CX DIVE 2019 - ②
CD DIVE 2019の翌日は、レ・ミゼラブルのプレビュー公演へ。
CX DIVE 2019オープニングセッションで鈴木(おさむ)さんが「優れたコンセプトの場所は、「そこに行くこと」さえ楽しませるもの」とお話されていました。
この日は私にとって人生初のレミゼ。
チケットを手に入れてから、この日がずっと待ち遠しかった。
まさに絶好のコンテンツ体験の機会。
せっかくのレミゼ、CX DIVE 2019で学んだことを照らし合わせて体験してみることにしました。
日比谷・帝国劇場。
何年振りに来ただろう…赤い絨毯と飴色に艶を放つ重厚な木製の手すり。
ロビースタッフの方も黒スーツで、レストランかホテルのような振る舞い。
帝国の名は伊達じゃないですね。
今回は地下鉄で向かったので、地下2階の直結通路で入場しました。
シンプルなサインがちょっと楽屋口のようで、ニヤッとしてしまう。
地下1階のエントランス。
「IMPERIAL」のインパクトが強い。
歴史を感じさせる上品な佇まいの階段を上がった先はもうロビー。
その公演の出演者が掲示されるボード。
沢山の観客がスマホで写真に収めていた。ダブルやトリプルキャストが当たり前で、たくさんの組み合わせがある公演ならでは。
ある意味で、これも観客のテンションが上がるコンテンツとなっている。
ロビーに飾られた印象的な場面写真。
外にも大きなディスプレイ。
「Les Miserables」のロゴって、印象的ですね。
子どものころから、公演の広告などで、このロゴと少女コゼットのイラストは記憶に残っています。
さて、CX DIVE 2019とレミゼ。「コスパ」についていろいろ考えました。
CXとコスパ
クラシコムの青木さんは、クロージングセッションで「コスパを捨てるのがCX」とお話しされた。
役者には恐らく、コスパという概念がない。
コスパを考える人は、役者には向いていないだろう。
そして、舞台の上に立って「観せる」ことが仕事の彼らの中には、もうすでにCXがあると感じた。
逆に言えば、観られる場所がなければ、彼らは職業俳優では居られない。
観客を感動させられなければ、次がない。というのも厳しい世界だと思う。
観客からしても、劇場とは
純粋に、感動しに行く場所だ。と思う。
「どんなものが観られるのだろう!」と心弾ませながら、劇場へ向かう。
舞台において、今日の演技をそのまま取っておいて明日同じものをそのまま使いまわそう、なんてことはできない。
舞台の上で役として生きて、喜び、怒り、悲しみ、苦しみを歌い上げ、壮絶に死んでいく。
観客を圧倒するその姿に、「コスパ」なんて存在すると私は思わない。
彼ら自身が高みを目指しているのはもちろん、「どこまでやればいい」のない”観客の感動”に対して、持ちうる全てで毎公演、観客の前に立つしかないのではないだろうか。
舞台公演の目的は、観客を楽しませること。それに尽きる。
安くはないお金を払い、時間を使い、劇場まで足を運んだひとたちを楽しませること。
そのために、その日、その時しか存在できないものを作り続ける。
クリック一つでいくらでもデータを複製してしまえるような世界だからこそ、
1秒1秒が過ぎるごとに消えてしまう存在は、とても貴重に思われ、贅沢でもあり、強く心惹かれる。
動画配信サービスが充実し、スマホからも映画を観られる。
でも、同じ作品だとしても劇場で観るのはまったく違う体験だ。
稽古場でのリハーサルはもちろん、
劇場に入って場当たりとしてのリハーサルも、
観客を入れての公演とは全く違うはず。
アドレナリンの量だって違うだろうし、高揚感も違うだろう。
割れんばかりの拍手、
息をひそめ緊迫した沈黙、
スタンディングオベーション。
役者が役者として演じるためには、観客が必要なのだ。
余白
演劇のもうひとつのポイントは、余白があることだと思う。
目の前に事実あるのは建築としての舞台であり、石造りの街のように作られた舞台美術であり、2019年の日本だ。
ぶっちゃければ、役者も日本人で、言語も日本語。
その地点と、フランス革命後の王政復古下で悪政に苦しむ1700年代のフランスの間にある余白を、観客は自分で埋める。
現実という境界を観客自らが越えることで、物語の世界に形が与えられる。
そこはパリになり、命がけで市民を導こうとする学生たちが居て、彼らは銃弾に倒れていく。
その命の姿に観客は感動し、涙し、称賛の拍手を送る。
演者やスタッフが居なければ幕は開かないが、
観客が居なければ「公演」として成立しない。
見せる側も、観る側も、お互いが居なければ熱狂が存在しえない。
演劇のコミュニケーションを通じて、ユーザー(顧客)と「共に創りあげる」ことを体感できたと思う。
レミゼを観て、この素晴らしい作品に出会えてよかったと感じるし、
新しく素晴らしい役者さんを知り、観たい作品に出会う。
こうして、「演劇ファン」として演劇とのつながりができていく。
満足にとどまらず、
感動してもらうための努力と、
感動したことでつながる絆と、
もっと感動してもらいたいと続いていくサイクル。
ユーザーとは、素敵なもので繋がりたい。