≪Art Conservation5≫よごれの定義
よごれを落とすといった場合、例えば家事で言ったら、その定義は殆どの場合明確だ。保存修復で作品に付いたよごれを取り除く場合、一見自明の事の様に思えるが、結構これが複雑だ。
例えば金箔を貼られた仏像の場合、よごれとは何か?長年積もった埃は取り除くべきよごれだが、その下の金箔に付着したくすみの様なものはどうだろう。これを取り除いてピカピカにすることは、良い事か?日本のコンテクストでいくと、これは時代の蓄積の価値とされて、恐らく残されるのが望ましい。しかし、黒ずみ過ぎて、装飾を覆い隠してしまっている様な場合や、形を認識するのを困難にしている場合、ある程度は取り除いた方が、良いかも知れない。
あと別の観点での例は、例えばケネディー大統領が暗殺された時に着ていた服についた血などは、この服を保存する際には、この血を落としてしまったら歴史的価値が半減してしまう。その他にも、縄文土器の内側にある付着物を洗ってしまうと、研究価値が減ってしまうとか。
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