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≪わたしごと12≫侘び寂び
侘び寂びってなにか。なにか直感でわかっているような気もするし、掴もうとするとするりと逃げる様な気もする。
保存修復の仕事をしていると、その作品なり資料を、普通の見るという感覚とは違う、何というか、"総動員して観る"という感覚が必要だと感じる。
例えば彫刻の全体を見たあと、殆ど1㎝角くらいのマス目で隅々を見ていく。ライトを斜めから当てたりして亀裂を見逃さない様にしたり。変色はないか、剥落はないか。表面を探索していくような感じで。
欠損や、剥落、ずれなどを見つけると、次は原因をさぐる。化学的、物理的には何が起きたのか、この下のレイヤーはどうなっているのか、どんな環境だったのか。これはいうなれば、探偵の様な作業だ。
そんなこんなで色々なちがった観点からの、このものに関する情報が集まって来ると、ものというのはその物が体験した固有の歴史がある事がわかる。そして、それに関わった無数の人たちの歴史とも紐付いてくる。
劣化からは免れない物質というものの持つ宿命の様なものと、そのものの持つ移りゆく価値というものと、ものでさえも絶対的に同じ場所には留まっていないという事に、ふっと心動かされ愛着を感じることを、侘び寂びというのかなと思ったりする。
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