見出し画像

保育園の保護者会を退会した話。誰も言わないけど、みんなが思っていること。

面倒なことになったぞ、とため息をついた。

事の発端は、一枚のお知らせだった。

「保護者会役員選出について」

ざっくり要約すると、
「保育園の役員に、立候補してみない?
決まらなかったら、くじ引きするので、参加よろしく!
妊娠とか特別な事情のある人は免除するけど、基本、全員対象だよ。
欠席しても、くじはこっちで引いておくから、安心してね。」

 
ハイ、有無を言わせぬ物言いですね。

話に聞いたことはあったが、すっかり忘れていた。
「歳が上になる程、役員の仕事が重くなるから、早めに立候補してやった方がいいよ」
いつだったか、近所の先輩ママから助言されたことを思い出した。会議、資料作成、行事の企画運営、などなど、役員になると本業の仕事を調整する必要があるらしい。

「働いてるから保育園に子どもを預けているのに、そこで仕事が増えるっておかしくない?」
シンプルな疑問だ。

ググって情報を仕入れようと思ったら、どうやら全国のパパママも同じ気持ちらしい。
検索窓の候補には、「保護者会 役員 断り方」 「保育園 保護者会 必要性」「保護者会 役員 どれが楽」などのワードが並ぶ。

分かったことは、
・保護者会は、「任意」団体である
・任意なので、退会できる
・任意なので、廃止できる

断っておくと、保護者会の存在意義について議論する気はない。
有意義な活動もあるのだと思う。

こちとら仕事・家事・育児で手一杯。ボランティア団体ならば、余裕のある人、やる気のある人にお任せしたいのは自然な気持ち。
あるいは、園の運営に必要な仕事ならば、行政が担うべきでは?

よし、退会しよう!(シンプル)
と決め、実行したので、後進に向けて体験談を綴っておく。



保護者会とはなんぞや?

父母会、小学校ではPTA、様々な呼び名があるが、保護者の中から選ばれた役員で構成される、「子どものために働く会」である。

うちの保育園では、会議をしたり、議事録を発行したり、運動会の景品を選んだりするらしい。ほぅ….。

入園準備にバタバタし、あれこれ書類を書いたので、申し込んだ記憶もさっぱりないが、入園した時に自動的に会員になっていたらしい。

当事者の思い


以下に、ある自治体に寄せられた市民の声を引用する。

「保育園の保護者会役員を廃止できないでしょうか。"各保育園に任せる"スタイルではあると思いますが、なかなか"しきたり"を変えるのは容易ではないです。
そもそも保育園は仕事があるから預けてる訳であり、子育てと仕事での両立も大変なのに、保護者会役員になってしまうと地獄です。
行事の企画・運営などは仕事を調整しないとできなかったり。そんな時間があるなら、いつもは仕事で遊んであげられないので、子供との時間を楽しみたいです。
委託を導入できるような指針を保育園に提示したり、保護者会廃止や役員の負担を減らせる策を何かとっていただけないでしょうか。」


うーん、リアルですね。
地獄っていうのが、どの程度の負担なのかは自治体によりけり、なんだと思いたい。

うちの園からのお知らせには、役員に「立候補なき場合はくじ引き」と記載してあった。
推測するに、昨年も、一昨年も、くじ引きをしてきたんでしょう。
つまり、「例年、立候補がいない。あるいは立候補で枠が埋まらない」ということ。それは、「役員はやりたくない」という保護者の声なき意見では?

保護者会が存続してきた理由

多くのパパママは、保護者会に消極的なことは事実。
では、ここまで改革がなされなかったのはなぜか?

任意であることを誰も知らない

そもそも、任意の団体であることが認知されていない。

担任保育士も、私が退会を申し出た際、「退会できるって話は、聞いたことがないのですが…」と及び腰だった。
うん、そうだよね。
私も当事者になって、結構調べた上で掴んだ情報だからね。

そして、大体の保護者はこう思っている。
・役員をやるのはいやだけど、クジで当たったら諦める
・強制だし、誰かがやらなければ仕方ない
・楽な役回りに立候補して、早く済ませてしまおう

