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ウクライナ: 略奪で告発された人々は電柱に縛られ、身ぐるみ剥がされ、殴打された

France 24 The Observer 4/4/2022の記事の翻訳です。写真:カホフカで撮影されたもの。 "Я мародер"(私は略奪者)と書かれている。 ソーシャルメディア

ウクライナでの戦争が始まって以来、ソーシャルネットワークや地元メディアで共有されている動画には、路上で電柱に縛られ、時には衣服を剥ぎ取られ、殴られるという不穏な光景が映し出されている。このような事件はウクライナ全土で起きており、多くの場合、窃盗罪に問われた人々への罰として行われている。国民の一部はこのような慣習を受け入れており、一部の当局はこれを奨励してさえいるが、地元の人権団体は「違法であり、容認できない」と非難している。

警告 :この記事の画像は、一部の読者にとって不愉快なものかもしれません。

ビデオには、電柱や街路樹に粘着フィルムやテープで縛られた人々が映っている。彼らは一人でいることが多いが、2、3人が一緒に縛られていることもある。紙切れにメッセージが書かれたものもある。ズボンを脱がされる者もいる。殴られる者もいる。

FRANCE 24のオブザーバーチームは、このようなシーンを映した17のビデオを特定することができた。それらはウクライナ全土の中・大都市で撮影された: キーウ、イルピン(キーウ州)、ドニプロ、クリヴィ・リフ、カミアンスケ(ドニプロペトロウシク州)、ポルタヴァ、メリトポリ(ザポリージャャ州)、ハルキウ、へルソン、カホフカ(へルソン州)、ドゥブノ(リブネ州)である。

これらのビデオはいずれも3月に公開された。これらの事件が起こった正確な日付を確認することはできなかったが、2月24日に始まったロシアの侵攻以前の痕跡がないことから、最近のものと思われる。

なぜこの人達は通りの真ん中で辱めを受けたのか?

これらの人々の多くは、家や廃屋を略奪した罪に問われた後、このような状況に置かれた。多くの場合、"мародер"、つまり "略奪者 "と書かれた紙が貼られている。

ポルタヴァで撮影され、3月中旬に公開されたビデオ
(撮影場所はここ)。
カホフカで撮影され、3月中旬に公表された写真:2人の男性が電柱に縛られ、「私は略奪者だ」というメッセージが書かれている。

映像の中には、拘束された人が略奪行為をしていることを通行人が非難しているものもある。

キーウで撮影され、3月中旬に公開されたビデオ(場所はここ):男が人を木に縛りつけ、ズボンを下ろして殴る。「破壊工作員か?」「いや、略奪者。」
カミアンスケで撮影され、3月中旬に公開された、木にテープで固定された男のビデオ。「この負け犬はポータブル・ブルートゥース・スピーカーを盗もうとしたんだ」という声が聞こえるだろう。

更に、ツイッターやテレグラムに投稿された動画に添えられたキャプションや地元メディアで窃盗を告発されることも多い。

しかし、その全てが略奪で告発された人々を映しているわけではない。例えば、ドゥブノで撮影された下の動画は、戒厳令下では違法であるにもかかわらず、酒を売っていたとされ、処罰されている男性を映している。彼に掛けられた看板には、「戒厳令下で酒を売っている」と書かれている。

ドゥブノで撮影され、3月中旬に公開されたビデオ。「戒厳令の間、私は酒を売る」と書かれた看板を掲げた男が電柱に縛られている。

このような公開処罰の背後にいるのは誰なのか?

私達のチームが分析した17本のビデオのうち、告発された泥棒を縛り上げている人物が映っているのは9本だけだった。彼らは一般市民のように見えることもあれば、武器を持ったり、軍服、青や黄色の腕章やバッジを身につけたりしているウクライナの治安部隊のメンバーである可能性もある。

例えば、イルピンで撮影された下のビデオには、軍服を着て黄色い腕章をつけた2人の男が映っている。彼らは人を道路標識にくくりつけ、ジャガイモを口にくわえさせ、ズボンを下ろしている。軍服を着てヘルメットをかぶった3人目の男と、電柱に縛られた2人の男もいる。

それでも、この男達が誰なのかを正確に確認するのは難しい。しかし、現場を目撃したカメラマンは、彼らはウクライナの兵士だと言い、あるジャーナリストは、彼らはアゾフ連隊のメンバーだと言った。

