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工場戦士:Episode4「灼熱の安全教育」

安全教育

ものづくり改善部門に配属された敏夫は、先輩社員の小野田一郎から安全教育を受けることになった。小野田は厚板工場の精製ラインで係長まで経験し、その後ものづくり改善部門に移籍してきたシニア社員である。

ある初夏の灼熱のように暑い日、敏夫は製鉄所内にある安全教育施設で小野田と対面した。施設内には様々な安全装備や実演用の設備が整っていたが、外の気温と工場内の熱気が相まって、まるでサウナのような環境だった。

「佐藤、今日は俺が安全教育を担当する。しっかり覚えて帰れよ。」小野田は厳しい表情で言った。

「はい、よろしくお願いします。」敏夫は緊張しながら答えた。

小野田はホワイトボードに向かい、マーカーを取り出した。「まず、安全の標語を覚えてもらう。『むっつり、うっかい、すっかいこう』だ。覚えやすく短縮してあるが、それぞれに重要な意味がある。」

汗をぬぐいながら、小野田は一つずつ説明を始めた。

  1. む、無資格者は運転するな。資格のない者が重機を運転すると大事故につながる

  2. つり、吊り荷の下には入るな。吊り荷が落下すれば命に関わる

  3. う、動いている重機とは相互確認。フォークリフトなどの重機にはむやみに近づかないこと

  4. かい、回転体に手を出すな。回転体に触れると巻き込まれる危険がある

  5. す、スイッチを切って安全札をかけろ。設備内に立ち入る前には必ずスイッチを切り、安全札をかけること

  6. かいこう、開口部では安全帯を使え。高所での作業では必ず安全帯を着用する

敏夫は必死にノートを取りながら聞いていたが、初夏の暑さと情報量の多さに圧倒されていた。

「よし、じゃあ覚えたか?」小野田が問いかける。

「えっと…む、無資格者は運転するな。つり…えっと…」敏夫は言葉に詰まった。

「なんだ、覚えてないのか!この程度のことも頭に入れられないのか?」小野田は怒鳴った。

「すみません…」敏夫は肩を落とした。

「それでも大卒か?総合職採用だろ?そんなことで現場が務まると思ってるのか?」小野田の声はさらに厳しく響いた。

小野田は深いため息をつき、少し落ち着いた声で言った。「昔、俺が働いていた厚板工場でな、高所から転落して亡くなった奴がいる。あいつは安全帯をつけていなかった。それが原因で命を落とした。」

敏夫はその言葉に驚きと重みを感じた。

「俺たちの仕事は死の危険と隣り合わせだ。だからこそ、自分の身は自分で守らなきゃならないんだ。」小野田は続けて言った。

「はい、小野田さん。肝に銘じます。」敏夫は真剣な眼差しで答えた。

その後、二人は施設内の実演用設備を使って、実際の作業環境での安全確認を行った。小野田の厳しい指導の下、敏夫は一つ一つの手順を確実に覚え、安全に対する意識を高めていった。

サウナ内の出来事

安全教育を終えた敏夫は、同期たちと共に夕飯を食べることにした。皆で食卓を囲みながら、仕事の話やプライベートな話で盛り上がった。

「佐藤、今日の安全教育どうだった?」大磯が尋ねた。

「厳しかったけど、ためになったよ。」敏夫は笑顔で答えた。

夕飯を終えた後、既にマイカーを購入した同期が「これからスーパー銭湯に行こうか」と提案した。敏夫は学生時代からサウナが好きだったこともあり、喜んで参加した。

スーパー銭湯に到着し、まずは全員で露天風呂に入った。敏夫は「ちょっとサウナに行ってくる」と同期たちに断りを入れ、サウナへ向かった。

サウナの扉を開けると、中には一人の男性が座っていた。それは末宗部長だった。

「末宗部長、こんにちは。」敏夫は挨拶をした。

「おお、敏夫か。入ってこい。」末宗部長は最上段に座っており、佐藤を招いた。

サウナは三段に分かれており、最上段は非常に暑かった。温度計は95度を示しており、敏夫はくらくらしてきたが、末宗部長の隣に座ることにした。

10分ほど経ち、敏夫は外に出るタイミングを見計らっていたが、末宗部長はなかなか出ようとしなかった。

「佐藤、わが製鉄所の課題は何だと思う?」末宗部長が突然問いかけた。

敏夫は一瞬考えた後、答えた。「これまでは増産するためにどうすればいいかだけを考えればよかったが、今後は減産する際にどのように利益を確保できる体制を構築できるかだと思います。」

末宗部長はにこりと笑い、「なるほど、良い考えだ。」と言い、サウナから出ていった。

敏夫もその後すぐにサウナを出て、水風呂に飛び込んだ。冷たい水が体を包み込み、ほっと一息ついた。

水風呂から上がった敏夫は、露天風呂に戻り、同期たちと合流した。

「お前、どこ行ってたんだ?」大磯が尋ねた。

「サウナに行ってたんだけど、そこで末宗部長と話してたんだ。」敏夫が答えると、全員が驚いた表情を見せた。

「末宗部長と?お前、ついているな。末宗部長は旧Yから派遣されてきた、次期役員候補と期待されている方だ。気に入られればいいことあるぞ。」同期たちは感心しながらも、その出会いに驚きを隠せなかった。

「気に入られることも大事だけど、それ以上に自分の実力を証明することが必要だ。」敏夫は自らに言い聞かせるように思った。末宗部長の質問に即座に答えられたことは自信に繋がったが、それが一時的なもので終わらないよう、日々の努力を怠らないと誓った。

(つづく)

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