いつかのアヒルとニコレット
高校生のとき、地元のマクドナルドでバイトしてた。そこに片想いの大学生がいた。高2の夏に出会った彼は、私の近所のアパートで一人暮らしをしていた。
私のことをアヒルって呼んできた。
彼は誕生日とクリスマスが近かったので、プレゼント何がいい?と聞いたら
「ニコレットとアヒルの人形」と、どこまで冗談かわからんかんじで言われ、
私はその通りのものを用意した。
今思うといろんな意味で無理のある買い物だった。
犬が大好きな人なので、彼の誕生日に自分ちの犬に「祝☆ハタチ」と書いた紙を持たせて写真を撮って送ったらそれを待ち受けにしていた。
嬉しくて友達に言いふらした。
クリスマスイブに、その人の家にバイト先のみんなを呼んでパーティーをやろうと彼が提案したので、そのことを母に言ったら(恋をしていることはもちろん言ってない)、誰の家?!誰が来るの?!とあれこれ聞かれた。
なんでそんなに心配されるのかよくわからなかった。
普通にみんなで遊ぶだけなのに。
母も知ってる私の地元の女の子の友達もいるし大学生の女の人も何人かいるし…というのを言ってやっと納得してくれた母のことなんかそれほど気にかけず、
パーティー当日はピザをとり、みんなでトランプしたりそこにいないバイト先の人の噂話したり。
酒を飲んでた彼は私のプレゼントしたアヒルを手元に置き、いつもより視線を多く私に送ってくれた。気がした。
さすがの彼もプレゼントに関しては、少し申し訳なく思ってるようであった。
解散して帰ると、
母親が腕をくんで仁王立ちして家の前に立っていた。
私はそんなに心配されるようなことをしたのだろうか。
そのときは本当にわからなかった。
不健全なことは何もなかった。不健全なことを話す人もいなかった。
ただ、帰ってから彼に電話で「お前にも酒飲んでほしかった」と言われた。
それにしても
あの母親の仁王立ちが、いつまでたっても忘れられない。
家族のことなんかそっちのけで恋をしようが捨てられようが、
それを何度繰り返しても
いつもどんな時もあたたかい家で母親が迎え入れてくれていた
いうことに気がついたいつかのメリークリスマス