メディアと私

「そっち!?」の多い生涯を送ってきました。
3歳の頃、英会話教室を出て向かいのピアノ教室を指差し、「私、こっちやるから」と言った私に、母は「そっち!?」と言った。いつも誰よりも先に建物を出て、自信満々で真逆の方向に向かっていく私を見て、皆「そっち!?」と言った。編集者になりたくて迷走し、最終的に大学に入り直して、モデルの仕事を始めた私に友人は「そっち!?」と言った。そんな、変な目で見ないでよ。

思いつきを形にすることが好きだ。中高生の時は、ポスターを勝手に作って教室に貼った。何年もの間、匿名でブログをいくつも書いた。とあるアプリで書評を書くことにハマり、ピックアップユーザーに選ばれた。写真は苦手だったけれど、「読者モデルみたいで面白そうだから」サロンモデルを始め、いつの間にか「フリーランスモデル」になっていた。

何かを作ることは楽しく、難しい。楽しんでもらいたいと思って作り始めても、いつの間にかエゴの塊ができていることもある。これは需要があるものなのか。需要だけを追いかけていったら、それこそ意味のないものになってしまうのではないか。そんなせめぎ合いの果てに、フリー素材モデルの活動を始めた。私にも多少の意図はあるけれど、見た人が思うままに解釈して、ご自由にお使いください。ロラン・バルトの『作者の死』である。

きっとこれからメディアの特権性は失われていくと思う。そんな時代に、それでも情報を提供することを生業としたいなんて、きっと「そっち!?」と思われてしまうだろう。自信を持って「こっちだよ」と言い続けられる自分でありたい。今週は3回、真逆の方向に道を間違えた。今日も、誰よりも早く次の目的地を目指す。

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