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8ハウスにある天体②〜異処渡し
前回の記事の続編です。決して8ハウスが恐ろしくて暗い部屋であるということではありません。(確かに怖さはありますがw)8ハウスにライツがあったり、強調されている人の共通点は情が深いということだと思います。8ハウス族の皆様の中に「薄情な人を見たことがない」からです。とにかく感情も愛も深いということ。
私たちは1ハウスでこの世に誕生して、12ハウスでこの世を去ります。最後は全てを手放して去るということ。肉体は消えますが、魂は決して消えない。(と、私は思っています。)12ハウスでは個が消えて全体に融合していきます。そこに到達する手前に8ハウスがあります。
水エレメントのハウスは4ハウス、8ハウス、12ハウスです。4ハウスは私の感情を満たす、8ハウスは私とあなたの感情を満たす、12ハウスは私たち全ての感情を満たすー場所です。超単純化すると、4(母性・自愛)→8(情愛・情念)→12(融解・ワンネス)です。
火の情熱でこの世に生まれ、地の物質性によりこの世界を生きて、風の知性で叡智に至り、最後は水の感情・情愛により結実します。水の感情を昇華させることで、ようやく私たちはこの人生を納得して終えることができます。この世に生まれてくることになる、そもそもの大元(カルマ)も感情エネルギーであろうし、輪廻から解放されるのもまた感情によるもの(人生への納得感、やり切ったという到達感と満足感)なんです。
そんな魂の旅路において、8ハウスは避けては通れない「最大の人間ドラマを司るハウス」だと思います。8ハウスの情念は12ハウスで融解していくので、激しい感情の全ては最終的に「透明な祈りと許し」になる(ことが望ましい)と思います。一人間の感情エネルギーは星をも破壊するほどの質量を持っています。
感情は理屈じゃない。七顛八倒、味わい尽くしてそれを昇天させるしかない。感情ほど美しく圧倒的なものはありません。でも、感情ほど私たちを不自由にするものもありません。それは私たちを輪廻にさえ縛り付けるのですから。水の学びが強い人にとって、感情を手放すことほど難しいことはないでしょう。
だからこそ、祈りや許しに到達するには「恋焦がれたり、憎んだり、恨んだり、傷つけあったり、絶望したり・・・」そんな感情の修羅場を通り抜けることが必要です。8ハウスは冥王星と蠍座がルールするハウスなので、刺し違えてでも・・・という要素が入っています。
蠍座は共有感情を強く欲するサイン。私の中にあなたが入り、あなたの中に私が入り、そうして一体化したい。そんな強烈な情愛を司るサインです。蠍座が相手との一体感や深い繋がりを得ようとする態度、それは「毒の刺し合い」でもあります。毒の匙加減を誤れば相手も自分も死ぬかもしれない。けれども、刺さずにはいられない。それくらいの覚悟を持って、一体感を得ようとするサインです。
他者と一体化する、深い共有感情を得るーーそれは毒を刺し合うほどの覚悟がなければできないことなのです。(サインによっては到底蠍座の真似はできませんし、情に対する覚悟が違うのだと思います。)そういった情念による切実さを司るのが8ハウスでもあります。12ハウスのワンネスーーそれは8ハウスを超えた者だけが至ることのできる圧倒的世界です。
〜異処渡し(ことどわたし)〜8ハウスの物語
昔々のこと、天界に美月姫という美しい娘がいた。彼女が16歳の時、湖のほとりで一人の青年・清陽尊に出会う。あらゆる武術と芸術、学問にも秀でていた尊を姫は心から慕うようになった。やがて二人はいつも決まった時刻に湖のほとりで逢うようになった。
二人が恋に落ちてから半年が経った頃、湖の逢瀬が知られることとなった。姫を呼びつけた父親は激怒した。金輪際、尊と会うことを禁じると言い渡し、姫は離れに閉じ込められた。なんと尊と姫は腹違いの兄妹であったのだ。だからこそ、父親は決して二人の恋を認めるわけにはいかなかった。
