いちじくソースと食文化の違い
日本にしばらく帰れなさそうなので、実家へドイツの日常をお届けするために食料品を箱詰めしている。
普段質素な生活をしているため、ここぞとばかりにスーパーであれこれ買うのはかなり楽しい。
国民に愛されているRitterSportチョコレートや種類豊富なハーブティー、Bio(オーガニック)製品をちょこちょこ買っては箱に詰めていく。
先日スーパーでトマトソースの棚を眺めていたら、すぐ隣にイチジクソースの小瓶を見つけた。
キラキラ輝くイチジクのソース、ユルめのジャムのようでとても美味しそうに見える。
ドイツ語でFEIGENSENF SAUCE (ファイゲンゼンフ ザウセ)。ドイツ語はあいまいだが英語と似ているところもあり、イチジクソースは英語でFig sauce(フィグ ソース)でなのでこれは間違いなくイチジクソースだろう。
この冬イチジクに大ハマりしていた私は何の疑いもなく自分用と送る用に2つカゴに入れた。
家に帰り待ちきれずに一舐めしようと蓋を開ける。
ぷるぷるキラキラ輝くソース、美味しさを想像して自然と笑みがこぼれる。
と同時に嫌な予感が胸を走る。まさかそんなはずはない。小指をソースに突っ込み口に運んでみた。
コスモ。
舌というより鼻を刺激する強いマスタードの風味と、甘く煮詰まったイチジクのジャムのハーモニーが不穏な音を立てて脳内に混乱を招く。
久しぶりの味覚から来る脳アハ体験。今回はノーガードすぎて脳がギブアップしたため何も考えずに鼻をつまんで飲み込む。
調べてみるとFEIGENSENF SAUCE(ファイゲンゼンフ ザウセ)の意味はFEIGENSENF=イチジクではなく、FEIGEN=イチジク SENF=マスタードで、元からデカデカと「イチジクマスタードソース」とパッケージに主張されていた。
誰がSENF=マスタードだと予想できたであろうか。ただの勉強不足か。
思い返してみれば、トマトソースやケチャップコーナーの隣にあったのも納得。基本的に肉と一緒に食べるレシピが多いらしい。
後日ひき肉でそぼろ丼を作りソースを乗っけてみたが、マスタードの辛味とあと引くジャムの甘味が完全に大暴れしていたので友人に使い方を聞いてみることにする。
取り扱いが極めて難しいため、日本に送るのは断念し手元には2個のイチジクマスタードソースが残った。