隣の出産。母と面会。そして、NICU。【長男出産記録⑥】
①
前回
隣でお産がはじまった!
出産後は分娩台で2時間待機することになっている。
体の処置をしてもらいながら過ごしていると、隣の分娩台で別の人のお産が始まったことがカーテン越しに聞こえてきた。
痛いよねー。がんばれ〜。と心の中で応援しながら、聞こえてくる隣の様子を伺っていると、私の出産を看護師さんに「落ち着いた出産」と評されたのがわかる。ドラマのように「う〜!」と声を出しているのが聞こえてきた。でも、きっとこれが上手なお産なんだな、というのが何となくわかった。
しばらくして、「おぎゃ〜!」と元気な産声が聞こえてきて、分娩台の上で1人拍手を送った。
ここで私は、このお産が私の後で良かったなと心から感じた。
息子の産声は、この産声よりも弱々しく、この産声を聞いた後の出産だったら、きっと私は息子の産声に対して、喜びよりも不安を感じていただろうと思ったからだ。
息子の誕生の瞬間を喜びで迎えられて本当によかった。
………
母との面会
時計を見ると、面会の終了時間が迫ってきていたので、近くにいた看護師さんに、母と面会したい旨を伝えると、そろそろ2時間経つし…と、面会の許可をもらえることになった。
通常は面会スペースなのが、昨日運び込まれた陣痛室での面会だった。ベッドに横になったのちに、旦那と母がカーテンの中に入ってきた。
母が私の様子を注意深く観察しようとしているのがわかった。
私は出産後、麻酔で眠らされていたので元気だったが、お昼を食べそびれたのと縫われた下半身が痛く、15分の短い面会時間しかないのに
「お腹すいた」、「お股が痛い」
と、繰り返し呟いていた。
それを見た母は思ったより元気そうだな。と思ったらしい。
「里芋…食べたかった…」
昼に食べられなかった里芋を、人生で一番求めていた。
退院後、母が家事をしに来てくれることになるのだが、里芋の煮物を2回も出してくれたことが嬉しかった。
………
短い時間の面会だったが、母に顔を見せられて良かった。隣の県から来てくれているのに、会えないかと思っていたが、無事顔を見せることができた。母に会い、出産を終えたことを少し実感した。
夕飯を食べたら、旦那とともにNICUで先生からの話があることになっていたが、旦那とは一旦別れることになっていた。母とも別れ、夕飯が運ばれてきた。
待望の食事である!
お腹が空きすぎて、心待ちにしていたが、何を食べたかは覚えていない。
座るのも一苦労だったことだけは覚えている。
退院後も、病院の介護用ベッドがいるのではないかと考えたくらいだ。
しかし、食欲は人一倍あったので、ぺろりと食べてしまった。
スマホを見ると、分娩台の上で連絡をとっていた友人たちからは、LINEで「おめでとう!今からケーキを食うぞ!」と写真を送ってくれて、推しの誕生日と同じ祝い方をしてもらえた。彼女たちの最大級のお祝い方法と知っている私は、とても嬉しかった。
夕飯を食べ終えしばらくしたら、看護師さんに「赤ちゃんに会いに行きましょう」声をかけられた。
NICU
車いすを看護師さんに押してもらい、NICUへ向かうことになった。
旦那とは、割とすぐの再会だった。
夜のNICUは静かで、息子につけられている呼吸器やモニターの音がやけに大きく聞こえた。
顔に酸素マスク
腕に点滴
体に心電図モニター
足に酸素計測のコード…
小さな体に色んな機械をつけられていたけれど、小さいながらも呼吸をしていた。
生きている。
とても可愛い。そして神秘的に見えた。
隣に座っている旦那も、息子から目が離せない様子だった。
「産まれたね…」と小声で話していると、息子の主治医がやってきて、これからの流れを教えてもらうことになった。
息子の入院生活
先生からの話はこうだった。(入院する子の個人差や病院の設備によって変わってくることがあると思います。今回は息子の場合を書いています。ご参考までに。)
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今日が妊娠32週0日。これからは保育器の中が子宮の代わりです。
保育器の中で温度を保ち、本人の肺機能が整うまで呼吸器をつけてもらいます。また、ブドウ糖が安定していないので点滴をしています。
モニターは、心拍数・酸素飽和度・呼吸数を表示しています。
これくらいの週数の赤ちゃんは「無呼吸」になりやすいので、24時間体制で診ています。
次の日の昼11時から3時間おきにミルクの時間があります。
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「息子さんは週数32週0日で産まれてきました。早産児です。」
「本人次第の部分もありますが、退院は年末頃だと思ってください。」
これを聞いたときに「赤ちゃんはお母さんに抱っこしてもらうために産まれてきたんだよ」という言葉が頭の中を横切った。息子はこんなに早く産まれてきたのに、産まれてすぐに抱っこ出来ないんだ…とぼーっとした頭で聞いていた。
「何か聞きたいことはありますか?」
と、言われて母との面会の時に聞かれていたことを思い出した。
「体重は何gですか?」
えーっとね…と、
先生が隣にあるパソコンを確認しながら
「1663gだよ。」
と、答えた。
大体、3000gくらいが平均の、約半分…。
前日にクリニックでエコーを診てもらったときは1600g推定と出ていたので、息子の場合はエコーと実際の体重が割と正確だったんだな、と思った。
その時は、早産児という言葉も知らなかったが、Instagramなどの情報で1500gが一つの目安というのを見ていたので大丈夫だと思った。
きっと大丈夫、病院に来れたし何も心配することはない。
この怒涛の2日間。本当に怒涛だった…。
すべてがラッキーでここまで来れた。
こんなにスピード感のある2日間を、息子と乗り越えられたことを誇りに思っている。
私も息子も生きている。産まれた瞬間を旦那が見届けてくれた。
私たちは家族になれたのだ。
「最終回」へ、つづく。