【ショートショート】タイムスリップコップ
「私はシャンディガフを」
「僕はここのオススメを」
新しいお店を発掘するのが好きだった僕達は、その日も初めて入ったお店のカウンターに横並びに座った。
これがいつもの流れだった。
いつもの流れを変えたのは、彼女の一言だった。
「別れたいの」
僕のソルティードッグが置かれるのと同時だった。
「よろしければ、縁を擦って塩を落としてからお飲みください」
マスターは気まずそうに言い残し立ち去った。
何度も何度も繰り返すこのやりとり。
「もういい。ばいばい」
彼女は1人で店を出て行った。
ああ、まただ。
バッドエンドを変えられなかった僕は、必死に縁を擦った。
彼女とこのBarに来るのは、これで15回目だ。
僕達は何度も何度も、この店で同じ酒を頼み、同じ話を繰り広げていた。
今回もダメだった。
また結末は同じだ。
「いらっしゃいませ」
「私はシャンディガフを」
「僕はここのオススメを」
僕はまた、ぐるぐると思考を巡らせながら、縁を指で擦って塩を落とすのだった。
(408字)
今回は、こちらに参加させていただきました。
まだ拙い文章ですが、いつか毎週ショートショートnoteのお題にチャレンジしてみたかったので、書いていてとても楽しめました!
他の方も同じテーマで書いていらっしゃるので、読んで楽しみたいと思います。