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美しい習慣に触れる ネパール旅行記 vol.2

2023年8月3日

大きな鈴の音がして、びっくりして目を覚ました。時計を見ると朝の5:20。どうやらお祈りの時間がもう始まったようだ。宿泊しているこの部屋は、空調が無いからすべての窓が開けっぱなし。だから色々な音がする。水を使う音、子供の笑い声、鳥の声、バイクの音。

もう起きてしまおうと、身支度をして外に出る。細い路地を歩いていると、さっそく素敵なものを見つけた。誰かのお祈りの余韻。なんて美しいんだろう。

昨日の夜には分からなかった、色鮮やかな街が広がる。目的地を決めず、道に迷うように歩くことが好きだ。昨日も明日も、ずっとこんな風に暮らしてきたんだろうというような、人々の暮らしを垣間見る。こういう時、生きていて良かったとすら思う。

朝ごはん用に露店でラッシーを買う。ネパールのごはんを食べていると、健康的になりそう。

ナッツやドライフルーツが乗っていて美味しかった

さて。今日はひとまずカトマンズの世界遺産を見て回ることにしよう。仏教の「スワヤンブナート寺院」と「ボダナート寺院」。そしてヒンズー教の「パシュパティ・ナート寺院」。

まずはスワヤンブナートへ。
寺院への階段を登る途中、石掘り職人さんのお店で目が釘付けになる。なにか言葉が書かれた石。なんて書いてあるの?と聞くと、これはチベット語で書かれた仏教のマントラだよ、Googleで翻訳してみて、と綴りを教えてくれた。

「Om mani padme hum 」

オム・マニ・ペメ・フム。「蓮華の宝珠よ 幸いあれ」を意味する、チベット仏教徒の中で最も唱えられているマントラ、と出てきた。この言葉を唱えると、病気や厄などから身を守り、長い人生を幸せで過ごせるといわれているらしい。

1番惹かれたものを選んだ。300Rs。ここで20年近く石の彫刻をしているそう。この石は川で拾ってきたんだって。話し方も目も、達観している感じだった。彼から買えて良かった。

スワヤンブナートからは、カトマンズ盆地が見渡せる

それにしても、宿のオーナーに教えてもらった「in drive」というタクシーアプリはすごく便利。現在地はGPSで自動に割り出してくれて、行き先を入力すると、近くにいるタクシーが表示される。あらかじめ金額が書かれているから、交渉したり、ぼったくられたりすることもない。

タメル地区に戻りランチにする。地球の歩き方で紹介されていた「タカリキッチン」で、マサラティーとダルバード。すごく美味しくてホッとする。でも、やっぱり喉が痛い。ちょっとした辛みでもいつもよりも辛く感じる。これじゃあせっかくの旅のご飯が楽しめない。やっぱり薬を買おう!体調が悪いと決断が弱気になる。

タカリ・キッチンのダルバート

ネットで検索して、良さそうな薬局に行く。カウンターにいるおじさんに「喉が痛いです。薬が欲しいです」とネパール語で翻訳した画面を見せた。おじさんは2種類の薬を処方してくれた。一つは朝晩食後に一錠。もう一つはトローチのようなもの。1日3回、5日間で飲み切ってね、と言われる。合計580Rs。やるだけのことはやった、という気持ちで一安心。それだけでも買ってよかった。

パシュパティナートへ

ネパールで最大のヒンドゥー教の寺院。輪廻転生を信じるヒンドゥー教ならではの場所だという。ここは火葬場が有名らしく、客引きの男に「火葬場?火葬場?」と日本語で声をかけられて嫌だった。でもここに来たら、嫌でも火葬場を目にすることになる。ゲートを通ったらすぐに川が流れていて、その川沿いで火葬をしているから。

お別れの儀式が始まったところにちょうど居合わせて、ご冥福をお祈りしてから少し見届けることにする。

川沿いの石段に置かれた、頭と足だけを出した、白い布に包まれた遺体に、水をかけたり、首元にお花や紙幣を乗せて次々にお祈りしている。それを360度、ものすごい数の人々が見守っている。写真や動画を撮る人、ただぼーっと眺めている人。完全に観光地と化した火葬場というのも珍しい。ヒンドゥー教の死生観というのはよく分からないけれど、よく分からないことのほうが圧倒的に多いんだと、外国に来ると改めて思う。

途中、何か叫び声のようなものが響き始めて、びっくりして声のするほうを見ると、真っ赤なサリーを着た老婆が、両手を支えられながら歩いてきた。亡くなった方の名前をずっと叫んでいるようだった。私はここにいていいのか分からなくなって、固まってしまった。男が大きなホラ貝を吹くと、木で出来た担架のようなものに遺体を乗せて、火葬台へ移動する。木が井桁が組まれていて、その上に遺体を乗せると、マリーゴールドの花輪がその場にばら撒かれて、火がつけられた。

散らばるマリーゴールドがやけに生々しくて、まるで生贄の血のようだと思った。

想像していたものと現実とは、当たり前だけど全然違う。ネパールに来てまだ2日目だけど、こんなに生々しい場所だとは思っていなかった。人々はみんな穏やかだけど、土地や慣習から強い生命力を感じる。それは少し、恐ろしささえ覚えるほど。

次の目的地「ボダナート寺院」までは歩くことに。

40分くらい歩いてヘトヘトになる。カトマンズは標高が高いとはいえ、やっぱり夏。でもツーリストエリアじゃ無いぶん、学校帰りの子供達や、小さな商店、人々の普段の暮らしが垣間見れて興味深かった。徐々にダライ・ラマと同じ格好をした、チベット僧の人々が増えてくる。

雨が降ってきた。カフェで休憩することにする。書きものをしたり、次の宿を調べたり。

歩いていると、やけに赤が目につく。女性のサリーやアクセサリー、お供えの赤い色粉。調べてみると、赤いものを身につけることは、神への信仰の証なんだって。そして既婚女性が赤いものを身につけるのは、夫の幸運を願うためでもあるらしい。そんな意味があったとは!面白いね〜。色に対する感覚って、国によって全然違う。

帰ってきて、ベットへ倒れる。やばい、喉が全然良くなっていない。それどころか咳が止まらなくなって、喉から変な音がするようになってしまった。こういう時は早く寝るのが1番だけど、咳き込んで眠れない。困ったな…。

そういえば、バファリンを持ってきていたんだった。あれって喉の痛みにも効くのかな…と思って検索すると、解熱鎮痛剤だから効くらしい。頼む、効いてくれ!!2錠飲んで、少しホッとする。1時間ほどすると、少し咳が出なくなってきた。夜中の3時。あぁ、盛りだくさんの1日だった………明日はゆっくり起きよう。

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藤井 友梨香
記事を読んでいただいてありがとうございます。いただいたサポートは、次のだれかの元へ、気持ちよく循環させていけたらと思っています。