9日目の夜【うとうとしてたら朝】

大きな田舎道をぐんぐん走り抜けていくと、ぱっと目の前に広がったのは、金色の稲穂の世界。そのときは少し雨が降っていて、しっとりと優しく稲穂が揺れていました。遠くのほうから新幹線が走り抜けるとハッとしたように金色は波うったように見えて、本当にきれいでした。

その金色のなかにポツンと佇む、茶色いお土産屋さん。朝ですが、もうお店は開いていてちらほらお客さんも見えてきます。

少し野菜をかってお店を出ると、今度は桃色の世界!お店の真横がコスモス畑になっているのでした。東京のコスモスよりうんと大きいようなきがして、強く強く空に向かって咲き誇っていました。

小さな茶色に桃色が寄り添って、あとは金色。よし、探検してみよう。

コスモス畑をぬけて稲穂の世界をてくてく歩いていくと、小さなトンネルがあります。そこを抜けるとまた1面、金色!すぐ脇には透明なお水が流れていて、小さなお魚が集まって会議していました。

さっきまで人がいたのに、今は誰ひとり見当たらない。でも小さな小屋のなかに、コンロややかんが置いてあったり、焚き火をした跡が残っています。不思議なところだな。

奥のほうに家々がみえたので、そっとそちらの方へ歩いてみると、古い古い立派な家(というより、もうお屋敷)が密集していました。誰もいない昔の時代に飛んできてしまったよう。すると家々からちらほら人が現れてきました。みんな喪服をきています。今日はだれかのお葬式。どうやらここら辺は1つの一族が集まって住んでいるようでした。

雨が弱まってきました。古い屋根から滴り落ちてくる水のお陰で苔がなんか楽しそう。

少しだけ道を歩かせてもらいましょ。古いお家でも、農具は綺麗で、野菜が干してあったり、しっかり庭の手入れが施されていたり、新しい家には子供用の自転車や洗濯物がならんでいました。村の集会所にも子供用の遊具もそろっています。ここの子供達はみんなに守られて育っているんだ。

その日は静かでしたが、強く強く、昔のまんま、みんなが大切に大切にしてきたお家を守って、子どもを守って、丁寧に生きている村。そして、私たちがその世界に入ることは絶対にできない。今日はたまたま迷い込んでしまいましたよ。失礼しました。

また金色の世界を抜けてトンネルを抜けて、戻ります。再び来ることはもうないかもしれない。でも、私が東京に戻っても、時が過ぎて街並みや人々が入れ替わって、私の中もすっかり変わってしまったとしても、あの古い村はなにも変わらず、私の存在も知らずに元気に残っていく。

これはなかなか、元気づけられる事実かもしれないな。

さあまた行くぞ、次は真っ赤な紅葉の世界へ。

いいなと思ったら応援しよう!