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【屋久島空港問題 ♯3】 鹿児島県の態度急変と同期する2,000m滑走路。因果関係があるのでは?

このノートは、屋久島空港の滑走路延伸計画における2000mへの滑走路延伸には必要性がないこと、必要性を捏造したために計画破綻していること、それでも事業化されつつあることを明らかにするものです。

前回までの記事で、丘珠空港で可能な1,500m滑走路、1,800m滑走路でのジェット機の就航が、屋久島では完全に黙殺されて2,000m滑走路一本槍になったことを見てきました。

本計画のジェット機の就航という目的に対して必要性のない2,000m滑走路が、いつ頃どんなタイミングで出てきたのか。これが今回のテーマです。


ジェット化したい屋久島町と慎重な鹿児島県


まずは滑走路延伸計画関連の初予算が計上された2015年以前の、ジェット化悲願の長い「前史」を紹介したいと思います。とはいえ筆者自身は移住者なので古くからの地元の人々、なかでも町政策推進課の担当者から詳しく聞いた話です。
 
屋久島空港は1960~70年代に何度か延伸して現行の1,500 m滑走路になったものの、島民は長年、羽田直行便を悲願として協議会を結成し、町と一体になってジェット化推進運動を続けてきました。

当初は同じく1,500 m滑走路の種ケ島と共同していましたが、2006年に2,000 m滑走路の新種子島空港が開港してからは、屋久島単独で鹿児島県との協議を続けてきました。
 

ところが開港わずか3年後の2009年に、新種子島空港でジェット機の運行が停止になったことにより県が一気に慎重姿勢に転じてしまい、以後の協議は暗礁に乗り上げたまま長らく膠着状態となりました。


「種ケ島の先例があるから今さら屋久島のジェット化は無理。もうその話はなくなったんだ」

地元の人々がそう語るのを、筆者も何度も耳にしました。
 

1,800m滑走路でジェット機の就航が可能という共通認識          


この膠着状態にあった2013と14年に、屋久島町議会で羽田直行便の早期推進に関する質問を受けた荒木町長は次のように答弁しました。(太字筆者)
 

現在使用されているQ400型でも羽田空港には十分飛行可能であり、まず屋久島島空港に給油施設の建設を急ぎ、羽田便の就航に向けて取り組む。」

議会だより平成25年(2013)3月号

屋久島空港で2,000 m滑走路は物理的に無理。小型ジェット機就航可能な1,800 mの整備を国・県に要請し、羽田直行便の開設を目指したい。」

議会だより平成26年(2014)3月号


後述のとおり膠着期間中も「国や県に対して要望活動や意見交換を幾度となく行って」いた町長が、国や県に反する独自見解を開陳するはずもなく、丘珠空港とも一致する至極真っ当な見解を述べたにすぎません。

この当時は国、県、町ともに1,800 mでジェット機就航が可能なことを認識していたのです。

なお答弁中のQ400は、#2の図1、2で紹介した丘珠空港関連資料の4段目DHC8-Q400と同一のターボプロップエンジンプロペラ機ですが、屋久島空港では現在就航しておらず、代わりに就航しているのが1段目のATR42-600 になります。
 
 

物理的に無理でも、無理やりに2,000 m滑走路


ところが町長の上記答弁からほどなくして県の態度が一転し、
突如として積極姿勢に変じると、早くも2015年に
「滑走路延伸の可能性を探る調査費」700万円を初計上しました。

1,800mは黙殺するくらいだから、
探ったのは2,000mへの延伸可能性にほかならず、
そもそものスタートから2,000m滑走路ありきだったのです。

従来は「2,000 m滑走路は物理的に無理」が共通認識だったので、
その無理をおしても延伸可能かどうかを調べる必要があったのでしょう。
 
「物理的に無理」が地形的な問題とすれば、無理を通すために
建設費用や自然破壊がはるかに過大になろうともお構いなし
の姿勢です。

屋久島に一気に追い風が吹き始めた


2020年にパンフを初めて見たとき、なぜ今なのかがとても疑問だったので先ほどの職員氏に聞いてみると、

さあ、県の思惑は全くわからないけどなぜだか急に風向きが変わって、屋久島に一気に追い風が吹き始めたんですよ、


と語っていました。

同年パブリックインボルブメント終了後の議会で、荒木町長が改めて膠着時代を振り返っています。鹿児島県の変化を窺うに十分な答弁です。
 

これまでも国や県に対して要望活動や意見交換を幾度となく行ってきた。知事は理解があっても、事務方に温度差がある。4人の港湾空港課長とも話してきた。部長も3人目である。(中略)知事がどなたになろうとも、意志を強く持ち、2,000 m滑走路延伸の実現に向けて引き続き邁進していきたい。

議会だより令和2年(2020年)9月号


鹿児島県の態度急変と同期する2,000m滑走路

 
その温度差がある事務方というのが、本計画の実質的な策定者とするなら、ただの気まぐれで2,000m滑走路の推進に転じるとか、何となく風向きが変わることなどあり得ない話です。

そこにはよほどの理由があるはずで、

何らかの理由で2,000m滑走路を造る必要に迫られたからこそ、鹿児島県の担当者も突如として積極姿勢に転じた

と考えるのが、最も自然で合理的ではないでしょうか。

2,000 m滑走路が急浮上したタイミングはまさに、ジェット化推進協議にかかる鹿児島県の態度が急変するのと同時でした。

この奇妙なまでの時期的な符合は、決して偶然などではありえない
というのが今回の結論です。

次回は、ジェット化推進には必要ないのに別の理由で造ることになった2,000m滑走路について、パンフがどんな説明をしているのかを見ていきます。



記事まとめ


【屋久島空港問題 ♯0】 「屋久島空港の滑走路延伸計画」は2,000 m滑走路の必要性を捏造している ~その首謀者と目的は?~ 

【屋久島空港問題 ♯1】 2,000 m滑走路の目的は、屋久島‐羽田間のジェット機就航。1,500m滑走路でジェット機就航中の空港もあるのに。

【屋久島空港問題♯2】 1,500m、1,800mでもジェット機が飛ぶなら、2,000m滑走路の必要性はない

【屋久島空港問題♯3】 鹿児島県の態度急変と同期する2,000m滑走路。因果関係があるのでは?(←現在の記事)

【屋久島空港問題 ♯4】 情報隠しとウソとごまかしのパンフ

【屋久島空港問題 ♯5】 「新規事業採択時評価」と評価の基準

【屋久島空港問題 ♯6】 需要予測なんかしないで出した “偽りの需要予測” 14万人

【屋久島空港問題 ♯7】 14万人よりかけ離れて少ない実績値(関東からの鹿児島便乗降客数)

【屋久島空港問題 ♯8】 羽田直行便就航後は軒並み採算ライン割れ それでも就航する航空会社は?

【屋久島空港問題 ♯9】 関東方面からの旅費低減と時間短縮で、223億5千万円の経済効果?!

【屋久島空港問題 ♯10】 屋久島町の急激な人口減少

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