【短編】牛脂のスープ

数人の友だちとどこか外国のフードコートに来ている。
私も友だちも好きなもので食事を終え、さあ、トレイを片付けようというとき、親友が立ち止まった。
「ねぇ、あのスープ、私まだ飲んでない」
「ん?どれ?」
「あのスープ」
「あーあれ、飲まなくていんじゃない?」
他の友人たちも、そうだとばかりに首を縦に振る。
「飲んだことあるの」
「うん、まあね」
「えーずるい、一緒に飲もうよー」

マジか…あれ、ほんとに飲まなくていいのに…

心の中でそう思いながらも「じゃ、飲もっか」と言って、スープの店の注文カウンターに向かう。

店の厨房には大量の牛脂が積み上げられている。
友だちが「このスープ、何でできてるのかなぁ」と言ったけれど、聞こえないフリをした。

牛脂100%
それ以外に具も入ってないし、薬味なども一切入っていない。

「スープください」
私が言うと、マスクをした店員が薄緑色のメラミンカップにスープをすくって入れ、私に差し出した。
受け取って、トレイに載せると、スープは脂ぎって、それはいかにも脂というこってりとした液体で、黄色味を帯びた透明ながらも、少し濁っていた。
思わず吐き気をもよおしそうになるのを堪えた。
友だちもカップを受け取るとまじまじと覗き込んで、無邪気に「これ、何でできてるの?」と私に尋ねた。



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蘭
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