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花と宗教 ネパール旅行記 vol.4
2023年8月5日
今日は6時頃に、バイクのクラクションで目が覚めた。ここの宿も空調は無いから、窓は開けっぱなし。でも湿気が無いから気持ちがいい。
朝食をいただきにテラスへ降りる。宿のおばちゃんが鉢植えのバジルを、手で千切ってもっていった。朝食のオムレツに入れてくれるんだって。
テーブルの上に美味しそうなオムレツと、チャイが並ぶ。オーナー夫妻が一緒に座ってくれたので、楽しいお喋りが始まった。
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宿のおじさんの名前は「Santa(サンタ)」さんで、ネパール語で意味は「平和」。そして奥様は「Matina(マティーナ)」さんで、意味は「愛」だと教えてくれた。
「つまり私たちはlove&peaceなんだよ!」
なんて素敵な夫婦だろう。「最高ですね!」というとニコニコしてくれる。
そしてなんと、サンタさんはシルバースミス(銀細工師)だということが判明した。ここPatanは、昔から工芸が盛んな街らしく、今でも木彫り職人や銀細工師がたくさんいると聞いてはいた。だけど、まさか宿のオーナーとして出会えるとは!
サンタさんは、Silver repousse(シルバーを打ち出して模様を浮かび上がらせる技法)が専門だという。ちょっと待ってて、と言って作品を持ってきてくれた。
それがもう素晴らしくて、めちゃくちゃテンションが上がる。彼は40年を越える大ベテランで、13歳の時にお母さんに「今からあなたはシルバーの工房に行くのよ」と突然言われたのが、この道の始まりなんだって。今、2人のお弟子さんがいるらしい。
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「あなたは何をしているの?」と聞かれたので「私はガラスアーティストで、ガラスに模様を描く時に、シルバーを使います」と言うと「同じような仕事をしているね!」と盛り上がり、そこから象や白鳥の模様の意味などを教えてもらっていたら、2時間くらい話し込んでしまった。
国が違っても、ものづくりをしている人とはすぐに心が通じるという体験も、今まで何度もしてきた。作品を見れば、お互いがどんな思想で、どれくらいの深さで向き合っているのかが、良くも悪くも分かってしまう。
「今の若い人は銀細工に全然興味ないけどね、みんなITエンジニアとか医者を目指すよ。そしてみんな外国に出ていく。」
とサンタさんは言った。
「でも大事な仕事だから、本に残そうと思って、シルバーの教科書や、技術のテストなんかも作ったんだよ」
と言って、分厚い本や写真も見せてくれる。サンタさんの師匠は字が書けない人だったから、自分がやらなきゃと思ったんだって。素晴らしいお話が聞けて良かった。
あぁ、今日という日がすでに満たされ過ぎて、まだ10時だなんて信じられない。たくさんお礼を伝えて、部屋に戻って支度をする。
外に出ると、鮮やかなマリーゴールドの花が目に飛び込んでくる。神様への捧げもの。花と宗教は切っても切れないんだなぁ、とぼんやりと思う。仏教における蓮の花が特別なように、ヒンドゥー教の人にとって、マリーゴールドは神聖な花なんだそう。知らないことばかり。
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あてもなく歩いていると、雨が降ってきた。近くのカフェで雨宿りする。ネパールに来る前は、雨季だけど雨にあんまり降られないといいなぁ、なんて思っていたけど、今は雨も良いなぁと思う。お陰でものすごい排気ガスと砂埃の舞う空気が浄化されるし、スローテンポでいられる。そして喉にも良い。笑
それにしても疲れた。マッサージでも受けようかな、と思いついて、そういえば、ネパールでもアーユルヴェーダが受けられると、渡航前に慌てて買った「地球の歩き方」に書いてあったのを思い出す。
アーユルヴェーダ、やってみたいと思ってたんだよね。歩き方には、カトマンズのお店が紹介されていたけど、パタンにもある気がする。早速検索してみると、あった!ここから歩いて30分くらい。とりあえず向かってみよう。
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それにしても暑い。ネパールがいくら標高が高いとはいえ、やっぱり夏だもんね。
アーユルヴェーダのお店は、どうやら外国人が多く住むエリアにあるらしく、欧米人をたくさん見かける。道も広いし、今っぽいおしゃれなカフェやレストランがたくさんある。
歩いていたら、急にここに住んでいるような錯覚を覚えた。旅先で暇な時間を作ると、こんな風に身体が日常を感じてくれる。この時なんとなく、いつか海外に暮らす時がくるだろうな、という予感もした。ま、分からないけど。
明日なら空いているとのことで、予約をしてきた。有名な、額にオイルを垂らす「シロダーラ」も出来るって!どんな感じなんだろう、楽しみ。
宿のほうに戻りつつ歩いていると、ショッピングモールのようなものを発見。KFCやPUMAまで入っている。ネパールに来てから、こういう欧米系のチェーン店は初めてみた。ネパールの人は今、どんな買い物をしているんだろう。気になって入ってみることに。
吹き抜けの建物の中では、手作り市のようなものがやっている。面白そうだと思って覗いてみると、素敵なカゴを発見!蓋もしっかりと閉じる、丁寧な仕事の水草で編まれたカゴ。950Rs。こういう出会いは嬉しい。ちょっと荷物にはなるけど、今回は短い旅だし全然OK!
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ちなみに1Rs(ネパールルピー)はだいたい1円くらい。レートを計算しなくてよくて、とっても助かる。
再び歩き出す。なるべくまだ歩いていない道を歩くようにすると、やっぱり綺麗なものに出会える。なんて街歩きの楽しい国なんだろう。お祈りの跡を探すのが、癖になってしまった。
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パタンはなんだかベネチアみたいだな、と写真を撮っていると思った。この構図、去年たくさん撮った。高い建物の中を、縫うようにして歩くのはヨーロッパの街の特徴的な部分だけど、特にベネチアは、もう使われていない廃墟のような暗い建物がたくさんあって、そのどこか物悲しい部分と、明るい部分とのコントラストが、とても似ていると思った。
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ふらふらと歩いていると、だんだん人が増えてきた。この辺は、地元の人が買い物をするエリアらしい。パタンの原宿みたいな感じ?どんどんディープな雰囲気になってきた。身体にたくさんバックをぶら下げた人や、ピカチュウとかのキャラクターものの風船を売る人、シートに野菜を広げる人、金物屋、洋服の叩き売り!本当に面白い。混沌の極み!売り子の掛け声が360度響いてきて、あまりの熱気に笑ってしまった。凄すぎる。ネパールは人も街も、穏やかさと激しさが入り混じっている。
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夕飯を食べようと、宿のオーナーに教えてもらった「ネワーリ・キッチン」に行く。1人で食べていると、いろんな人が話かけてくる。ここのオーナーだという男性と話していると、「Chang(チャン)」という自家製のお酒をご馳走してくれた。これは美味しい!完全にドブロクだ!
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さて、私の身体は今、どこも痛くないし、お腹も満たされていて、シャワーも浴びてサッパリしたところ。髪を乾かそうと、テラスに出てこれを書いている。ドライヤーなんて無いんだけど、街が乾燥しているからすぐに乾く。
目の前にあるこの建物は、とても美しい。人はなぜ、こういうものを作らなくなってしまったんだろう。ヒンドゥーのあの習慣は、どれくらい残るんだろう。
いろいろと今日の出来事が思い浮かぶ。心を沈めようと、瞑想をしてから就寝。
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![藤井 友梨香](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/12023138/profile_7d3828f91148717164dd4e9ebc5ac456.png?width=600&crop=1:1,smart)