誕生の瞬間【長男出産記録④】
まだの方は①からどうぞ
前回の話
陣痛の時間
看護師さんが入れ替わり立ち替わり入ってこられて、様子を見ながら励ましやアドバイスをいただくことになった。
息は10メートル先の蝋燭を消すように
「上手よ〜。」「頑張ってるよ〜。」
と、一生分褒めてもらえたくらいたくさん声をかけてもらいながら分娩台の上で過ごしていた。
看護師長の苗字が仕事の後任者と同じで
「途中で引継ぎできなくなって申し訳ないなー。と思ってるんです。」なんて話しながら過ごしていた。
この時は非日常がおきている高揚感が強く、恐怖や不安は何も感じなかった。
お腹の子どもへ頑張ろうね。と念じつつ、
胎動と陣痛を感じながら、陣痛の間隔が縮まってきた感覚があった。
本当は2回打ちたかった、胎児の呼吸器官を発達させるための抗生物質は、結局1回しか打てなかったが「1回だけでも打てたことが幸運だ。」と、先生から話があった。
旦那と母は既に到着していて、看護師さんに旦那が立ち会いを希望するか聞かれた。
それまで立ち会いに関しては、お互いに
「別に…どっちでもいいかな…。」
といった雰囲気で、時間をかけて考えようと思っていたのに、まさかこんなに早く決断を迫られることになるとは…。
「旦那さん、立ち会いしたそうやったよー」という看護師さんの言葉を鵜呑みにして、結局は立ち会いしてもらうことにしたのだった。
破水がまだだったので、人工的に破水をしてもらった。自身の熱が37度あったこともあり、太ももに感じる破水はものすごく熱かった。
分娩台に上がって1時間くらい経っただろうか。陣痛に耐えていたころ、ゴリっと左の股関節が鳴った感覚があった。今思えば、胎児が股関節の間に降りてきた感覚だったのだと思う。
「そろそろ旦那さんを呼んできて。」
という看護師さんの言葉を聞いて、「やっと終わるぞー!」という気持ちが強かった。
それまでの看護師さんとの会話で、「旦那さんがきた15分後くらいにはお産終わるからねー。」と言われていたのだった。
立ち会い出産
旦那は私の左側に立ち、いきむ時に私の頭を持ち上げる役目を与えられていた。
本格的にお産が始まった時、1人だった看護師さん以外に、気づくと先生や助産師さん、合わせて5人くらいに増えていた。
お産ってこんなにたくさんの人が関わってくれているんだと感謝の気持ちが湧いてくる。
痛みでお尻が浮いてしまう。
いきみを逃すことができない。
旦那が来てからはとにかく必死だった。
お尻を分娩台につける。
いきむときに声を出さず、目を開ける。
何度も看護師さん•助産師さんに教えてもらい、自分でもだんだんと上手になってくるのがわかった。
何度か陣痛に合わせていきむことを繰り返し、最後は指示された通り、握りしめていた取手から手を離して胸の前に手をクロスさせた。今までとは違う「ハッハッ」と短い呼吸をしながら、「もう終わるんや…」と落ち着いてきた頃、助産師さんに
「お母さん、見て」
と言われて見ると、そこには小さな小さな息子が取り上げられていた。
「ふにゃあ」と産声を上げてくれたのを聞いて
「あぁ、泣いてる〜…!」と、とても嬉しくなった。生きて出てきてくれたことに、とても感謝した。
隣を見ると、いつも感情の起伏が少ない旦那が目を潤ませていて、それも嬉しかった。
「小さいよ、行くよ」
と、人から人へ手渡された息子は私の見えないところでいろんな処置をされていた。
ここで旦那は分娩室から退散となり、私は処置された息子と対面することになった。
32週で出てきた息子は、体温調節が苦手だということで身体をサランラップ巻き、帽子とオムツをはかされ、保育器に入った息子と再会した。
旦那とそっくりな鼻と口。
エコー写真でもみた息子だった。
あー、終わった〜。と、思っていたのだが
まさかここからが出産で1番辛いとは…。
⑤へ、つづく