ロシアの「不名誉のボード」とは
クリス・オウエンのツイートを翻訳したものです。本文はこちらから
「不名誉のボード」とは何か、なぜロシア軍はそれを使っているのか?この話題はここ数日で何度か出てきているので、この非常に古いソ連の制度がウクライナ戦争でどのように再登場したかについて、短いスレッドを立てる価値があると思う。
上の例は、ロシア南部のブデノフスクで、第205独立コサック自動車ライフル旅団の基地に貼られたとされるもの。「THEY REFUSED TO CARRY OUT COMBAT MISSIONS (彼らは戦闘任務の遂行を拒否した)」と言う説明書きの下に約300人の兵士が記載されている。
下の文章にはこうある:
「2022年2月24日、ロシアはウクライナで特別軍事作戦を開始した。その目的は、非軍事化と非ナチ化、“ドンバス”の民間人に対する“大量虐殺”に責任のある全ての戦争犯罪者を裁くことである。
第205コサック旅団は、創設当初からウクライナ領内での特殊作戦に参加し、軍事的な任務を見事に果たしている。
しかし、我が旅団の軍人の中には、軍人の義務を果たすことを拒否し、軍人の誓い - 厳粛な約束、祖国への忠誠の誓い - を失い、戦闘態勢を取るべき場所で離脱した者がいる。
彼らは、兵役はどんな状況でも、たとえ死の危険があっても、与えられた任務を無条件に遂行しなければならないことを忘れている。彼らは武器を捨て、仲間を裏切り、家族、国、尊厳を傷つけたのだ!」
「不名誉のボード」は他の場所に貼られているようだ。オレグ・コロトケビッチ大佐は、第35別働ライフル旅団の兵士の家族に向けた講演で、同旅団から261人の兵士がウクライナでの戦闘を拒否して除隊したと述べた。
スヴォボダ・ラジオ(@SvobodaRadio)が公開した抜粋の書き写しから:
(オーディエンスからの質問): 「お聞きしたいのですが、不名誉のボードはありますか?」
コロトケビッチ「不名誉のボードはありますが、区分地内にあります。街にはまだ置いていません。
しかし、我々はを貼り出します。信じて下さい。それぞれのヒーローがわかるようにするのと同じように、不名誉な恥知らずを全て知ることができるようにします。」
また、多くのロシア兵が脱走していた開戦時に、不名誉のボードが貼られていると言う指摘があった。
2022年4月、@CITeam_ruの@RuslanLevievは、ウクライナ国境のロシア部隊が「悪人/善人」のための白板を置いていたことを報告した。灰色のボードには、「仲間を裏切り、戦場から逃亡した」人々の写真を掲示するスペースがあった。
これが現在のロシア軍でどれほど広く使われているかは分からないが、実際に使われていると言うことは、ソ連時代に戻ったようで興味深い。不名誉のボードの歴史を見てみよう。
ソビエト社会は順応主義が強く、国民は常に特定の行動規範を守ることを要求された。逸脱した行動は罰せられる。髪型や音楽、服装なども、国やコムソモールなどの国営の青年団が取り締まっていた。
しかし、国家ができることは限られていた。その代わりに、恥の文化(позор, pozor)を奨励することにしたのだ。自分で取り締まれないものは、社会的な圧力を使ってコントロールした。その結果、(恥)不名誉のボードが生まれた。
悪人・善人の板が示すように、実は二面性の一部なのだ。ロシア語では、「ドスカ・ポゾーラ(恥の板)」または「黒い板」と呼ばれ、その鏡像が「ドスカ・ポチェタ(名誉の板)」または「赤い板」である。
反社会的行為で告発された人物を隣人や同僚が公開で裁く法廷である同志の法廷など、公に恥をかかせるためのいくつかのメカニズムの一つであった。被告人は自白し、許しを請わなければならない。
ソ連は名目上は平等主義社会だが、実際には地位が全てであった。赤板や黒板で紹介されることは、仲間の反応はともかく、自分のキャリアに大きな影響を与える可能性がある。
学校、職場、集団農場、そして食糧の確保が労働の割り当てに依存するGULAGの収容所に至るまで、ソ連システムのいたるところで、恥辱と名誉の板書が行われた。
しかし、この掲示板がもたらす社会的なプレッシャーは相当なものであった:「妻や子供、友人、労働者仲間は、誰が怠け者として自分を辱めているのか、そこでわかる。子供達は、非効率な労働者である父親に説教する。」
また、他の文脈でも使われる可能性もある。1980年代にソ連の巡洋艦マーシャル・ボロシロフの船員達が、浮気した妻や恋人を示す「不名誉のボード」を作成した(“待てない女達”)。
また、1930年代のスターリンの反宗教キャンペーンの一例として、復活祭を守った子供達の名前が、学校の恥ずべき掲示板に書き込まれたことがある。
時には、特に悪質な犯罪者と見なされる人々を辱めるために特別な努力が払われた。1970年代、公衆トイレで喧嘩をしているところを人民パトロール隊に捕まった2人の女性には、自分達のイラスト入りの不名誉のボードが渡された。
ソビエトの不名誉(恥)と名誉のボードは、単純な掲示板から、町や都市の中心にあるほとんど彫刻のような壮大な建物まで、大きさも複雑さも様々で、通行人は誰が悪さをしているのか(あるいは成績優秀なのか)、足を止めたものだった。
ソ連崩壊後、ロシアでは不名誉のボードはほとんど姿を消したが、旧ソ連の慣習を模倣し続けるベラルーシでは、引き続き使用されているようである。酔っぱらい(上)と借金取り(下)にそれぞれ焦点を当てた不名誉のボード。
プーチンの支配下でロシア社会が権威主義的になるにつれ、不名誉のボードが各地で再び登場し、債務者、汚職官僚、ならず者、不良民間社員、更には講義に遅刻した学生などを対象としている。
現在では、さまざまな公共機関が、汚職官僚や運転違反者を掲載した電子掲示板や、検索可能なデータベースを作成している。
そして、共産党のヤロスラフ・クリュコフ代議士が2022年5月に提案した法律案「社会的危険人物の情報公開について」がロシア議会で可決されれば、今後、不名誉のボードはもっと普及する可能性がある。
クリュコフは、「広場、中庭、広場、大型ショッピングセンター、看板、街の灯り、そして公共交通機関のポスターの形」で不名誉のボードを再導入することを提案している。
彼は、「無許可の抗議活動に参加し、インターネット上で当局や国の状況について否定的なコメントを書き込んだことで有罪判決を受けた人物」を糾弾するために使うことを提案している。
また、情報革命の流れに乗り、お近くに不名誉のボードに載せるべきだと思う人物をご存知の方は、モバイルアプリ「My糾弾」で報告することができます。乞うご期待 /終