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#004 アンフェアな情報社会 ~社会の一員として何をすべきか~
美容師さんの一言
25年お世話になっているカリスマ美容師さんが言った。「最近、若い美容師さんの間で面貸し営業がすごく増えてるんだよね」と。
この美容師さんは、カリスマ美容師ブームの頃から活躍されていて、人気店を持ち、後進育成にも熱心に活動されてきた方だ。いわゆるTraditionalなスタイル。
新しいビジネススタイルが人気
面貸しとは、休日の美容院とかで鏡付き席だけを借りて、個人で顧客をとり、カットする営業形態を指していて、面貸し専用の箱もあるらしい。ネットで集客していて、お客様からすると破格に割安だし、若い美容師さん達も下働き的なことをSkipして、いきなりお客様の相手ができる。よほど腕が悪いと問題になるだろうが、許容範囲であれば全然成立する。Kさんは続けた。
「今時なビジネススタイルだし、早くから客対応できることによる学びも大きいはず。上司とか雑務とかのストレスがないとか、他にも僕にはわからないメリットがたくさんあるんだと思う。」
「けどさ。技術の継承にも意味があるとは思うんだよね。先輩の技術を見て、学び、成長する、良い面は栄養に、悪い面は反面教師に。そちら側の価値を知ることはないんだよね・・。」
この美容業界の新しいビジネススタイルは、数年前話題になった寿司職人論と同じと言えそう。「半年だけ寿司の基本を学んで、海外で寿司職人として働けば、すぐにがっつり稼げるようになるよ」といった話で、当時大いにもてはやされたと記憶している。
アンフェアな情報社会
こうした話でいつも感じる違和感がある。それは、出回る情報にバイアスがかかりすぎているよね、という点だ。
AとBの比較としよう。Aを強く推す側は、「Aのメリット」と「Bのデメリット」を語る。両者を対比させ、Bを落とすことで、Aの価値を強調する手法。この際、「Bのメリット」に触れることはない。
どう考えてもフェアじゃない手法が横行している理由は二つあると思う。
1つ目は、当然だがAを推したい人にとっては好都合だから。意図的とも言えよう。
2つ目は、Bのメリットを語れる人は限られている、かつ語らないから。Bを経験した人にしか、メリット/デメリットを提示することはできないのだが、そういう人はわざわざ「A最高論」に介入したりはしない。逆に、Bが合わず離脱した人は「A最高論」においてBのデメリットを語るので、世論のバイアスは加速していくことになる。
SNS上の類似ケースとして、例えば「個人で働く vs 企業組織で働く」もそれにあたる。企業組織のネガだけが語られがちで、離職・起業などを促す。組織のポジを知る人は語らない。または「海外 vs 日本」なども同様で、日本オワコンと言いたいが故に、日本よくないところと海外のよいところだけを並べた論調が横行している。起業も海外移住もよいけれど、背景情報の質がアンバランス過ぎる。
あらゆる分野において、フェアとは言い難い不適切なバイアスがかかった情報が出回っている昨今。これまで私自身は、個人としてそこと距離をとればいいやと思ってきていた。みんなそうだろうと。
だが最近ふと思うようになった。「このアンフェアバイアスに、全く気付いていない層が、増えすぎてない?」「社会の方向性がミスリードされるリスク上がってない?」と。
「関わらない」という自分の選択は、よりよい社会に向けて大人としてなすべき責任を放棄していることになっているのかもしれない。そう考えるようになった。微力だとしても。
社会の一員として何をするか
人はその時その時、一つの道しか選べない。ルートAかルートBか。どちらかしか歩いていないので、AとB両方の地図を描ける人はいないことになる。
後に続く誰かが道選択に悩んだ時に、Aしか知らない人が想像で描いたBの地図を見るのはやめた方がいい。絶対に。バイアスのかかった情報を真に受けるというのは、そういうことだと思う。
でもBの人が黙ってると、Bの地図は存在しないことになる。ひとつしかなければ、怪しくても想像地図Bを参考にせざるをえない。怪しいということに気づかない人も増えるだろう。
じゃあどうしたらいい?
ということで私は、下手くそでもいいから、自分が通ってきた道の地図を描いて、発信することにした。誰かの役にたつかもしれない。意味ないかもしれない。けれど、自分ができることから始めよう。SNSは苦手だったけれど、頑張ってみよう。よろしくお願いします。
Yuri Masumi