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遠い山頂から届く光

ラリベラはエチオピア北部の世界遺産がある街。

1週間ほどの滞在中、アシェトン山という山に登る機会に恵まれた。山頂には、天国に一番近いと信じられている教会があるという。

その旅は、あるNGO主催のツアーだった。参加したのには目的があったのだけど、それはひとまず置いといて。

世界遺産の岩窟教会群が有名なラリベラは、すでに富士山の6合目くらいある。標高2500mくらい。(上の写真が一枚岩をくり抜いて作られたというラリベラで一番有名な教会。クロス型がとても美しい)

私のような普通の観光客は、山に登らなくともすぐに息が上がってしまう。ツアーで一緒だった女性はラリベラにきただけで高山病の症状が出てしまい、しばらく休んでいたほど。

そこで同行した数人と一緒に、各自がミュールと呼ばれるラバを借りて山に登ることになった。

ミュールの誘導兼ガイドの男の子は14歳だという。

「この子(ミュール)はなんという名前なの?」
と聞いてみると
「名前はデスタ、アムハラ語で〝ハッピー〟という意味だよ」と教えてくれた。

エチオピアの母国語はアムハラ語、私は日本語だからお互いに片言の英語だった。「ハッピーかぁ〜分かりやすくて良いね!」というと少年は笑った。


少年とデスタは崖のような細い道をひょいひょい登っていく。彼はなんとサンダル履き。歩き慣れているのか息も切らさず、余裕の表情。足元を見ると結構怖い。踏み外したら、なかなかの大惨事だ。

途中から私は、彼とデスタを完全に信頼する、と決めて景色を楽しむことにした。

ところどころ不思議な家が見える。中から小人が出て来そう。

家の前に広がる畑は、エチオピアの主食であるテフという穀物。この穀物を使ってインジェラという酸っぱいクレープのようなものを作り、その上に色々な具を乗せて食べる。これがまた悪名高いというかなんというか、エチオピアの旅ブログとかでは散々な言われようなんだけど、私は割と普通に食べられた。

(インジェラを焼いているところ。山頂付近の家のお庭で。かなり標高が高いところにも、普通に人々が暮らしていて驚いた)

エチオピアはとっても広くて、色々な部族が住んでいる。この辺りの人は木組みに泥を塗って固めて、家の塀を作るらしい。そしてその泥が乾く前に水玉模様の装飾をしているようだった。泥を使っているくらいだから、空気はとても乾燥している。そして薄い。心なしか、陽の光も白っぽく見えた。


ラリベラの街から約3時間ほどかけて、山の頂上の教会に着いた。


エチオピアはエチオピア正教会という、独自のキリスト教文化を持っていて、教徒はみな、白いマントを被っている。白を使うのはアフリカでは珍しいらしい。

真っ白な衣が、この場所をより神聖に感じさせた。こんな光景、こんな人物、見たこと無い。使い古された表現だけど、この世のものでは無いような場所だった。


中を案内してくれた司祭の方は、この教会に死ぬまでずっといるそうだ。

世界の平和を祈りながら。

最近悲しいニュースが多いから、普段はのんきに過ごしているけど色々考えてしまって。思考が狭いところでぐるぐる。

そういう時は昔から日記を書いてきた。文章にするとスッキリする。最近は文章をnoteに書くようになって、毎日投稿は出来ずとも、毎日noteを開く習慣は出来た。で、なんとなく下書きリストを見ていたらエチオピアのことを思い出し、今、こうして書いている。


エチオピアの記憶は少しだけ心の視野を広げてくれた。それは遠い山頂から届く光のようで。

苦しくて何かを祈る時はたいてい、ぎゅっと身体が縮こまって近くのことしか考えられなくなる。物理的にも精神的にも。そんな時、ちょっとだけ助けてくれるのが、遠い場所の記憶だったりする。

少しでも俯瞰して見られるようになりたい。人には色んな時期がある。目の前の、自分がやるべきことを淡々と、誠実に向き合うしか出来ることはない。

幸せも不幸もなにもかも、ずっと続くことなんてあり得ないのだから。








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藤井 友梨香
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