どんでん返される日常
まったく同じワンシーンなのに、観る前と観終わった後じゃまるで違う意味に変わる映画がある。「シックス・センス」なんかがわかりやすい例だろう。
まったく同じ一行なのに、読み始めと読み終わったあとじゃ180度違う意味をもつ小説がある。
たとえば初めはロマンチックな愛の告白だと思って読んでいた言葉が、読み終わって思い返すと狂気に満ちた脅迫に思えたり、とか。
そんな、1つのものが2つ以上の意味をもつ作品が好きだ。単純に私がエンタメとして「どんでん返し」好きだというのもあるけど、理由はそれだけじゃない。
なにもミステリーやSFに限った話じゃなくて、「どんでん返し」な出来事は小さくても日常に溢れてる。
「ぶっきらぼうで愛想の悪い人」だと思っていたAさんが、実は愛犬を亡くしたばかりと聞いた途端「愛情深い優しい人」に見えたり。
「キャバクラでバイトしてる女子大生」と聞いて敬遠してたBちゃんが、実は学費と仕送りに追われる生活をしてると聞いた途端、「健気な人」に見えたり。
数え始めたらキリがない。いったいいくつの思い込みを抱えて生きてるんだろう、毎日。
今日機嫌の悪かった上司は、奥さんの誕生日だから早く帰りたかっただけかもしれない。
今日すれ違いざま舌打ちをしてきた中年男性は、もしかしたら仕事で失敗して落ち込んでたのかもしれないし、もしかしたら離婚を切り出されて打ちひしがれてるのかもしれない。
裏を返して言えば、誰かの目に映った私は嫌なヤツかもしれない。
そんなの妄想に過ぎない、と言われたらそれまでだけど。自分の目に映った姿だけが全てじゃないだろうし、その後ろには私の知りえないストーリーがあるはずだ。
自分の感覚を信じることはもちろん大切。だけど、なんだか周りがヤな人に見えてしまったときなんかには、セルフプチどんでん返し、なかなか有効なのでおすすめしたいのです。
サポートいただけたら、旅に出たときのごはん代にさせていただきます。旅のあいだの栄養状態が、ちょっと良くなります。