Power Platform 界隈のコミュニティで発生しがちな諸問題の言語化
ごきげんよう、百合宮桜です。
今回は Power Platform をはじめとするローコード・ノーコード界隈のコミュニティで発生しがちな問題の言語化を試みようと思います。
最初に断言しておきますが、ご意見さまざまあるかと思います。
「私はこう思う / 考える」という言語化であって、解決策はありません。また、けんかをする気は毛頭にありませんので、よろしくお願いいたします。
主催として望みが相反する問題
コミュニティイベントは登壇する方がいらっしゃって、初めて成り立つものです。その為、「なるべく登壇ハードルを低くしたい」という思いがあります。
一方で、参加者(発表を聞いてくださる方)に対してはせっかくお時間を頂戴するのですから、少しでも何か「収穫」を得て頂きたいと考えています。この2つの思いを両立させるのは、「市民開発」という言葉が浸透するにつれて、どんどん難しくなってきたと感じています。
私がコミュニティに関わり始めたころに登壇してくれる人々は「IT 技術者」の職歴がある方が多かったです。IT 技術者の人たちは(おそらく)社内で先輩に怒られながら、IT 技術者としての「資料の書き方 / 情報を伝え方 / お作法」のようなものを学んでおり、Microsoftさん(製造元)の思想も考慮しながら、広めるべき情報を選んでお話ししてくれていました。
それから年月がすぎて、「市民開発」が浸透するにつれて、非IT技術者の方々の登壇が増えてきました。それ自体は「ローコードが世の中に浸透してきた」ということであり、とても喜ばしく思っています。ただ、このところ、製造元側が意図していないであろう使い方や技術的にやるべきではない作り方の発表も増えてきていると感じています。これらは非IT技術者の方々の無知や未熟さに原因があり、それは責められるものではないと思っています
昔よりも登壇内容が玉石混交で参加者側の情報分析能力が必要になっていると感じます。しかし、参加者側も非IT技術者の「素人」が増えてきている現状であり、参加者側が情報が正しいかどうかを判断する能力が低いことも予想されます。その為、主催としては登壇内容に対して、これをやって良いシチュエーションやメリットデメリットなどのフォローを入れることが必要な場合もあると考えますが、できることが多すぎる Power Platform のすべてを主催だけで把握することはかなりの無茶無謀です。
コミュニティイベント多すぎ問題
市民開発という言葉が市民権を得て、Power Platform のユーザーが増えたことでコミュニティ活動がとても活発になってきました。様々な着眼点からの知見が毎日のように共有される状況はとても喜ばしいと思っています。
ただ、イベントが多くなっているが故に、すべてのイベントに参加することは難しくなっています。
昔はイベントを開催すると、数人の有識者の方がいらしてくださり、登壇内容に誤りや誤解をうむ表現があった際に、フォローを入れてくださることが多かったです。
現在はイベントが多くなりすぎ、イベントによってはそのようなフォローが難しい状況も頻発しているかと思います。
もちろん、フォローは有識者のみなさんの「親切」であり、強制するべきではありません。フォローを入れてくださる皆さんの温かいお心遣いには主催 / 登壇者としてとても感謝しています。
ただ、先の問題と繋がりますが、「昔よりも情報が玉石混合で、かつ情報の分析を正しくできない可能性がある参加者が増えているにも関わらず、昔よりも情報の修正がしにくい状況が発生しがちである」という状況を危険視しています。
イベントに「参加するだけ」のヒト多すぎ問題
Power Platform に興味を持ってくれる人が増えたのはとても嬉しいことです。ただ一方でコメントでの気づきの共有やブログでのレポート記事の作成などでアウトプットすることが登壇者へのお礼やコミュニティへの貢献と捉えるヒトが固定化されてしまい、情報だけ取得しようと考える人が増えた印象があります。
Power Platform への愛は人それぞれで有償ライセンスを個人で購入する変態の皆さんもいれば、職場での業務改善のみに専念している皆さんもいらっしゃると思います。そして職場での改善をインターネット上に公開することが難しいことも理解しています。
もしコミュニティで得た情報が職場で活かせたなら、アンケートやDMでこっそりと「職場で役に立ったよ。ありがとう」と教えてくれるだけでも嬉しいなと思います。
製品や他者に対するリスペクトの問題
スライド内での製品名の間違いを見ることが昔よりも増えた気がしています。以下のようなことは、ヒトによっては「細かいことを……」と思われるかもしれません。
製品名を正しく記す
Microsoft Learn(公式ドキュメント)に準拠する
何かを引用する時は出典を示す
ただ、これらを守らず、製品や他者に対するリスペクトが感じられない登壇を繰り返す方に対して、私は強い警戒心を抱きがちです。
なぜならば、このような「細かいこと」が守らない / 気づかない方が誤った技術情報を発信しがちだということを過去の経験から知っているからです。
誤った情報で Power Platform に対してネガティブなイメージを持つ人が少しでも減るように、少しでもコミュニティにとってプラスになるように、細かい気遣いができる方に登壇してほしいと思っています。
商標およびブランド ガイドライン | Microsoft Legal
非IT従事者にIT知識がない問題
これはコミュニティで論じる問題ではないかもしれませんが共有の為に書いておきます。
例えば、メンテナンスしやすいアプリの開発やアプリによって蓄積したデータの分析のためにはデータ設計が非常に重要というのは IT 技術者の共通認識かと思います。ただ、このデータ設計やシステム開発のお作法に関して、非IT従事者の理解はかなりバラバラだと認識しています。ひょっとしたら存在自体を認識していない方もいらっしゃる、というレベルです。
この知識の差が何某かの要因で市民開発者が作成したアプリを IT 部門で引き受けることになった時に、なんらかのトラブルを引き起こしたり、IT 部門がPower Platform にネガティブなイメージを持つ遠因になったりしないかと危惧しています。
ただ、IT会社からしてみれば、会社のノウハウの肝であり、コミュニティに情報開示するのが難しい部分でもあるかと思います。コミュニティでできるとしたら、日本マイクロソフトさんやサイボウズさんなどローコード・ノーコードツール各社の技術営業さんに市民開発者向けのIT知識座談会とかやってもらえないかなーと思っています。
おわりに
コミュニティの良さは、誰でも入れること・(大抵の場合は)無料であることだと思っています。
そして無料だからこそ、できることには限界があり、「誤った情報を修正したり、知識を共有する義務がない」のも事実です。ただ、私はせっかくコミュニティに来てくれたならば「役に立つ情報」を持って帰ってほしいですし、Power Platform に対して「ポジティブ」なイメージを持ってほしいと思っています。
その為に現状の問題を言語化し、どうにか打開できるようになりたいです。