海外駐在帯同≒「キャリア分断」ではないと叫びたくなった


夫の海外駐在帯同によって、自分のキャリアを諦めざるをえなかった。

帯同は自分で選んだことだし、恵まれているとは思うけど、なんかモヤモヤする。

そんな駐在妻の悩みをよく聞く。

例に漏れず私もそうだった。

なぜなら、30数年生きてきてようやくやりたいことが見つかり、これからやっていくぞ!と決意した矢先でのことだったからだ。

いざ羽ばたこう‼としたら、また鳥かごに入れられたような…

やっとありつける、と思って手を伸ばしたデザートを、目の前でおあずけにされたような…そんな感覚。

だけど、渡独後しばらくした時にふと、これは「キャリア分断」ではなく「キャリア形成」じゃん、と思った

そしたら、なんかこのことを眺めの良い山頂とかで高らかに叫びたいと思うくらい気持ちが溢れてきた。

だけど、noteをよくしたためる夜間授乳後は、ベビー抱っこしながら喉カラカラで叫べない。

なので、まずは水分補給してから大人しくnoteに書いて落ち着かせようと思う。

どんなことからそのように思ったのか。

渡独直後。
私は少しスキマ時間ができようものなら、タスクを洗い出していた。

不意に訪れるスキマ時間で少しずつでも進捗できるよう、なるべくタスクを細分化していた。

独立したてなので、何からやればいいのかわからなくなるくらい、やることはたくさんある。

タスクを書き出しているうちに、お子が起きてきたりして中断する。
洗い出しさえ細切れになっていた。

お申し込みフォーム作成に紐づくタスクは〜〜があって…

などと洗い出しながら、何か違和感を覚えた。

あれ?これって、帰国後ふたりとも保育園行けるようになった後、まとまった時間でやった方が断然効率良くない?

細切れで、前回どこまでやったか思い出しながらやるより。

本当にドイツ駐在中にやるべきことか?
なんか、時間の使い方として逆に勿体ない気がする。

洗い出しをしながら、その日にあった現地の方とのやり取りやお子との間で感じたことなどを、味わって言葉にして心に刻みたがっている自分がいることに気がついた

私の場合、仕事におけるタスクは、どこでもできる類のことが多い。

一方で、今、この場所、環境でたくさん感じていることがあるのに、それをほったらかしにするのは勿体ない。

その感情たちが「私たちを見捨てないで」と寂しそうにこちらを見つめている感じがした。

今、ここで感じたことをしっかり消化することに時間を使った方が良くないか?

直感でそう思った。

「今」の積み重ねが未来だから
「今」は「今」しかないから
「今」が全てだと、コーチングに出会って悟ったから

私の学んだコーチングでは直感を用いる。

「今のお話を聴いていて、直感でこんな情景が浮かんだのですが…〜〜」
例えばこんな具合に、コーチがその場に出してみたりする。

それに対してクライアントさんが、感じたことを表してみる。

そんな共創を重ねていくと、クライアントさんの中にある、課題の本質が見えてきたり、何かしらの気づきに大抵繋がっていく。

日々の感情の機微を繊細に拾って大事に抱きしめながら、咀嚼しながら過ごす。

そうした方が、将来セッションしたときに呼び起こされる直感の引出しを豊かにしておけるのでは。

そう感じた。

帰国後のサービス提供開始に向けて今やるべきこと。
そこから逆算してタスクを洗い出すことはできる。

でも、今ここで感じていることを都度ブチッと断ち切って
誰でも想定可能なタスク、いつでもできることに取り組むのではなくて

今しか感じられないこと、味わえないことをしっかり味わう、身に刻む

そのことの方が、替えの効かない、大事な自分の血肉になっていく

曖昧なことを言っているようだけど
そう思った。

そんなことを考えていたとき、浮かんだワードがある。

Connecting the dots

これは、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で語ったスピーチの中に入っていたことでも有名なフレーズだ。
ご存知の方も多いのではと思う。

点と点が後からどうつながるのか、過去の一見すると無関係な経験が今になって役に立ち、新しいキャリアをつくっていく
という考え方だ。

今を生きたらしめることが将来のなにかに繋がる。
そのことを信じて生きよというメッセージ

何に繋がるかわからないけど、今を生きたらしめること。
これも立派なキャリア形成
ということじゃん。

正直、この駐在帯同経験が将来どう役立つかはわからない。

だけど、過去を振り返ると確かに、点と点が繋がって役に立ち、新しいキャリア※に繋がったことはある。

※ちなみに「キャリア」というと世間一般的には「仕事上の経歴」という狭義の意味合いで捉えている方も多いかもしれない。

しかし、キャリアコンサルタントの養成スクールで「キャリア」とは、ひとことで言うとすると
仕事以外も含めた「生き方そのもの」を指すと学んだ。
ここでは、その意味合いで書いている。

話を戻して、点と点が繋がって役に立ち、新しいキャリアに繋がった経験。

例えば、学生時代好きだった英語。
英語を使うグローバルな仕事に就きたかったが縁がなく、英語とはほぼ無縁の会社員人生だった。

英語を使ったのは、確か一回。
1社目の新人時代に代表電話を取ったときのこと。明らかに関係のない外国人から「社長いますか」と英語で聞かれ、しばらくかかってこないよう「Sorry, he's absent this week.」と答えた。
あの時くらいだ。