3月12日、イルピン(位置はここ)で撮影されたビデオ:軍服を着た男たちが、略奪の嫌疑をかけられた3人を辱める。
ポルタヴァで撮影され、3月2日に公開されたビデオ(場所はここ):再び、黄色い腕章とバッジをつけた2人の男が、電柱に縛られ「襲撃者」として非難されている男の隣に立っている。

キーウ在住のタラスは、『FRANCE 24 Observers』取材班に対し、処罰は「警備員、国防軍、傍観者、関係する市民など、あらゆる人々によって行われている」と語った。

戦時下における市民による取り締まり

このような公共の場での屈辱は、一般市民によって、あるいは治安部隊によって、公的な命令なしに、自発的に行われている可能性が高い。何人かの情報源は、この推測をFRANCE 24 Observersチームと共有した。
タラスはこう語った:

何千人もの人々が家を失い、更に多くの人々が水も食料もほとんどない状態で防空壕に隠れている時に、略奪を許すわけにはいかない。しかも、戦時下においては、従来の法執行機関にはもっと重要なことがあり、生存をかけて戦っている国で裁判をすることはできない。だから、人々は自分達の手で問題を解決する。人体に危害が及ばない限り、非常時の自己組織化としては社会的に容認される形なのだ。

しかし、ウクライナ当局は何度か、この種の処罰を明確に支持していることを表明している。早くも3月1日、パトロール警察のオレクシー・ビロシツキー副署長は、電柱に縛り付けられた人々の写真を自身のフェイスブックに投稿し、戦時中に盗みを働くことは「容認できない」と付け加えた。

「全ての泥棒は逮捕されるだけでなく、名誉を傷つけられ、処罰されるだろう」と、国家警察のフェイスブックページで共有された投稿で述べた。

更に3月21日には、内務大臣顧問のヴァディム・デニセンコがこう述べた 「強盗を縛り上げて裸にすることは、戦時下において乱暴な行為とは見なされないと思います。」彼はまた、警察は現時点では一件一件の通報に対応できないこと、そしてこの種の処罰は「刑事罰の脅し」よりも泥棒の抑止力になることを指摘した。

ウクライナの何人かの市長は、これらのビデオに見られるような公衆の面前での屈辱に特に言及することなく、略奪者を脅している。

3月11日、イルピンのオレクサンドル・マルクーシン市長はこう述べた: 「イルピンの店や家から盗もうとする者は、厳罰に処す!」

3月2日、ポルタヴァ市長のオレクサンドル
・ママイ
は、略奪者には「厳罰」が「許される」と述べた。2月下旬には、戒厳令のもとで略奪者に対して武器を使用することができると警告さえしている。

ヴィタリ・クリチコ(キーウ)、セルゲイ・スホムリン(ユトミル)、パヴェル・クズメンコ(アクティルカ)といった他の市長達は、略奪者は治安部隊によってその場で射殺されると宣言した。

略奪に対する厳罰化

ウクライナ議会は3月上旬、戒厳令下で窃盗罪の実刑判決を引き上げる刑法改正を行った。この措置は、略奪が「蔓延」し、刑事罰の結果が弱いことから市民が自ら「正義を行う」よう迫られているという事実によって正当化された。しかし、この修正案には、公共の場での屈辱や略奪者の射殺については何も書かれていない。

ウクライナの人権NGO「ZMINA」の代表であるテチアナ・ペチョンチク氏は、フランス24のオブザーバー・チームにこう語った「警察が到着する前に、市民が略奪者を拘束し、動けなくすることは合法です。しかし、不当な扱いと拷問は、戒厳令下であっても違法です。」ZMINAと他のNGOは共同声明で次のように述べた「地域社会が自分達で犯罪者を阻止しようとする試みは、理解できる正当な判断であるが、犯人は直ちに適切な法執行機関に引き渡さなければならない。」

罰として人を電柱に縛り付けることは、危機の時代のウクライナでは目新しいことではない。少なくとも2014年以来、同様の行為を示す写真や動画がネット上で共有されてきた。例えば、この税関職員は2014年2月、ザカルパティア州で汚職の嫌疑をかけられ、棒に縛られた。2014年8月にはイリーナ・ドヴハンという女性がドネツクで、ウクライナ軍を支持したと言う事で、親ロシア派の分離主義者達によって、同様の処罰を受けた。

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