祭り
花火
花見
着物
折り紙
神道
茶道(Sadou)
抹茶(Matcha)が浸透しているインドネシアでは、日本には茶道という「茶を飲む儀式」があるということが知られています。単にお茶を飲むだけでなく、作法や道具、部屋なども重要な要素だと紹介されることが多いです。茶道は日本全国に広がる文化で、どの都市でも体験できると思われているようです。
芸者(Geisha)
茶道に並び、日本の文化としてよく紹介されるのが「芸者」という言葉です。日本の伝統芸能のひとつで、唄や踊り、音楽などの日本の芸術を披露する女性として知られています。
インドネシアでは関心の高い芸者ですが、日本ではあまり馴染みがない人や地域もあり、認識にギャップがあります。
祭り(Matsuri)
日本の文化として「祭り」もよく紹介されています。祭りは仏教(寺)や神道(神社)と関係があり、各地域には様々な種類の祭りがあると知られています。
各地域の祭りを訪日インドネシア人に紹介する場合には、祭りの目的や特徴(独特の踊りがある、神輿などの独自の装飾がある等)、歴史をアピールするとよいでしょう。
花火(Hanabi)
インドネシアには新年や祝日に爆竹や花火を鳴らして盛り上がる習慣がありますが、個人や小さい団体単位で行われるため、日本の花火大会のような大規模なものではありません。
このため、日本の文化として「花火(Hanabi)」という言葉が知られています。日本の花火は、単に盛り上がることを目的としているのではなく、美しさを楽しむものと紹介されることが多いです。
花見(Hanami)
インドネシアでは「桜」が非常に有名で、日本を「桜の国」と表現することがあります。その桜を楽しむフェスティバルとして、「花見」という文化があると知られています。
花見は、桜の美しさを家族や友達などと楽しむことだと紹介されることが多いのですが、実際に日本では屋台が出店する公園があったり、飲食しながら歓談するというパターンが多く、インドネシアでの認識と少しギャップがあります。
着物(Kimono)
日本の伝統衣装として「着物」も有名です。また、着物と合わせて浴衣や振袖、留袖などにも言及されることがありますが、これらの違いを認識している人は少ないでしょう。
訪日インドネシア人には着物体験が人気ですが、着物だけでなく茶道や温泉などの他の文化体験と組み合わせると付加価値が向上するでしょう。また、婚前旅行や新婚旅行で着物を着てのウェディングフォトの需要もあります。
折り紙(Origami)
海外で人気があると言われている「折り紙(Origami)」ですが、インドネシアでも知られています。インドネシアでは、世界中で人気の折り紙が実は日本の文化だったと紹介されることが多いです。
日本では折り紙といえば鶴というイメージが強いですが、インドネシアにはそのような認識はあまりありません。ハート、蝶、花、星などが簡単な折り紙と思われているようです。
神道(Shinto)
宗教に関心の強いインドネシア人だと、日本発祥の宗教として「神道(Shinto)」という言葉を知っている人も多いです。
日本の文化として「祭り」が紹介される際には、神道の施設(神社)や仏教の施設(寺)で行われるものである、と神社と寺をしっかりと分けて説明されることが多いです。
また、日本の歴史的な観光名所として神社や寺が紹介される際にも、双方を分けて考える場合が多いようです。例えば、とあるインドネシア語のサイトでは以下のように神社と寺が紹介されていました。
〈日本で有名な神道の施設〉
伊勢神宮
厳島神社
明治神宮
伏見稲荷大社
〈日本で有名な仏教の施設〉
清水寺
金閣寺
浅草寺
東大寺
日本人でも混同しがちな神社と寺ですが、インドネシアではそれらが区別されて認識されているようです。なお、Jinja(神社)やTera(寺)という言葉はあまり知られていないため、Shinto(神道)やBuddha(仏教)という言葉を使用する方が親切かと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事ではインドネシアで意外と知られている日本の文化・習慣を紹介してきました。
日本食やマンガ・アニメなどのポップカルチャー以外にも、インドネシア人から関心の高い日本の文化はあります。自分たちの持つ観光資源がもしかしたら訪日インドネシア人に楽しんでもらえるかも!と思って頂ければ幸いです。
#TabiPocket 編集部