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言霊と呪

言葉にはすごい力が宿っています。言葉には神なる力が秘められています。私たちが時を超えて縛られてきた思いーーそれを呪(しゅ)と呼びます。何千年も何万年も、あるいは時空を遥か超えて、持ち越してきたかもしれない『呪』を一瞬で解き放つ『魔法の言葉』というものが存在します。



占星術で言うと、私たちの『呪』は月であり土星です。冥王星もそれを示しているでしょう。呪とは自分が自分にかけた制限であり呪縛です。それは思いこみと恐怖による巨大な黒い結界のようなもの・・・



私は「月の呪」という無限ループから目が覚めた瞬間のことを明確に記憶しています。それは時が止まったような瞬間でした。ああ、私は長い長い夢を見ていた・・・と思いました。潜在意識リーディングによると、私は過去生で、権力者や仲間から散々理不尽な目に遭わされたようです。



確かにそうなのだと思います。小さな頃から本当は人が怖かった。根底に人間への根深い不信感がありました。月が蠍座であれば、人を信用してはならない、いつ裏切られるかもしれないーという「呪」を抱えています。



だからこそ、恋人や配偶者、あるいは親友や家族。自分にとって特別に親しい大切な相手をすぐに疑います。それは大切な愛を失いたくないからです。もう二度と痛みを繰り返したくないからです。



でも、相手を疑うことや余計な詮索をすることで、守りたい愛を守れるわけではありません。失いたくないものにしがみついたり、無理やりに人の心や何かを手に入れようとする全ての行為。それは完全に逆効果なのです。そのことが全く見えないパニック状態になるのが月の呪です。



かつて、私も散々夫を疑いました。誰と会うの?何をしていたの?と蠍座の月が不安的になると、執拗に訊ねていました。親友にだって同じです。何かあるとどんどん妄想が拡がる。きっと私を遠ざけようとしているのだと思い込み、自分から大切な関係性を壊してきました。



そんな態度を取ると、相手はとても苦しくなります。自分は疑われている、信じられていないと感じます。重たいし苦しくなるだけ、なんです。でも、月の呪は根深いので、そうそう簡単には解けません。それに気づくことは容易ではありません。



ある時、夫が言いました。「俺は何も難しいことなんて望んでいない」と。美味しいものを美味しいと喜び、美しいものを美しいと喜び、いつも幸せそうにしていてくれたらそれでいいんだよ、それが最高に嬉しいんだよ」と。その瞬間、私の呪は溶けていきました。



どうして私はずっと人間を疑っていたのだろう、どうして過去と同じことが続いていくと思い込んでいたのだろう、どうしてこんなに自分の心を複雑にして、ここにある愛や喜びを認めることができなかったのだろう・・・と。



月が蠍座にある配偶者や恋人を持つ方は「何も難しいことなんて望んでいないよ、幸せでいてくれたらそれでいいんだよ。信じるべき大事なものは今ここにあるよ」と、何度でも言ってあげてください。きっと、月蠍座のいたいけな心はやがて解けていくでしょう。



月が蟹座にある方にも同じことが言えるでしょう。「有能である必要なんてないんだよ。あなたがいるだけで癒されるよ、心が温かくなるよ。いつも幸せそうにしてくれたらそれだけで最高なんだよ」そう言ってあげてください。


月は小さな子どもでもあります。その子はいつだって不安なんです。その不安の根っこに優しく触れた時、光が届いた時、それは天に還っていくのです。「それは思い込みだよ、事実ではないよ。大丈夫。君はもう何も失うことはないんだよ・・・」それは呪を解く魔法の言霊です。

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