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ファッションで高齢社会を盛り上げる!オシャレが健康寿命を長くする。
黒いハットに黒のサングラス、黒いスキニーパンツに黒のジャケット。
マイケルジャクソンの音楽に合わせ、軽快なステップでランウェイに登場したのは80歳を超える女性だった。
第15回モダンシニアファッションショー
2019年12月1日、兵庫区役所の新庁舎で「モダンシニアファッションショー」が開催された。年齢や障害に捉われない自由な生き方を、ファッションを通じて表現するファッションショーで、今年で15回目を迎える。
当日、会場には立見の観客が出るほどの盛況ぶりで、そのほとんどが高齢者で埋め尽くされていた。
モダンシニアファッションショーは、一般公募で集まった60歳以上の人が出演する参加型のファッションショーだ。
プロのモデルでもなく、特別なレッスンを受けたわけでもない、兵庫県に住む一般の人で構成されている。
冒頭で紹介した女性も参加者の1人で、第1回目から連続出演しているベテランの出演者だった。
今年は約50名が参加し、その平均年齢は80歳。年々、参加希望者が増え、兵庫区での恒例行事となっているそうだ。
全ての服にストーリーがある
衣装は、出演者自身で用意する。
この日のために新調した服や、一張羅の着物、思い出のつまった服など、それぞれが着たい服でランウェイを歩く。
成人式で着た振袖をリメイクしたドレス、新婚旅行で着た赤いワンピースを主役にコーディネートした服など、皆とっておきの一着で登場した。
40年近く前の着物や服でも、形を変え、組み合わせる服を工夫することで長く楽しむことができる。
少し顔を赤らめながらも、にこやかにランウェイを歩く姿はとても楽しそうで、買った頃の気持ちを思い出しているようにも見えた。
当時の思い出が、袖を通すことでよみがえり、参加者自身も若返ったようだった。
ランウェイを2往復する間に、服に込められたエピソードがアナウンスで紹介されるのだが、出演者の人柄が感じ取られ、会場を和やかな空気で包み込んでいた。
演出にもそれぞれに工夫とこだわりがある。
爽やかな黄色のフレアスカートを履いて登場した女性は、その場でスカートを脱ぎ捨て真っ白のショートパンツに早着替えをしてみせた。
厚底のスニーカーで颯爽と歩くその姿は、人気アイドルそのものだった。
趣味の世界や、特技をランウェイで表現する人もいた。
日本舞踊に精通している女性は、ウォーキングの合間にポーズを取り、その美しい立ち振る舞いで観客を魅了した。
この日、会場で一番の注目を集めたのは、膝上丈の黒いチャイナドレスを着こなしたスレンダーな女性だった。
彼女は、トランスジェンダーで戸籍上は男性だという。
普段から自分が心地よいと感じるおしゃれを楽しんでいるが、「チャイナドレスを着たい」という夢をこの場で叶えたのだ。
ファッションで生活を豊かに
モダンシニアファッションショーは、ファッションを通して自分の生き様を表現する場だ。
お洒落が大好きで参加している人もいれば、友達が楽しそうに出演している姿に影響を受けて参加した人もいる。
参加した理由はそれぞれ違うが、このショーをきっかけに人生を楽しんでいる様子が手に取るように伝わってくる。
中には、年に1度のショーに基準を合わせて健康管理をしている人もいるという。
皆、生活を自由に楽しみ、自分の人生を生きている。
価値の基準が楽しいか、楽しくないか。
ワクワクするか、しないか。
とても単純なことだけど、それを実行している姿に一種の憧れを感じる。
老いを決めるのは自分自身
「もう、いい歳なんだから。」
出演者の中に年齢を気にして自分のやりたいことを制限する人は、誰一人としていない。
自分の好きなこと、長年かけて培ってきたこと、新たに挑戦したいこと、その一つ一つに貪欲にまっすぐに取り組んでいる。
そこには嘘がなくて、心から楽しんでいるから表情が豊かになり、観ているこちらにまでそのワクワクが伝染してくるのだと感じる。
将来、自分が定年を迎えたとき、同じように笑って毎日を過ごしていたい。もっと近い未来の話でいくと、親が高齢になったとき、同じように生き生きと過ごしていてほしい。
超高齢社会を支え、リードしていくのは若い世代ではない。
自分たちで盛り上げていくんだという気概を感じた1日だった。
こんな場がもっともっと増えていけば良いな。