あの人と私の物語
今日はあの人の誕生日。
あの人の誕生日におめでとうと
伝え始めてから15年近くの月日が流れた。
ハッキリ覚えてないけど、
最初に彼の誕生日を祝ったのは
彼が46歳くらいの時だった。
今の私は彼の年齢をとうに超えてしまった。
彼と初めて2人で食事に出かけた夜。
彼はこう言った。
「いろんなとこに一緒に出かけましょうよ」って。
既婚者のくせに、
そんなこと気軽に言って、
とんだ嘘つきな男なのかもしれないと思った。
でも、
嘘じゃなかった。
思い出せないくらい、
数え切れないくらい、
私達は一緒の時を過ごした。
世間的にはダブル不倫という下世話な
関係になるんだろう。
私も、
心底彼を愛してるとは言えないし、
彼が心底私を愛してるとも思わない。
でも、
なんだかもう男女の関係を超えて、
同志というか親友になってしまってる
感じすらする。
彼はそっけない。
ラインもメールもたまにしかくれないし、
打つ文章もそっけなくて短い。
最初の頃は、
そのことで私が文句を言って揉めたこともある。
でも、
そういう男なんだ、とわかってしまってからは、
寂しいけど受け入れるしかないと
思えるようになった。
なによりも、
15年近く私たちは続いている。
私の夢は、
老後に同じゲートボールサークルに入り、
老人同士お友達として仲良くする老後。
彼は絵を描く人。
彼の好きな安野光雄の絵本集を
プレゼントした。
私の大好きなあの人。
いつまでも健康で元気でいてほしい。