2日目の夜【500歳ということ】
きょうは漫画喫茶からお届けします。先ほどお洗濯を終えて、荷物の整理をして、わかめスープなどをのんで一段落してます。足を伸ばして寝れるってしあわせ。
今日もずいぶん移動してきて、よりみちして探索をしたり、海辺で自炊をしたり、本当に楽しかったです。
お昼にですね、山奥の小さな村に行きました。そこがとても素敵な場所だったのでそのお話がしたいです。
そこは、お寺やお城の跡地がたくさんある古い村でした。はじめは適当に散歩しようとGoogle mapでなんとなく見つけた場所で、とくに何もないだろうと思っていたのですが、調べてみるとある寺の中を案内してくれるおじさんが現れるという情報をゲット。おもしろくなって行くことになりました。
静かで、苔がその寺を守っているような、綺麗に手入れされた寺でした。案内してくれたのは、おじさんではなく小さいおばあちゃん。
『さあどうぞ、靴を脱いで御上がりください。
はい、この寺はね、500年も前に造られたんですよ。あるところに歌を詠むのが上手なお坊さんがいらしたんだけれど、戦争がはじまって歌どころじゃないってこちらまでやってきて、偉い武将さんと協力して建てたんです。だからここは、お茶を飲みながら歌を詠むための場所なのです。
奥にきて、右手の庭園をごらんください。
こちらは「冬の窓」といってね、ちょうどあすこに三角の山が見えるでしょう。冬、あの山に積もる雪が本当にきれいだって、この位置に窓をつけたんですよ。
次は縁側へ来ていただいて、こちらのお庭をごらんください。こちらから見える庭は「月見の額」といってね、中秋の名月に皆ここにくるんですね。そうすると本堂の裏のあの竹藪から月が昇るんです。風が吹くと竹が揺れて、まるで月が吐き出されるように見える。これがこの寺の名の由来です。そうして、この目の前の小さな池に月は映ります。そうゆうふうに出来てるんです。この池を見てください。七つの岩が丸く置いてあるでしょう。あれはね、北斗七星の位置と同じなんです、つまりね、夜空を造り出すんです。
そうゆうふうになってるんです。
裏山に行きましょうね。
こちらに回るとここも庭になっておりましてね、振り替えるとあの真ん丸の山がありますね。あれは春になると山桜が咲き乱れるのです。こうして、春の山、月の山、雪の山というわけですね。全てが見られるようにここを建てて、皆が歌を詠めるようにしたのです。
奥に水が流れておりません滝があります。こちらはあえて流していないんですね。ここは枯山水の庭として「水は心で流してください」という、わびの世界を作り出しているんですよ。茶庭はわびの世界。
さて、このあとはご自由にごらんくださいね。』
そうしておばあちゃんは部屋の奥へ消えて、もう戻ってきませんでした。
たくさんの昔のお茶の道具や、お坊さんが使っていた杖、オランダの時計、奥に「待月」と書かれた額のある茶室、全部しずかにしずかにしていて本当に時間が止まってしまったようでした。
物語を知って、寺を出てあるいてみると、村が生きていました。どの建物も本当に崩れそうなくらい古いけれど、薪が切りたてだったり、ベランダに柿が干してあったり、小さな盆栽が堂々と座っていたり。古くても、ちゃんと一緒に生きてきた人がいるんだ!と感じることが出来るようになっていました。