ノラ猫の詩
お母さんがいなくなってしまった。
ぼくたちが生まれてから、3ヶ月。
昨日までは一緒だったのに。
ぼくたちをペロペロと舐め、
たくさん可愛がってくれたのに。
ぼくたちにたくさんおっぱいをくれたのに。
ぼくたちが甘えると、ゴロゴロと喉を鳴らし、嬉しそうにしてくれていたのに。
小さなぼくたちの首を甘噛みして、運び、
命がけで連れ歩きながら、
安全な場所、安全な場所へと巣を何度も引っ越しして、ぼくたちの命を守ってくれたのに。
なのに、突然、お母さんはいなくなってしまった。
ぼくたち6匹きょうだいは、途方に暮れてしまった。
一番身体が小さくて、まだヨチヨチ歩いていたきょうだい2匹は、あっという間にカラスたちに連れ去られてしまった。
もう、あの2匹のきょうだいは、戻ってこれないだろう。
残された4匹の子猫だけで途方に暮れてミャーミャー鳴いているしかなかった。
お母さん、どこに行ってしまったの…?
近所の子供達がやってきた。
「かーわーいーい💖」
最初にやってきた子たちは、ぼくたちを抱き上げ、なで回し、可愛がっていたけど、
その後にきた悪ガキたちは、目の奥底に真っ黒なイヤな光を宿しながら、ニヤニヤしていた。
「こいつらは危ない!」
「お母さんは、人間を信用するな、って言っていた!」
イヤな予感がして、ぼくはすぐに逃げた。
逃げ遅れた2匹は、奴らに捕まってしまった。
…遠くから、きょうだいの叫び声が聞こえる。
今まで聞いたことのないような、おそろしい、叫び声。
夜になり、悪ガキたちがいなくなってから、恐る恐る、きょうだいの様子を見にいった。
…そこには、もう息絶え、ボロボロになったきょうだいたちのむくろしかなかった。
辛かったね、
苦しかったね、
人間って、なんて残酷なひどい生き物なの…!
この地域にもともといる、大人のノラ猫ですら、
「ゴルァ!
俺のナワバリでウロウロしてんじゃなねえよ!
この若造が!!」と、
威嚇したり猫パンチしたりして、
追い立ててくるけど、
ぼくたちの命を奪ったりはしないのに。
お母さん、どこに行ったの…?
お母さん、怖いよ、
お母さん、ぼくたち、どうすればいいの…?
お母さん、また喉をゴロゴロさせてよ、
また、ペロペロ舐めて可愛がってよ…!
いつの間にか、
残ったもう1匹のきょうだいとも、はぐれてしまい、ぼく1匹になってしまった。
ぺこぺこのお腹で、
お母さんのように狩りの真似事をするけれど、
うまく狩ることが出来ない。
巣から飛び立ったばかりのツバメのひなが、
うまく飛べなくて、目の前でバタバタしていた。
「やっと…やっと、食べられる!」
残された力を振り絞って狩って見たけど、
親鳥がやってきて、うまくひな鳥を誘導し、
二羽で大きな空へ飛び立っていってしまった。
「いいな…あのひな鳥には、お母さんがいて。」
ぼく…どうしたらいいの…?
そうしたら、公園の片隅に、餌が乗ったお皿が見える。
美味しそう…
でも、何かの罠かもしれない。
毒かもしれない。
お母さんが言っていた。
「人間がくれる食べ物に注意しなさい。
私たちの命を奪うものを与える時があるのよ。」と。
…でも、ぼく、もう力が尽きたんだ…
もう、疲れたんだ…
お腹が空いてひもじいんだ…
毒でもいい、何か食べたいよ…
エサに近づいたら、
「ガシャン!!!!!!」
と大きな音がした。
…そのままぼくはエサを食べたら、気を失ってしまった。
目覚めたら、明るいところにいた。
人間の家のようだ。
たくさんの子猫や大人の猫が、「ケージ」っていうところに入っていた。
ここは、どこ…⁉️
「あーら、起きたね〜、
ガリガリに痩せていたから心配したけど、
良かったわぁ、
少しずつでもいいから、ここに慣れてね💖」
とっても優しい笑顔のおばさんだった。
おばさんがいうには、
ここは、「保護猫ボランテイア」っていう人たちがやっている「シェルター」っていうところなんだって。
ぼく以外にいる猫たちは、僕より先に保護されて、やってきた猫たちだった。
「早く元気になってね、
優しいおうちにもらわれるといいわね」
おばさんは、毎日そう言いながら、優しくぼくたちのお世話をしてくれた。
いい人間もいるんだな…。
ある日、里親候補の一家がシェルターにやってきた。
「わぁ〜、この猫ちゃん、可愛い〜!」
「あのね、学校の帰りに、公園で子猫がニャーニャー泣いていたんだけど、その子猫ちゃんに、とってもこの子、似ているの!」
「ママ、私、この子がいい!」
そう言った女の子は、あの公園で、「可愛〜い!」ってぼくたちを可愛がってくれた女の子だった。
#動物シリーズ