あなたは、任意団体って知ってた?
当事者になって困るまで、知らなかったのではないだろうか。


手続きが面倒くさい

保護者会の縮小や廃止は、制度上、できる。
誰かが意見し、会の中で議論し、多数決で承認を得れば可能だ。

が、会則に記載がなかったり、誰も正式な手続きを知らなかったり。まずは分からないことを調べる手間が半端ない。
そして、お金の精算がだいぶ面倒らしい。
声をあげれば、役員としての仕事が増える。一度役員をやってしまえば、来年度以降はやらなくていい。じゃ、今年度自分の仕事をやり切って、あとは後任に任せよう…。

このループで、永遠に誰も声をあげないのは容易に推測できる。


気まずい

和をもって尊しとなす。

保護者はご近所さん、顔見知りばかり。園の先生にも、子どもによくしてもらっている。

保護者会を退会したいとか、廃止したいとか、役員をやりたくないとか、とてもじゃないけど言えない。

ものすごく分かる。日本人だもん。


私が退会した理由

シンプルに

役員をやる時間も、余裕もない。働いてるし。
内側から改革(縮小や廃止)もできるが、その時間も、そこに割く気力もない。だから、退会を選んだ。

誤解のないように言っておくと、ボランティアは素晴らしいと思う。
実際、大学生の時には、外国人の子どもたちに週一で日本語を教える活動をしていた。

ボランティアとは、時間やお金や体力に「余裕のある」人が、「自主的に」やるものだと思う。だから、ライフステージやその時々の状況によって、できないことだってあるのだ。

今後、子どもが大きくなって、余裕ができたならば、何かしらの社会貢献をしたいと思うタイミングもあるだろう。

夫が育休を1年とったこと

そしてもう一つの理由。

会社で前例が無い中、夫は1年の育休をとった。
これは4年前で、今ほどパパ育休の必要性が叫ばれていなかった頃の話。
上司や同僚の反感を買った。
嫌味を言われて、ものすごーく凹んでいたのを覚えている。

会社での立場がそんなに悪くなるなら、育休は取らなくてもいい、と伝えたこともあった。
そんな中でも、夫は家族を大切に考えてくれた。
そんな夫のことを、私は誇らしく思うし、感謝している。

時代は確実に変わっている。
誰かがファーストペンギンにならねば、慣習は変わらない。
それを肌で感じていたからだ。

そして娘が子どもを持った時、(気が早い)(娘3歳)より子育てしやすい環境になっていて欲しいから。

私が退会した方法

担任に話す

とりあえず、担任に保護者会を退会したい旨を伝えた。

モンペと思われるかな?と若干気まずかったが、言わないことには事は進まない。お迎えの時、軽〜くジャブを打ってみた。

先生は一瞬固まった(ように見えた)後、「…退会できるという話は、聞いた事はないんですけれども、運動会の景品とか……(略)」保護者会の活動や選出方法について、事細かに説明してくれた。

「この人、何も知らないのかな?」と思われたようだ。

全部把握した上でお話ししています、と告げ、その日はいったん持ち帰ることにした。

次の日、園長と面談してほしいと言われた。


園長と話す

正直、面倒だった。

職員室に寄るのを忘れたことにして、そそくさと帰ろうとしたが、うっかり見つかってしまった。
にこやかに案内され、渋々ソファに座った。

「役員になることを心配しておられるのですか?」

説得されるのかな、と思っていたが、予想に反して穏やかに聞いてくれた。

「全国で廃止の流れにあることは知っていたが、実際に退会したいという話は初めて聞いた。毎年同じ仕事を繰り返してきたので、その意義や保護者の負担感など、疑問にも思わず過ごしていた。今日、こうやって意見を聞けてハッとした。声を上げてくれてよかった。」

長年同じ組織にいると、ルーティン化した事は流れ作業になる。今までそうしてきたから、今年も、令和6年を7年に書き換えるだけ。いわゆる、お役所仕事になっていたと真摯にお話ししてくださった。

会長に伝えておきます、ということで、和やかに話は終わった。

保護者会のこれから

で、あなたはどうするのか?
ここまで読み進めてくれたという事は、保護者会なりPTAについて、少なからず疑問に感じているからでは?

波風立てたくない。

数年我慢するだけ。


そう、その通り。

でもね、それを延々ループしていいのかなと思うわけですよ。自分の後に続くママ(あるいはパパ)も、同じ事で悩み、それはいつか、自分の子ども世代に回ってくる。

流れを変えたいと思うなら、行動あるのみ。


いいなと思ったら応援しよう!