バリ旅行記 vol.1トランジット・マレーシア編
ずっと書きたいと思っていた、去年(2023年)のバリ旅行記。大切な記憶たちが、書かれるのを待っているようでずっと気になっていた。書くなら今、という気がする。ということで、日記と写真を頼りに少しずつ書いていこうと思います。
2023年10月19日。
まずはバリ島へ向かうトランジットで、マレーシアへ一泊した時のお話。
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30歳の誕生日をまたいで、タイ、マレーシア、シンガポールと、マレー半島を下る旅をしたのが7年前。マレーシアは、それ以来の再訪だった。イスラム美術にハマるきっかけをくれたのも、アザーンを初めて聴いたのも、一人旅って楽しい!と強烈に思ったのもマレーシアだった。だから良いイメージが残っていて、いつかまた来たいと思っていた。
ちなみに今回は夫との2人旅。夫は旅慣れているので頼りになる。一人旅の時とはまったく違う気楽さで出発した。
マレーシア航空で成田から旅立ち、クアラルンプールに着いたのは夕方だった。遠くの空が燃えるような赤い夕焼けで、見たことが無い色をしていて目が離せなかった。空の色も、国によって違う。これから旅が始まるんだ…!という高揚感とあいまって、とてもとても美しく見えた。
KLIAという高速鉄道に乗り市内へ。前回クアラルンプールに来たときは、バンコクから夜行列車で入国したんだよなぁ…と懐かしく思い出した。でもまだ、あぁ、久しぶりのマレーシア!という気持ちにはならない。車窓に広がる、延々と続くパームヤシの木をずっと眺めていた。
ホテルでチェックインを済ませて、早速街へ出る。宿に着いて荷物を預けた後の、最初の街歩きが1番ワクワクする瞬間かもしれない。特にトランジットの場合は、明日の昼には移動してしまうという刹那的な感じもあって、変にテンションが上がってしまう。
電車に乗っている時には分からなかったけれど、少し雨が降ったようだった。湿気を含んだ生暖かい風と、何かのフルーツが腐ったような匂いがする。旅で体感するものは、もちろん良いものばかりじゃない。特に衛生面に関しては「うっ」とたじろぐ事も多々あるけれど、それすらも体験出来て有難いな、と思う。コロナ禍で、旅に出たくて出たくて仕方がなかった時を経験したお陰で、海外旅行の有り難みはグッと増した。
ホテルの近くに、スリ・マハ・マリアマン寺院という、ヒンドゥー教のお寺があるので向かってみることに。
クアラルンプールは相変わらずの大都会だった。ビルとビルの間にときどき見える、高い建物が気になる。あんなビルあったかな…?と思って調べてみると、なんとドバイのブルジュ・ハリファに次ぐ世界2位の超高層ビルなんだとか。今年の夏に出来たばかりらしい。678mだって。7年前にはもちろん無かった。都市も成長している。
少し歩くと、ビルの谷間に煌びやかな彫刻をまとった建物が、ものすごい存在感を放って建っていた。土足禁止なので、外で靴を脱いで、中を拝見させて頂く。ちょうど何かの行事があったようで、美しく着飾った女の子たちが、輪になってお喋りをしていた。私が写真を撮っているのに気がつくと、にっこりと笑ってくれる少女たち。可愛すぎる。雨上がりの空気に立ち込めるお香の匂いで、ネパールを思い出す。
ヒンドゥー教は、今年の夏にネパールを一人旅した時に、初めて触れた文化だった。日本で触れることのある、仏教や神道、キリスト教などとは全く違って、見るものすべてが新鮮だった。見た目の派手さとは裏腹に、生活の中に淡々と溶け込んでいる感じが心地良くて、お祈りをする人々をずっと眺めていた。
そろそろ夕飯にしようと店を探す。
夫と旅する時は、なんとなくブラブラと歩いて、偶然見つけたローカルのお店に入ることが多い。彼は、旅先で日本にあるようなお店に入っても面白くないじゃん、という考えが徹底している。結婚当初は、本に載っていたこのお店に行ってみたい、とか、いろいろ提案していたけれど、結局今は、夫と同じような考えに落ち着いた。ツーリストが行くお店よりも、その国で暮らす人々の「生活」が感じられるお店のほうが、よっぽど面白いし記憶に残ると気がついた。こういう風にお店を選ぶのは、五感を使うというか、感覚を開く感じがあってワクワクするし、偶然の出会いは大事にしたくなる。
ヨーロッパを旅した時は、愛読していた本に載っている歴史あるカフェを巡るのが、とてもとても楽しかったし、今も強く記憶に残っている大切なお店が何件もある。ようは今、旅している国で、自分はどういうところに興味があるのか、そういう感覚がかなりハッキリとしてきたんだと思う。
飲食店が並んでいるエリアをゆっくりと歩く。マレーシアは中国系の人が多いから、中華料理店も多い。調べてみると、マレー系が約70%(先住民15%含む)、中国系が約23%、インド系が約7%だそう。ものすごく入り混じっている。日本のように、ほぼ日本人の中だけで成長する日々と、どれだけ違う世界観になるだろうと想像する。
道路沿いに、プラスチックで出来た小さなテーブルが並んでいるお店に決めた。どのテーブルも満席で、ものすごく賑わっている。店員さんに「入りたいでーす」と目配せをすると、外の席ではなく店内に通された。中も想像していたよりずっと広い。壁に貼られたメニューを見て、お店の名物らしき刀削麺を注文する。みんなこれを注文していたから間違いないはず。
見回してみると、若者が多かった。値段もリーズナブルだし、学生の溜まり場なのかも。横のテーブルには、ヒジャブを被った女性、そうじゃない女性、そして男性も一緒くたになったグループが、楽しそうにお喋りしている。どんな集まりなのかな、とかそんなことを一瞬考えていたら、目の前に出された刀削麺に目が釘付けになる。美味しそう!
刀削麺ってほんとに美味しい。透き通った牛肉のスープに、しっかりと香りのするパクチー。つるつると柔らかくて太い麺。なにより、地元の人々に紛れ込んでここで麺をすすっていることが、なんだか不思議で楽しい。
トランジットは旅のオマケみたいなものだけれど、いつも心に強く残る滞在ばかりだ。
ホテルに戻りシャワーを浴びて、夫と今後の旅程を少し話し合った。明日から、いよいよバリへの旅が始まる。インドネシアは初めてだ。どんな国なんだろう。早く眠ってしまいたいけれど、寝つきが悪くてなかなか眠れない。すぐ眠れる夫を羨ましく思いながら、しばらくスマホを見たり、狭い窓から見える高層ビルの灯りをぼんやりと眺めていたら、いつのまにか眠っていた。
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