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牡羊座・天秤座軸

牡羊座・天秤座軸が存在している理由を端的に表現するならば、人類よ、恋をしましょうーーです。どなた様も「命短し、恋せよ乙女」です。私が悩み多き乙女であった二十歳の頃、あのね、人として本当に大切なことは恋愛からしか学べないんだよーーそう言ってくれたのは太陽天秤座の女性でした。あれから長い月日が流れた今、その言葉がいかに真実であるのか、よくわかります。



牡羊座は12星座のトップバッター、地上に生を受けたばかりの赤ちゃんのような荒削りで嘘のないエネルギーです。精一杯に泣く、笑う、要求する、表現する。そこに理屈も正しさも必要ありません。誰しもが「内なる牡羊座」を発露させずには、地球人生を始めることができません。



ひとつ前の魚座では自我が融解して全体に溶け込んでいます。それは対立や差異のない穏やかな世界です。でも、個が全体に融合したままでは大変に具合が悪いーーのです。一体のままでは体験も成長も生まれない。自分が自分である物語を創造していく人生自体が意味をなさない。肉体を持ってわざわざ生まれてくる価値自体が消えてしまう。



固有性・個別性というアイデンティティはいわば<物質次元的幻想>でもあります。個性や自我を取り立てて重要視することは宗教世界・精神世界的には無駄なことのようにも捉えられます。しかし、牡羊座的勇敢さと率直さにより輝く自我とは生命の土台であり、それによって<私>が主人公の地上人生が始まるのです。



社会の中で、私という固有性をありのままに表現していくことは難しいことです。しかし、まずは自己表現。それだけでいいのです。その結果、それが周囲にどんな影響を与えようと、どんな反応や反響を引き起こそうと、そんなものを考慮する必要は牡羊座にはありません。しかし、純粋な牡羊座的性質を持って、私はこうです、俺はこう思うーーをそのまま表現することは、とてつもない真実そのものにもなってしまうのです。



なぜなら牡羊座は野生的本能に根ざしていて、後付けの理屈や正しさに汚染されていない唯一のサインだからです。ピュアな生命感覚を保持している牡羊座の言動は人をハッとさせ、「何か」を目覚めさせます。その何かとは「<私>独自の感覚であり、<私>の物量的存在の重さ」です。



ああ、私というものを私自身が軽んじていた。外側から後付けされた価値観や思い込みの中に純粋な私を埋没させていた!そう気づかせるだけの力があります。勇敢で熱意があり人や物事を動かしていく力を備えています。だからこそ、牡羊座はトップバッターであり、永遠のプレイヤーです。



でも、牡羊座の衝動性がそのままでは立ち行かなくなる場面があります。それが恋愛でありパートナーシップです。目的地まで最短距離で進もうとする火のエネルギーを最も純粋に保持している牡羊座が、初めて「待つこと」を要求されるのが恋をした時でしょう。誰からも何からも自己の存在証明とその表現を制限されることを嫌う牡羊座が唯一「他者からの制約を受け入れる」のがパートナーシップにおいてです。



一方の天秤座は生来のバランス感覚を備えています。それは自分の言動がどのような影響を与えるかを瞬時に察知できる、類稀なる聡明さでもあります。また、生まれながらのホスト・ホステス=おもてなしと配慮のプロです。牡羊座とは違い、天秤座は「自己と他者との関係性の中から自分自身を見出していく」方向性を持っています。相手がいてこそ輝く自己、関係性の中で発見されていく<私>が天秤座です。



だからこそ、パートナーシップのサインですね。ですが、牡羊座も天秤座もアプローチの方向性が異なるだけで「この世界の中での体験や関係性を利用してより深い自己を発見していく」ことは同じです。相対性の中でこそ輝くのがこの二つのサインなのです。つまり、自分を主張することと他者と調和することの間にあるあらゆるバランスを学ぶ軸、アイデンティティとハーモニーの軸です。



聡明で社交性があり公平で中立的。美的感覚とバランスに優れた天秤座。その賢さが行きすぎることで、時に自己を殺してしまうのが天秤座の落とし穴です。無理もありません。自己を主張することで返ってくる世界からの反響が瞬時に理解できてしまうのですから。親や世間、パートナーや周囲からのあらゆる摩擦が想定できてしまうから、先に自分を引っ込めてしまうのです。



そんな聡明な天秤座が冷静さを失う場面があります。それが恋をした時です。平和や調和、周囲との均衡が崩れるのなら、私の願いや私の欲求、ひいては私の感情や価値観さえなかったことにしようーーこのような天秤座的態度が、その時はもはや全く美徳ではなくなります。人を好きになった時、牡羊座も天秤座もそのコアが揺れ動きます。そして、二極は融合へと向かうのです。



私たちを取り巻く現在の社会は一律化・非個性化を強く求めてきます。実際のところ、<私>という個を一切抑えることなく、周囲との調和を図ることは至難の技です。でも、ぶつかり合うことを恐れていては、きっとそれは永遠に達成できません。数十億いる人類はそれぞれに異なる個性を持っています。



牡羊座・天秤座軸の融合はむしろ「衝突・分離から始まる」と言えます。無条件に仲良くしましょう、わかり合いましょうーーそれは到底無理な話だと思われます。とにかく衝突を避けようとする態度だけでは、芯からの調和なんて実現できません。それは多くの夫婦間のパートナーシップの実現が一朝一夕で達成されるものではないことを見れば明らかです。



衝突を恐れない、誠実に伝え合う。パートナーシップには勇気と根気も必要ですね。思いやりを持って、相手への尊重の念を持って、それでも<私>を表現し続けていく。この軸を蔑ろにしていることで世界に孤独が生まれています。自己と他者・世界との距離感と関係性が失われることで、世界から本当のパートナーシップが消えかかっているようにも感じられます。



この軸は生きていく上での基本です。基本が失われたことで、本来はもっと簡単に享受できるはずの「精神的・物質的な豊かさと人間同士の一体感」が遠いものになっていると感じるのです。喧嘩や対立ーー上等だと思います。それはすでに調和と融合を内包しているのですから。



自分が自分のままでいても必ず相手と調和できる世界がある。それを信じることから、そのための誠実さと勇気を持つことから、この軸の健全化が取り戻されていく。牡羊座・天秤座軸の融合に最も必要なことは「他者や世界と本気で関わる勇気、他者や世界を愛する気持ち」です。



その時、私たちは恐れ、痛み、嫉妬、怒り、自己憐憫、悲しみ・・・あらゆる生々しい感情を味わうことを避けることができません。そして、それを避けようとすれば、最大の喜びや感動もまた遠ざけてしまうのです。人として本当に大切なことは「他者や世界と本気で関わることから生まれる感情体験からしか得られない」ーーそのことを教えている重要な軸です。



どなた様も、自分に人に世界に、目眩くような恋をしましょう。傷つくことを恐れるなかれ。傷や痛みさえも最後には甘美な雫に変えてしまうのが「もう一人の私である他者を求め、お互いに響き合いたいと熱望する恋というエネルギー」です。

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