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海街diaryで夏を迎える
※ややネタバレありです。これから観るかたは、ご注意を!
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私の故郷に海はないし、姉だって妹だっていないのに、なぜかすごく懐かしい気持ちになりました。
姉妹の何気ない日常、こっちまで思わず頷いちゃうような血の通ったやりとりを、ずーっと眺めていたくなる!脚本を写経して勉強したいくらい。
是枝監督の映画はとにかく登場人物のリアリティがずば抜けてて好きなんだけど、この映画も例にもれず。
同じひとりの人間でも、しゃべる相手が変わればおのずと態度って変わる。そういう絶妙な空気感がほんとにリアル。
たとえば長澤まさみ演じる次女。母親代わりの長女(綾瀬はるか)と話すときにはどこか雰囲気が硬く強気。三女(夏帆)と話すときは心なしかのびのびリラックスしてる。そういう微妙な空気感の出し方が好きだった。
長女に対しては、同じ「女」としてのライバル心みたいなものを感じる。あからさまに競うようなことはしないけど。それに比べて三女に対しては「仲間」というか、もっとサバサバした友達関係みたいな感じ。
長女の綾瀬はるかも良かった。つねに一生懸命なんだけど、真面目さゆえにどこか空回りして、すでに口うるさくてお節介オカンの貫禄がある。心根はやさしいのに、生真面目さがジャマして、誰に対しても距離感を測りかねてる感じが伝わってきて切なくなった。墓参りに行く母親に着いてくかやめとくか、一瞬ためらう表情が良かった。
三女の夏帆もいい味出してた。すっとぼけたムードメーカー。彼女が出てくると、空気がやわらぐ。レキシとのツーショットにもほっこり。私もやわらかい人になりたいけど、実家では完全に典型的な長女タイプだなぁ…。
「決して悪人ではないけれど、悪意がないがゆえにかえってちょっと厄介な人」という役柄の描き方も、是枝監督は本当にうまい。今作で言えば、葬儀のシーンで登場するヨウコさん。やりすぎるとただのヤな奴になっちゃったり、リアリティがなくなっちゃう。だけど「いるいるこういう人!!」と膝をたたきたくなるような、たまらない塩梅で描かれてる。
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劇的な展開も、予想を裏切るドンデン返しもない。だけど、一つひとつのシーンがすっと胸に沁みてくる。疲れてるときに飲みたい淡い鶏ガラスープ的な味わいの映画。
気が向いたときに、1チャプターだけ再生したりして、気づいたら何度も見返してる。私にとってそんな映画になるだろなと思ってます。
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