蟹座のあなたへ
水サインのトップバッターであり、活動サインである蟹座は「世界の中で人々が心を通わせる場・心の拠り所となるホーム」を自ら積極的に創り出そうとするサイン。蟹座の強靭なハサミは一体何を守るためのものなのだろうーー
蟹座の人のいたいけな感情は自然と外に漏れ出す。同時に他者の感情も自然に受け取る。だから、いつも空気を読んでしまうし、ムードメーカーになる。「蟹座はみんなのお母ちゃん的存在」だと言われるけれど、そこには深い痛みが隠れている。
みんなのお母ちゃんになる前に、お母ちゃんに抱かれる赤子である必要があるから。お母ちゃんになる前に、自分自身がケアされたり、十分に理解されることを体験しないといけないから。でも、蟹座は自分の痛みを素直に出せない。深い場所にある痛みを表現できずにいる。
その蟹座の痛みとは何だろう。正反対の山羊座は有能で役に立つサイン。反転サインの存在は眩しくもあり、ちょっと妬ましくも感じるもの。本当は二つで一つなのだ。空を見上げて蟹座は思う。私は反対側の山羊座のような有能な存在ではないと。山羊座のように社会に実益をもたらす存在ではないと。
有能ではない自分なんて価値がないと思っているかもしれない。こんな自分は社会にとって価値がないーー心の深い場所では、いつもそんなふうに感じていて、自分を過小評価しているかもしれない。でも、それは大きな間違いだ。
あなたの役割は有能であることではない。天はそんなことを望んではいない。有能であるとか、役に立つとか、仕事ができるとか、そんなことを神はあなたに微塵も望んでいない。あなたはいつもご機嫌で幸せそうにしていればいい。あなたのいる場所がいつもお日様のようにポカポカと温かい場であればいい。それで100点、いや10000点なのだ。
だって、それは一番難しいこと。仕事ができることよりも、高度な知識を身につけることよりも、この世で最も成し難いことは、自分の感情を扱えるようになること。自分で自分をいつもご機嫌で幸せにできること。感情を掴まないで水の流れのようにサラサラと流していくこと。弱さも汚さもさらけ出せること・・・
天はそんな難しい役割をあなたに与えた。人のお世話をすることがあなたの役目ではないし、人の感情を癒そうとしなくてもいい。あなたがあなた自身を満たし安心させ、感情のマスターになることが本当のお役目なのだ。そして、あなたの存在の温かさで、人に生きる勇気と喜びを与えること。そうして、次の獅子座へとバトンを繋いでいく。
やがて感情のマスターとなったあなたはいつも感情が安定していて、すべての命を包みこむような安心感が溢れ出すようになるだろう。そんな陽だまりのようなあなたの元に多くの人がやってくる。
傷ついた身体を癒す温泉のように、疲れた心を癒す一杯のお茶のように、あなたは居るだけで人を癒してしまう。すべてを包み込んでしまう。あなたが自分自身を曝け出すことができるしなやかな人だからこそ、あなたの前では誰もが安心して自分を曝け出すようになる。
人が何を話そうとも、あなたはジャッジをしないし、無理に解決策や答えを導き出そうともしない。でも、ありのままを受け止めてくれる。ただ丸ごと受け止めてくれる。そんな稀有な存在があなたの本質。そして、癒された旅人は再び歩き出す。勇気を出して大変な世の中へと出ていく。人生という旅に出ていく。
あなたはホームなのだ。ホームがなければ世の中は全く機能しない。山羊座の実益性だってホームがあればこそ。癒される家・帰ることができる家がなければ人は生きられない。
全ては移り変わるという真理を知っているあなた、出来事も感情もただ流れていくものだと知っているあなた、存在の本質は傷ついたり失われたりすることもなく、永遠なのだと知っているあなたは安心感の塊であり、すべての生命のホームとなる。
蟹座のハサミが象徴しているものは、感情に囚われることへの抵抗ではないだろうか。自分の弱さを切り裂くための剣。感情に囚われて、生きる喜びを見失ってしまうこと、人生を切り開く勇気を失ってしまうこと、それを避けるためのハサミ。それは内なる自分自身の闇を切り裂く神聖なハサミなのだろう。