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第9回目「恐怖の瞬間」

2021年5月26日水曜日
第9回目投稿
唯李(ゆり)の気ままにさらりさらりと。
テーマは「恐怖の瞬間」

いったい何が起きているのだろうか。
あれは一体何の音なんだろうか。
空耳だろうか。
いや、違う。

今夜はいつもより早くに眠くなり、早めに部屋の灯りを落としてふとんに入った。
といっても深夜12時少し前だ。

ふと、何か気配を感じる。
何かがやってくるような、不気味な気配を感じる。

何故そう思ったのかというと、ゴールデンウィークに一週間家をあけて帰ってきた日からなんだか嫌な感じがするのだった。
窓を開けて風通しをし、掃除をして気分を落ち着かせて休んだのだが、2日続けて金縛りにあった。

このアパートに住むようになって初めてのことだった。
以前住んでいたアパートでは頻繁にあった。
今回は、きっと疲れが出たのだと思った。
それからは何事もなかった。

そんなことがあったので、また?と思ったのだった。
そんな恐怖におののきながら、その気配が近づいてくるのを待っていた。
正確には待っていたわけではないが、聞き耳をたてていた。
布団を握りしめ、じわじわやってくる何者かに対して構えていた。

しばらくしても何も起きない。

ん?金縛りになるわけではなかった。

ん?ん?
なんだ?
この音は?

誰かいるの?

お化けより怖いのは人間だ。
怖い。怖いよー。

しばらくその音を聞いていると、
カサカサとか、バサバサとか、
鳥のような感じの音がしてきた。

羽根の音?

段々音がカサカサと、はっきりしてきた。

人間が一番怖いとはいったが、人間以外は受け付けない私なのだ。

鳥も、虫も大の苦手だ。

暗闇の中では、正体がわからない。
これが鳥や虫だったらどうしよう。

心臓がバクバクしてきた。

明かりをつけた。

恐怖は最大となった。

蛾だ。

巨大な蛾だ。

なんで部屋の中に蛾がいるのよ。

それも巨大な蛾が。

もう、心臓止まりそうなくらいショックだった。

それから、心臓がバクバクし始めて、部屋から逃げ出したくなったが、そうもいかない。
ちょっと冷静な私。
部屋着のままじゃ、出るに出られないし、蛾がいる中で着替えなんて出来るはずもない。

しばらく呆然として眺めていたが、突然蛾が、バタバタ羽根を動かして移動し始めた。

窓側のハンガーにかかっているスーツに止まってしまった。
すかさず窓を全開にしたが、今度はピタリと動かなくなった。

窓は全開のまま。
このままだと、部屋の明かりにつられて別の虫が入ってきたらどうしようと思って焦ってきた。

眠気はとうにどこかにいってしまった。
今は一点集中。

近くで触りたくはない。

あっ、そうだ。
フローリングを掃除する柄が長いのを利用して、ハンガーごと窓の外の物干しに掛けることにした。

あれだけ、バタバタと飛んでいたのに、スーツに止まってからは、ピクリともしない。
お陰で窓の外まで出すことに成功した。

やれやれ、一安心。

だが、なかなか蛾はスーツから離れてくれない。しかたがないので諦めて窓を閉めて、カーテンして休むことにした。

でも恐怖で眠気はどこへやら。
今もまだ、怖さで心臓が落ち着かない。

なーんだと思う人もいるだろうが、アゲハ蝶くらいの大きな蛾を部屋の中で見たら、誰でもショックを受けるはず。

粉をふくような蛾ではなかったが、大きさは今まで見た中で一番大きかった。
写真を撮れば良かったと今は思うが、あのときはそんな余裕はなかった。
冷静ではいられない。

一匹だけだろうか。
本当に一匹だけだろうか。
今夜は眠れない。


今日のひとこと
「ここは人間の陣地なのだ、蛾さんにはお引き取り願う。」

怖かった。
恐怖の瞬間だった。

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一日の終わりにどうぞ。

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