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火星の成長プロセス〜内なる戦士
火星は「冥王星から生まれいずる衝動」であるとされています。冥王星は根源的な痛み(不安・恐怖・強烈なコンプレックス等)と関わります。もう二度とあの痛みを繰り返さないぞ、もう二度と冥界へは戻らないぞーーそんな冥王星からの強い衝動が『純粋な性エネルギー』へと形を変えたもの。それが火星の源であると言えそうです。
人生の初め、私たちはその「二度と繰り返したくない痛み」が何であるのかを意識していません。それどころか、痛みを潜在的に抱えていること自体、ほとんど意識化していません。ゆえに、火星の持つ衝動は不安定で、常に暴発する危険性を持っています。得体の知れない衝動によって突き動かされる火星は、いとも簡単にコントロール不能に陥ります。
コントロールが効かないゆえ、暴発的で衝動的になります。怒りに身を任せる行為、理性を失ったあらゆる行為、自罰的で破壊的なあらゆる行為、後先考えない衝動的な行為、無駄にエネルギーを使い果たすだけの一過性の行為となって発露し、しばしば食欲や性的衝動の暴発としても現れます。
これが未熟な段階の火星です。未成熟な火星が引き起こす悲劇、その最たるものが戦争であり、殺戮であり、暴力や性犯罪でしょう。その力の矢印が自分に向いた時には、自らの命さえ絶ってしまうのです。絶望感、希死念慮、強い自己否定などは感情なので、それだけでは行動には移されません。行動力を司る火星がそれらをレシーブして、実際的な行動として「発露してしまった、表現されてしまった」時、悲劇が起こります。
鬱病は良くなってきた時こそ、注意が必要です。躁状態(ハイの状態)に入った時が最も危険であると言われますが、これはまさに火星がネガティブな感情を受け取って、行動に移してしまう危険性を指しているのでしょう。鬱状態(ロウの状態)の時は火星の力が発露するだけのエネルギーを持っていないからです。※鬱積してきた火星の熱で心が苦しい時は、とにかく身体を動かして汗をかくことで外へ放出されます。
このように、確かに火星はマレフィック(凶星)と言えます。では、この暴れ馬のような火星を成熟させるためにはどうしたらいいのでしょうか。それが方向づけです。暴発するエネルギーを太陽の意思で方向づけしてあげること。どこに飛んでいくかわからない火星のエネルギーに「ナビ設定」をします。火星のマークには矢印が付いています。この矢印をどこに向けるかを自分で決めること。火星に指示と指針を与え、目的意識を持たせることです。
1日のスケジュール、一週間のスケジュール、一ヶ月のスケジュールを立てて、混沌としたエネルギーをコツコツ積み上げていく前向きな行動力に変える。そして、半年後にはここまで必ずやり遂げるぞ、一年後にはここまでたどり着くぞ、そのようにして火星に方向をつけてあげることです。いつどこで「地雷を踏んで自爆してしまう」かわからないからこそ、主人を失った火星は戦々恐々としています。主人を得た火星はこの上なく安心感を得ます。
火星の主人は太陽であり土星です。太陽の目的意識・創造的自由意志、土星の忍耐力・積み上げる力・克服する力です。それらが火星に目的意識と指針を与えてくれた時、火星はマチュアーな天体に成長していきます。ここまでくれば、火星はもはやマレフィックではなく、純粋な生命エネルギーや情熱として働くようになります。
火星は根源的な男性性・能動性であり、内なる戦士と表現されます。内なる戦士は内なる悪魔を打ち破る神聖なミッションを抱えたファイターです。火星の闘争心や戦う力は、他者や外へ向けるためのものではなかったのです。それは自分自身の内側へ向けて、弱さや依存心、怒りや逃避癖、怠惰で後ろ向きな自分自身、あらゆる内なる闇を打ち破るために使われることを願い、神が与えたものです。
伝統的な占星術では、火星が管轄する領域は9ハウスと12ハウスだと言われてきたようです。古典的には、それをルールする天体は木星(射手座と魚座)になります。なんと火星は精神性、普遍性、霊性と関わっていることになりますね。現代占星術では、海王星(慈悲・救済・理想・夢・魂のビジョン等)の影響も加わりそうです。
そこから重要なことがわかります。セクシャルな天体としての金星と火星、内なる女性性と内なる男性性は、お互いが統合され融合された時、私たちを輪廻から解放するくらいの霊的成長を与えてくれるということです。ある心理占星術の先生が「火星はプライドである」と仰いました。私の中でパズルのピースがハマった音がしましたw
そうです。火星は純粋な誇りです。自分への誇り、美しく気高い誇り。その誇りは自分の内なる闇を克服していくからこそ得られる神聖な誇りです。そうして得られた強さを、今度は外に向けて発揮していく。女性性(受容性)を守るための力として。誰かを勇気づけ、慈しみ導く力として。
そして何より、最も身近な雛形である目の前のパートナーを守り、助けるための力として。共にあなたの痛みを背負いましょうという存在の誇りとして。男性と女性が共に手を携えて、歩いていける世界を作り出す力として、私たちは火星を使うことができます。