その時は、不意に英語を話す機会が訪れて嬉しかった。
だけど、我に返ると切なかった。

だけど、駐在生活を送ることになった今になって役立っている。

私たちの住む地域では英語が通じることが多く、おかげで日常生活に支障はない。

現地のママ友ができた。
保育園の先生とも必要なやり取りができる。
ドイツ赤十字の移民支援の方に聞いて、小児科難民になることを免れられた。
歯が欠けて歯医者にかかることになったとき、ドクターに必要な情報を伝え、双方不安なくスムーズに治療を終えることができた。

英語に苦手意識があったら、色んなことのハードルが上がって小さく縮こまって過ごしていたかもしれない。
現地の方とのやり取りを通じて視野視界が広がることもなかったかもしれない。

他にも、例えばこんなこと。
小学生の頃から、年賀状にお決まりの「今年もよろしく」だけの手書きメッセージを添えることはどうしても自分の中では許せなくて(それをもらう分には構わないけど、自分がそうすることには耐えられなくて)相手がクスッと笑ってくれそうなエピソードなどを交えてメッセージを書いていた。

メールやラインの返信をするのも、必ず送る前に読み直して、相手がこれを受け取ってどんな気持ちになるか?伝わるか?想像しながら推敲を重ねることが多かった。

日頃からそうしていたからなのか、仕事でもメールの文面に関して褒められることがあったり、テキストベースでメンバーマネジメントの相談にのる業務などでもわざわざ感謝のメッセージを頂戴することがあったりした。

それらを通じて「背中を押せた」ことにやりがいを感じる自分を発見した。

それもあって、コーチングを学んで深めてみたいと思った。

一連の経験から自信がつき、今後のサービスメニューとしてテキストコーチングも提供していきたいと思うに至った。

モニターになっていただいた方の変化を一緒に喜ぶことができた。

その時々は、その時やっていることが将来の何に繋がるかなんて、わからなかった。

ただ、直感に従って好きな要素を織り込みながら、その時々を全うしてきた。

それらが繋がって今のキャリアに繋がっている。

私がコーチとして生きていくことにしたから、日々の全てが引出しになっていくから、「キャリア分断」ではなく「キャリア形成」だと言えるのでは?

コーチじゃない人には当てはまらないのでは?
そう思われるかもしれない。

だけど、駐在妻がよく出くわす試練の波をいかにサーフィンしていくかも、キャリアに繋がっていくのではと思う。

例えば、忙しいなかでアドオンされた帯同準備。
それはいわばひとつのプロジェクトだった。
スムーズに乗りこなすにはプロジェクトマネジメント力が問われた。

マイナーな駐在先であるほど現地の医療や保育園の情報などを集めるリサーチ力が活きる。

駐在先で夫が出張することになってワンオペ育児をすることになったとき。

ストレスで乳腺炎にならないためのセルフマネジメント力、優先順位をつける判断力と柔軟対応力、人に気持ちよく助けてもらうこと等を含むヘルプシーキング力が要される。

渡航当初。慣れない使い方のキッチンや洗濯機、読めない表示の食品を使って時間をかけずに夫、4歳児、0歳児皆が満足する夕食を用意するなどの適応力、段取り力などが試される。

現地の方に声をかけられた時や知り合った日本人妻の方との雑談力。機転やユーモアがあるとより楽しい。

何でもない日常のなかでも、いかに乗りこなすか?に自分らしさが滲み出る。

その自分らしさに意識的でいることで、キャリア上の強みを磨いていくことにも繋げられる部分はあると思う。

「駐在妻 キャリア」とググると、語学習得とか現地就職とか、そういった外側からみてわかりやすい、仕事上に限ったキャリア形成に関する記事が目立った。

だけど、そういったわかりやすいものだけが「キャリア形成」といえるわけではないと思う。

実際に現地留学したり、現地就職したりといった、わかりやすいキャリアは積んでいなかったとしても、
駐在先での日常をいかに乗りこなすか?
日々の行動の選択の一つひとつが、「キャリア形成」になっていく
と私は考える。

そこに、自分軸があれば、輪をかけて太く丈夫なキャリアになっていくと思う。

具体的には
この環境で、自分はどうしたいか?
この環境を目いっぱい楽しめる選択は?
そのためにできること、やってみたいことは何か?

こんなことを自問自答しながら過ごしていくと、それが何でもない日常だったとしても、着実に自分らしい経験が積み重なり、いつか点と点が繋がっていくんだと思う。

プライベートでできることは、仕事でもできること
プライベートでの私も仕事における私も
両方、ひとつの身体、心の私だから。

どうしたいか?どうありたいか?
一本、筋を通して日々を過ごせば、キャリアは分断しない

筋を通して進めていない感じがして足踏みする時期があったとしても、葛藤があるならそれは必要な葛藤。

それすらもリソースになる。前進してる。
変わるプロセスに自分がいる証拠

そんなことを思って今日も生きてる。

大事なことに思えたから、言葉にしたかった。
なんとなく思っていたことを、言葉にすると改めて自分のなかでも整理される。

書いてみて、良かった。


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