数日後、姫は侍女の目を盗み、湖へ走った。二人は変わらぬ想いを確かめ合うのだったーーさて、城に戻った姫を待っていたのは「異処渡し」であった。二度と会わないことを誓え、誓わぬなら二人まとめて天界から追放するーーという異処渡し(神の勅令・最後通告)を受けたのでした。
聡明な姫は「それでも構わない」と思った。今ここで二度と会わないと誓えば、金輪際、未来永劫、尊と会うことはできないだろう。でも、天界から追放され、人間界の輪廻の輪の中に入ったのなら、いつかは会えると思ったのだ。私は私自身の想いの力と、そして、尊の愛を信じる。何千年、何万年かかっても、必ず再び出逢ってみせる。
父上、承知致しましたー
姫の強く静かな声が響き渡ると、父は身震いがした。何を言う!お前は人間界に入るということが何を意味するのか、わかって言っておるのか。どんな苦しいことが待っているか、わかって言っておるのか。
わかっております。そして、私は愛してはいけない人などいないと思っております。たとえ天界を治める父上のお言葉であっても、私は私の信念を曲げるつもりはございません。いつか再び、尊と共にここに帰って参ります。
父は涙を堪えて、二人を追放しました。異処渡しが永遠に解けない令であることを知っているからこそ、父は身を削る思いで二人を追放したのでした。
人間界に生まれ落ちた二人の行く末は苦難の連続でした。天界での記憶は全て消えていました。でも、心の奥に「この世界のどこかに誰か大切な人がいる、自分が探し求めている誰かがいる」そんな微かだけど明確な感覚だけがありました。
人間としての人生を500回、いいえ、1000回は繰り返したでしょうか。死にたいくらいの苦しみと孤独、そして、人間として生きることの喜び。それを幾度繰り返したことでしょう。それでも、二人には微かな記憶が残っていました。何度人生を繰り返しても、埋まらない何かがありました。
※※※
ある時、海のほとりで二人は再会しました。潮風が二人の間を吹き抜けていった時、懐かしいのか切ないのか、なんだかよくわからない想いが湧き上がりました。そして、二人はその人生を仲良く添い遂げ、魂が探していた最後のピースが埋まりました。長い長い年月を経て、二人は天界へ戻ることが許されました。それは神にも解けないはずの異処渡しが解かれたからなのでした。
おしまい❤️
この物語は私のフィクションです。でも、一部はノンフィクションです。「事戸渡し」とは引導を渡すことであり、離縁を突きつけることです。通常、そのような意味合いで理解されている言葉です。しかし、事戸渡しとは本来、「異処渡し」であるそうです。異界への追放。未来永劫、違う世界で生きていくということ、もう二度と逢えなくなるということ。
つまり、神からの命令であり、二度と解くことができない令なのです。しかし、ほんの一握り、これを解く人間が出てくるそうです。神が抹消したはずの記憶を保持している人間が・・・それは愛であり信念であり、想いの力です。
滅多には現れないけれど、「異処渡し」を解いてしまう人間が確かに存在する。想いを貫くことで最後は神(運命)も降参するしかなくなるーーこれが8ハウスの究極の物語だと思うのです。
でも、それを成し遂げるには信じられない程の時間が必要です。海のような孤独、泥を飲むような惨めさ、気が狂うほどの苦しみと悲しみ・・・そんな感情の全てを味わい尽くして、それでも諦めなかった者だけが異処渡しを解いてしまうのです。最後の最後には神でさえ降参させるものーーそれが人間の情念であり情愛なのかもしれません。
そして、本来、神が人間に対して事戸(引導、厳しい運命)を渡す時、それは「執着を取りなさい」ということらしいです。情念や執着にこだわると苦しいだけですよ、感情を掴みなさんな、愛にしがみつきなさんなーーという慈悲の想いが存在するわけですね。
でも、その宇宙的真理さえ超えていくものが「人間の情念」だということ。意思であるということ。死んでもいい、私はこれを貫くーーきっと、その想いには神でさえ手出しができないということなのでしょう。8ハウス、深いですね。良いとか悪いとか全く言えませんよねw
8ハウスに降参!